第十一章 眠り
11.1.おはよう
睡眠とはとても心地の良いものである。
目は覚めているけど布団の中でごろごろするの気持ちいい。
共感できる人は結構いるのではないだろうか?
いやぁ~今まさにそれです。
なんとも心地が良く、気持ちがいい。
さすが人間の三大欲求の一つですね。
季節も丁度いいのか、布団の中が心地よすぎて体がまだ起きようとしていない。
頭は起きてるんだけどね。
あーー、でも起きないとなぁーー。
休みだから寝続けちゃダメですかね。
でもこうしてずーーっとゴロゴロしてるのはそれでいいんだけど、起きないとなんか一日を無駄にしてしまいそうな気がして、結局起きちゃうんだよな。
……ちょっと待てよ?
俺に今休みとかあったか?
違くね?
…………戦ったあとじゃね!!?
ガバッと上体を起こして布団を前に吹っ飛ばす。
「……お? 何処ここ」
周囲を見渡してみると、目に優しい畳がまず目に入った。
寝間のような空間には書院造りが堂々と拵えてあり、掛け軸には梅の絵が描かれている。
やけに静かではあるが、それこそ趣があるというものだ。
これだけ見れば、ここが前鬼の里だということはすぐに分かった。
またずいぶん寝てしまったかもしれないな……。
応龍の決定……なんかを誰かに会わせるために使ったな、そういえば。
もう一個は忘れたどうしよ……。
なんか変なこと起きてないといいんだけど。
俺に変なところは……なさそうだな。
肉体的変化はない様だ。
魔物化もしていないみたいだし、大丈夫そうかな。
んやぁ~良かった。
とりあえず起きますかねぇ。
「あう」
「あうあう?」
隣から声が聞こえた。
ぱっと見てみると、そこには白龍前と影大蛇、日輪前、そして俺の羽織が置いてある。
そしてそのすぐ側に……ゆりかごの中に入った赤ちゃんがこちらを見て手を伸ばしていた。
「赤ちゃん????」
「あー」
「なんで?? え、なんで?? どちら様……?」
なんで寝ている俺の隣りに赤ちゃんがおんねん……。
君の両親どこにいったのかしら。
ちょっと触りたくなったので、人差し指を近づけてみる。
ぺちぺちと手を叩かれた。
「無垢ですねぇ~可愛らしい……」
頬をつっつくと、めっちゃ沈む。
凄く柔らかい。
「ふぇ」
「ふえ?」
「びええええええええ!!!!」
「おわあああああああ!!!? ごめんごめんごめんごめん!! いやそんな急に泣くとか思わないじゃん!? うわお、ちょっとお待ちなすって!? これどうしたらいい!? どうしたらいい!?」
と、とりあえずゆりかご持って揺らしたり!?
いやいやちょとちょとちょっと待ってくれ!
赤ちゃんのあやし方俺知らん!
知らん俺!
たかいたかーい!
とか赤ちゃんに理解できる訳ねぇよなぁ!!
「うええええええ!! びえええええええ!!」
「ちょーーーーーーっとまってごめんて!! そんなつもりはなかったんです!! だ、誰かぁあ!! お母さん!? お父さん!? どこかにいらっしゃいませんか!? たーすけてえええええ!!」
「びえええええええ!!」
「はいはいはいはいはいはい!!」
しばらく大声で叫んでいると、ようやく足音が聞こえてきた。
助かったー!!
とりあえず入ってくるまでここで待っておこうかな……。
連れ出すのもなんか怖いし。
スパァンッ!!!!
襖がとんでもない勢いで開かれた。
めっちゃ怒られそうな気がするんですけど。
そんな怒気を含んで襖開けないでもらっていいですか……。
そちらの方を見てみると、なんと姫様が立っていた。
「おお! 姫様!! 助かったー! ちょっとこの子あやして欲しいだけどー!」
その後ろから、額当てをつけた黒髪の美女が出てきた。
あらやだお母さんですか?
角生えてないから人間の子供だよね。
……泣かせてごめんなさい……。
「びええええええ!!」
「あ、もしかしてお母さんかな!? いやそんなつもりはなかったんだけど急に泣き出しちゃって!! ちょっと任せても──」
「おうれええええんん!!!!」
「おうれんざまあああ!!!!」
二人が泣きながら俺に突っ込んできた。
その衝撃に耐えることができず、倒れてしまう。
だが何とか手に抱えている子供だけは死守しなければならないと思い、腕を上げて何とか支えた。
「ほぎゃああああ! おまっ! ちょまって待って!! 待て!!」
「びええええええ!!」
「「うわああああん!!」」
「なんなんだっ!! 起きたばっかなのに!! おい姫様説明してくれ!! どうしたんだ!!」
「「うわああああん!!」」
「びええええええ!!」
「おいおいまじで誰か説明してくれないかーーーー!?」
ていうか姫様ががっちりホールドしてるから動けねぇ!!
つーかこの黒髪美女なんで俺のこと知ってんの!!
泣くほどびっくりしたのかな!?
んなわけねぇよな!?
すると、またドタドタと廊下を走ってくる音が聞こえてきた。
助かった援軍だ……誰か助けて……。
ていうか赤ちゃんこの体勢で持ち続けるの限界が近いんですけど。
「応錬!! 起きたのか!!」
「鳳炎ーー!! たーすけてくれええええ!」
「兄貴ぃ!!」
「おお! 零漸!! 手伝ってくれない!?」
「あ、姫様の力には抗えないっす」
「てめぇ裏切者!!」
零漸は俺が持っていたゆりかごをひょいと持ち上げた。
その瞬間赤ちゃんは泣き止んだ。
……解せぬ。
鳳炎は二人を引き剥がそうと四苦八苦しているようだ。
だが姫様はもちろんのこと、もう一人の女性も一向に離れる様子がない。
未だにわんわん泣いている。
「ヒスイ殿、アレナ。離れるのだ……。混乱してるから……」
「……え?」
ちょっまって?
「鳳炎!? 今なんつった!?」
「え?」
「アレナって言った!?」
「あ、そうだった。うん、この子アレナだよ」
「へ!? え!? いや待て待て!!」
この子がアレナ!?
あら美人に育っちゃってじゃなくて!!
当時のアレナはもっと背が低かったはず!!
「俺何年寝てたんだ!!?」
「六年だよ」
「ろ!!? ろろ、六年!!? 嘘だろおい!!」
やべぇ、混乱する。
リックの上で寝て起きたら六年後とか怖すぎんだろ……。
これが代償なのか?
ああー、こりゃこの二人がこうなるのも分かるというものだな……。
とりあえず二人の頭を撫でておく。
落ち着くまでは……離れそうにないからね。
姫様、痛い……。
アレナ、頭突き止めて……。
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