10.38.赤く表示された人間
リゼの話を聞いていた全員が疑問の声を口にする。
聞き間違いかとも思ったが、そうではない。
人々が……弱点?
声を殺すのに一番有効的な手段が……人間?
リゼが言っていることが本当であれば、そういうことになってしまう。
さすがの鳳炎もこの答えに疑問を持った。
手を顎に当てて頭の中でその意味を探っているようだが、答えは出てこないらしい。
すぐにダチアへと目を向けて、聞いてみる。
「ダチア。これはどういうことであるか?」
「俺にも分らん。泡瀬もそんなことは言っていたが、結局理解はできなかったからな」
「先代白虎のことか……」
特殊技能は同じ様に受け継いでいるんだな。
そういう風に設定したんだろうけど。
……弱点が人間……か。
「リゼ。どういう風に弱点が見えたんだ?」
「全身が真っ赤だったの。普通は脳や心臓だけが赤く光るんだけど、敵が強い場合はまず弱体化させる方法を終えてくれるの。ティックと戦った時は、腰にあった魔道具と左手に持っていた杖が赤く光ったわ」
「うわー! それ知ってたのかよ!」
「それ、なんだったんすか?」
「腰に付けてんのは魔力増幅装置。これでトルネイドの威力を十倍にする。左手に持ってた杖は僕が浮遊するために使ってた魔道具さ」
「た、確かにそれは重要な物っすね……」
なんだその魔道具……それ世間に広めちゃいけないものの一つだろ絶対……。
飛ぶ魔道具も同様だな。
テキルが作ってるんだろうけど……すごいな。
しかし今の会話を聞いて、リゼの狩りの本能という特殊技能は大体分かった。
言っていることが本当であれば、事実、声の弱点は人間なのだろう。
だがそれをどうすればいいというのだ。
殺すわけにもいかないしな。
とはいえ、今の話は重要な気がする。
覚えておいた方が良いだろう。
「はぁー……。ねぇほんとにどうするのよこれ。あいつらの攻撃範囲めちゃくちゃ広いから、私たちじゃ手が出せないわ。ラックたちと救出活動をするので精いっぱいだったんだから」
「それに、これからガロット王国の人たちをどうするのかも気になります……。多くの人が住む家をなくしましたから……」
ユリーとローズが懸念点を的確に突いてくる。
確かにこれからのことも考えてあげなければならないだろう。
今の状況だと、アスレたちでも限度がある。
加えて声たちと戦うことができる人物は少ない。
この中では俺、鳳炎、零漸、ウチカゲ、ダチア、マナくらいしか戦うことができないだろう。
リゼは戦闘経験がまだ浅いし、ユリーとローズもSランク冒険者とはいえあれだけの攻撃をかいくぐりながら一撃を与えるのは難しい。
ティックとカルナは技能的に戦えそうではあるが、少し心配だ。
俺たちに比べれば体力は低いだろうから、一撃でも攻撃を喰らってしまえば死ぬ可能性が高い。
零漸がいたとしても、連れていけるのは一人までといったところだろう。
「ダチア。悪魔の援軍はどうなってるっすか?」
「……すまない。壊滅だ……。魔族領に待機させていたのだが、陸の声に侵入されたらしくてな……」
「陸の声の能力を教えてくれ」
「……俺たちが戦った時は、空気と土、そして多くの召喚魔法を使ってきた」
「天の声が空気、地の声が土、陸の声が召喚系魔法……といったところか」
日輪たちが戦った時は強化していたって言ってたもんな。
多分使える能力を増やして戦わせたんだろう。
それで勝てたってすごいけどな……。
だが……悪魔はやられたのか……。
生き残りはいないのか?
「分からん。俺が持たせていたダイスはほとんどが壊された。生きている者はいるが、限りなく少ない……」
援軍は、見込めないか……。
それに加えてあいつらがどこにいったのかも分かっていない。
捜索しつつ、体力を回復するのが優先か……。
だがそんなことをしていては天の声に回復されてしまう。
場所の把握だけでもしておいた方が良いだろう。
そう思って操り霞の範囲を拡大する。
有り余る魔力を使えば大陸中を探すことだって容易い。
が、それはマナに止められた。
「応錬、だめよ」
「……なんでだ」
「どちらかというとまだ必要ないわ。あいつらは体力の回復に時間が掛かる。人間が生きている時間で一割……まぁ百年単位で回復を待たなければならないの」
「天打があそこまで削ってくれたのは無駄にならないわけか」
「そうよ」
姿を現さないことも考慮しておかなければならなさそうだけどな。
でもそれはいいことを聞いた。
それであれば、こちらは万全の状態で戦うことができるだろう。
地の声もそれなりに削った。
陸の声も攻撃方法が割れている。
天の声は既に瀕死だから戦える状態ではない。
残るは空の声か……。
あいつだけは未知数だ。
「鳳炎、空の声はどんな奴だった?」
「気絶していたから知らん」
「おうふ」
そうか……じゃあ近くにいたはずのアスレとバルトに聞けばいいか。
ていうかマリアどこにいったこんな時に。
「……ダチア、今話してもらって良いか? 昔のことを」
「ほぼ全員いるしな。いいだろう」
その場に胡坐をかいて座る。
マナもその隣に座った。
長い話になりそうだ。
俺も同じように胡坐をかいて座ると、立っていた者たちも全員座る。
ダチアは全員が話を聞く態勢になったことを確認すると、口を開いた。
「お前たちの疑問にすべて答えよう。白蛇、日輪と鬼との関係。その時召喚された陸の声との戦い。倒した経緯、記憶が消された理由すべてを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます