殿下の年齢と外見詳細が決まる(今回、エッセイ短いです)

 夕餉の時刻までもまだ間がある。それぞれが各部署で仕事をしている時分、廊下に人は少なかった。これ幸いと、ロスは結構な速度でカエルムの執務室から商務省へ駆けた。冬の冷たい空気は音をよく響かせる。どこかへの潜入などがあれば足音くらい難なく消せるが、まさか自国の居城でそんな必要はない。ロスは苛立ちを発散させるのもあって、思い切り靴音を鳴らして走った。


「ちょっとなぁに。騒々しいわね」


 突然の声に、ぎょっとして急停止する。勢い余って身を崩しそうになり、壁に手をついた。

 声と共に角から現れたのは城仕えの侍女の中でも高位にあるものが身にするドレスを纏った女性。王女つきの侍女だった。


「人がいないからってそんな速度で走っていたら危ないでしょう。というか、音が仕事中の官吏の邪魔になるわ。まったく、貴方って人は落ち着きがないんだから」

 女性はスカートの腰に手を当て、仁王立ちになってロスを真正面から睨んだ。

「びっくりさせるなよ。取り敢えず今、急いでるんだ」

「いいえ。殿下の御命令として速度は許すとしても、貴方なら音を消して走れるでしょうに。こんな騒々しい走り方して姫様が御転婆になったらどうしてくれるの」

 女性は口を尖らせると、聞こえるほどの溜息を吐いてやれやれと首を振った。目が逸らされたのを機に、ロスも抗議しようと口を開く。

「もう十二分に御転婆だと……」

「仕方のない人ね。殿下は二十七のお歳であんなにも落ち着いていらっしゃるのに……あの蘇芳の瞳をご覧なさい。何にも動じずでしょう」

「あの人は歳のくせに落ち着き過ぎ……」

「そうなれる殿方もいらっしゃるということ。年長の貴方と来たら」

 どうでも良いが、さっさと通して欲しい。これが長く続くと、後でその王女にからかわれそうだ。


 ところで女性の気分は変わりやすい。ロスの心境は他所に、侍女は持っていた木の籠を掲げてまったく関係のない、驚きの知らせを伝えた。


「そうそう、シレアの入国者数がここのところで千五百人を超えたらしいわ。それから、テハイザの方では長期滞在者がシレアを上回ったとか。彼らの歓待のために城にも花を飾るから、後で手伝ってね」


 木の籠の中には色とりどりの花々がわんさか盛られている。その中に、蘇芳色と紅葉色——カエルムと王女の瞳の色と同じ、鮮やかな葉っぱも混じっていた。


 ***


 はい、週末にカエルム兄さんの瞳の色と年齢が決まりました。既にアップした章には書き足します。

 年齢も。二十七。まぁこのくらいならまだ良いでしょう。朝読賞に、取り敢えず入れるだけはタダ。二十七、だめですか? どうですかね。王女と九つ違います。


 それから! 姉妹編の方です。PV1500を超えました。ありがとうございます。

 そして「天空の標」のフォロワさんが「時の迷い路」を超えました! 兄、強いなぁ。さすがは強国テハイザです。ありがとうございます。


 さて、この侍女ですが、すみません! 「天空」には出てこないです。今のところの予定では。頑張れロス(この人は三十歳)。


 取り急ぎ。次は他薦含む予定です。


 あれ。本題より前半が長いですね。まあ良いか。

 本編はもうそろそろ、話が大きく展開します。どうぞ、本編も!

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