10.35.行動阻止
まずはあの存在を構成している成分を確かめなければな。
とりあえずは……。
「『火龍』。とりあえずこれぶつけてみるわ!」
「任せた!」
ぐっと白龍前を持ち上げて火龍を操る。
一直線に突っ込ませてみるが、近づいた瞬間周囲でうねりまくっている根っこに殴られてかき消されてしまった。
一瞬だったからかもしれないが根っこに火が燃え移ることはなく、検証にすらならなかった。
いやそれは予想外。
動きを止めることすらできないのかよ。
透明ってのがまた面倒くさいな……。
俺しか見えていないって言うのも厄介だ。
「俺が止めてみるっす! 『土地神』!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
「全く止まらないっす……っていうか土が操れないっすよ!?」
「土地神殺しとか言ってたしな……。あいつの周囲の土は操れなくなるのか?」
「それだと使える技能が凄く限られるっす……。んじゃ『爆硬壁』! 大爆発するっすから気を付けてくださいっすね!」
「使う前に言えよ!!」
透明な樹木の目の前に、ぐつぐつと動く黒い壁が出現した。
赤い筋が多く入っており、そこからは溶岩の様な熱気が噴き出している。
見るからにヤバそうなんだが。
え、これなんか結界使った方がよ──。
カッ!!!!
チュドオオオオオン!!!!
根っこが爆硬壁に触れた瞬間、強い光が周囲を覆って大爆発を起こした。
操り霞で確認してみたところ、幾つかの根っこが吹き飛んで地面にボトボトと落ちていく。
あれだけの破壊力を持った爆発で、ようやく何本かの根っこを吹き飛ばすことしかできないらしい。
すると、落ちた根っこの透明化が解除された。
周囲は土で覆われており、芯には石が入っているようだ。
これがあれに使われているとなると、確かに硬いはずである。
だが壊せないわけではないということが分かった。
「……ぺっ! ぺっ! なんて爆発だよ!」
「レベルが上がって結構火力上ってるっす……。久々に見たっすよキノコ雲」
「零漸、それあと何回使える?」
「も、もう魔力がないっす……。地の声との戦いで結構使ったっすから……」
「ほれ」
「うっわマナポーション……」
まだ二ケースあるからな。
いくらでも飲んでいいぞ。
俺は絶対に飲まないけどな。
んじゃ零漸が回復している間に、今度は俺が攻撃を試してみることにしよう。
使う技能は一つしかないけどね。
数歩前に出て、白龍前を握りしめる。
大上段に構えてから、右足を踏み込んで刃を振るった。
「『天割』!」
ザンッ!!
天割が飛んでいって根っこを数本斬り飛ばした。
最後は太い根っこに防がれてしまったようだが、それでも半分くらいは切り込みを入れることができたようだ。
とりあえず物理攻撃は効くみたいだし、天割みたいな斬撃も有効らしい。
ただ未だに動きを止める気配はなく、そのまま地面を掘り返しながら移動している。
土系の魔法が使えないというのは厄介だ。
足止めをする術が限られてくる。
空圧結界や水結界を展開して阻止しようとして見るのだが、残念ながらそれも簡単に破壊されてしまった。
零漸が何度か爆硬壁を使って爆発を起こすが、それでも尚進行は止まらない。
「……これどうすんだよ」
地面が破壊されていく。
透明の不可視の存在。
何度攻撃しても動じない硬さに、切っても壊しても生えてくる根っこ。
あんなのをどうすれば止められるのか、分からなくなってきた。
他に何かないか……?
空気圧縮は零漸の爆硬壁よりも威力が弱い。
破壊破岩流は土系魔法なので使えない。
水で止められる筈もないし、連水糸槍では天割と同じ効果しか発揮しないだろう……。
決め手に欠ける。
根っこは何とか処理できるのだが、本体に攻撃する手段がないのだ。
零漸は爆硬壁よりも強力な攻撃方法を持っていない。
ダチアも不可視の存在相手に賭けに出るわけもいかず、何もできないでいた。
「俺たちの技能では相性が悪い」
「俺もこれ以上は無理っす……」
「見えないから手が出せん。さぁてどうするか……」
幸い土地神殺しはこちらに興味がないらしく、攻撃はしてこなかった。
距離もあるので攻撃が届かないだけかもしれないが……なんにせよ今の俺たちではあいつを止められないことには変わりがない。
根っこにばかり邪魔されて本体に一撃も攻撃が入っていないのだ。
ここで応龍の決定を使えば、恐らく倒せる。
だがこの技能は使えば危険だ。
一体どれだけの代償が返ってくるか分からないのだから。
「……ダチア。俺がここで応龍の決定を使ったらどうなる」
「想像もつかん。日輪は代償として存在を消したのだからな……。いや、あれは違うか。存在を消すことも応龍の決定で決めたことだったんだ。だから代償はないようなものだな」
「あとで詳しく聞かせてくれよな」
「時間があればな」
似たような会話を先ほどもした気がするが、まぁいいか。
とりあえず応龍の決定は使えないとして……。
「……いや、どうするよ」
ゴウッ!!
土地神殺しが突然燃え上がった。
燃える素材では作られていなかったはずだが、どんどん炎が燃え広がって全身を包み込む。
根っこがのたうち回って地面が揺れるが、距離があるのでこちらに被害はない。
ボウッボウッという音が頭上で聞こえた。
相性のよさそうな味方がやっと起きてきたかと、俺は安心した。
「とんでもないのがいる様であるな……」
「無事だったか鳳炎」
「死にかけたがな!!」
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