10.32.大地の主か、土地の神か
八本の柱が宙を舞い、回転しながら狙いを定めている。
一本の巨大な柱は八角で、それが地面から出現した。
一つの巨大な腕が持ち上がり、ゴリゴリという音を立てながら関節が駆動している。
大地の主。
その一角がその場に顕現していた。
すべて土で作られているとは言えども、柱は綺麗に整えられていて美しい。
ただ巨大な腕だけは醜悪で、歪としか言いようがなかった。
指は細く、手の平はごつく、腕は四つほどの関節があり、酷く太かったり細かったりと統一性がない。
その姿は見ているだけでなぜか不快にさせる。
「うげええええ!? なんっすかあれ!!」
「クッソあれで仕留められないのか……! 零漸!! 援護頼むぜ!!」
「了解っすよ!!」
零漸が地面に手を置き、俺が白龍前を握る。
「『土地神』!」
「斬り飛ばしてやる。『連水糸槍』!」
零漸が土を操り、何十個も腕を作り出す。
バルパン王国で俺に使ったやつだ。
それを確認した瞬間、連水糸槍をまっすぐ飛ばす。
ほとんどの物を切り飛ばすことができる連水糸槍。
あの腕ごと地の声も切る勢いで攻撃を仕掛けた。
「駄目だ応錬! 零漸!! 逃げろ!!」
「「え!? 今!?」」
ダチアが俺たちにそう警告する。
そこで、腕が刺さっていた巨大な柱を握った。
それが抜き放たれると、巨大な土の金砕棒が出現する。
「「うそぉ!!」」
あの刺さっていた柱は金砕棒の持ち手だったらしい。
すぐに逃げようとしたが、間に合うはずがない。
であれば何としてでもあの一撃を受け止めるのみ。
「零漸!!」
「了解っす!」
逃げないことに気付いた零漸は、俺と同じように迎え撃ってくれた。
地面を蹴って走り出し、自らが金砕棒へと接近する。
俺もその後に続いて走り、脇構えの状態で構えておく。
「破片は勘弁してくれっすよー!」
「破片!?」
「今から……殴るっす!!」
低姿勢になり、跳躍する。
その瞬間に土の金城棒が振り下ろされたが、零漸は勢いをつけてそれに拳をぶつけた。
同時に地面から土の拳が幾つも突き出してきて同じように金城棒を殴りつける。
「『爆拳』!!」
ガァアンッ!!
ダガガガガガッ!!
爆発の衝撃で勢いが若干弱まり、幾つもの拳が金砕棒を受け止めて何とか止めた。
しかしその余波で爆風が起き、地面が揺れ動く。
だが連水糸槍は生きている。
この攻撃を凌いだお陰で真っすぐ飛んでいってくれていた。
潰されなかった連水糸槍が地の声に襲い掛かったが、それは指で摘ままれて止められた。
プツンと糸が切れ、後方へと槍が抜けていく。
それを地面が食って破壊した。
「『天割』!!」
追撃。
すぐに技能を使って地の声に攻撃を仕掛ける。
この攻撃だけは有効だった。
それは今も同じのようで、八本の柱の内二本が身代わりとなって地の声を守る。
破壊された柱は崩れ去り、また後方で新しい柱が生まれた。
「無事か!?」
「大丈夫っすよー!」
「よく耐えたものだ……。だが油断するなよ!」
「分かってるっす!」
土の金砕棒がゆっくりと持ち上がる。
零漸がいれば何とか耐えられそうではあるが……。
「……おい、浮いていた柱三本……どこにいった?」
「え? ……あれ?」
柱が五本しか浮いていない。
あれだけ目立つ柱がそう簡単に消えるとは考えにくい。
何処かに移動させた……のだろうが、どこにいったのか分からなかった。
そこで、後方から音が聞こえた。
振り返れば、三本の柱が地面からサメのヒレの様に突っ走ってきていた。
「「おおおおおお!?」」
「一々驚いてんじゃねぇ!! 応錬! 天割だ!」
「お、おう! 『天割』!!」
ザンッ!!
柱三本を綺麗に斬り飛ばす。
すると今度は、地の声の方から大きな音が鳴った。
巨大な腕が振り下ろされる。
土の金砕棒が既に振り上げられていたらしい。
先ほどよりは威力がない様なので、零漸が完全に受け止めてくれるだろう。
やることは分かっているといった風に、零漸は再び低姿勢になった跳躍した。
ゴッ、ガッ、ドッ。
三人の背中に、強烈な衝撃が走った。
「え?」
先ほど斬り飛ばしたはずの柱が、三人の背中を突いて突き飛ばしたのだ。
なぜだと思ったのだが、そこで柱を切り飛ばした付近を見る。
そこには、短くなった柱が転がっていた。
理解する。
今背中を突き飛ばした柱は、地面の中に埋まっていた半分だということを。
巨大な土の金砕棒が振り下ろされる。
体勢も完全に崩され、防衛に回るしかない状態。
だがそんな暇は、既になかった。
ズンッ……ガァアアン!!!!
地面が割れ、隆起し、岩が上空高く舞って風圧で粉々に砕かれた。
下手をすれば天の声が使った空気圧縮の爆発よりも強力な一撃が、三人を襲う。
振り上げて振り下ろしただけの簡単な攻撃であるのにも拘らず、この威力。
地の声の本気。
天の声同様、まともにやり合って勝てるような相手ではない。
巨大な土の金砕棒が持ち上げられる。
大きく凹んだ地面の中にめり込んでいる三人の姿を、地の声は確認したのだった。
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