10.11.ガロット王国へ


「ラアアアック! 出番だ!!」

『うわあ』

「うわ!?」


 ついにガルル、とかグルッっていう声が消えやがった!!?

 いやこっちの方が聞き取りやすいけども!

 違和感……。


「ていうか……何してんのお前」

『阻止されてる』

『『置いて行くなラアアアアック!!』』

『そんなこと言われても……』


 ラックが騎竜のリックとパックに押さえつけられている。

 だが体格差は断然ラックの方が上なので、抵抗しようと思えば簡単にできそうだ。

 今は何もしていないようだが。


 そういえば馬車が壊れてこいつら行けなかったんだもんな。

 でもできれば連れて行ってやりたいな。

 絶対何かしら役に立つでしょ。


 意思疎通が取れるんだから、連れまわしても問題はないはず。

 俺の言うことは聞いてくれるからな。

 えーと、とりあえずラックに乗る準備をしなければ。

 鞍はどこだ……?


「にーちゃーん!」

「ん? おお! ジグル! と……メリル?」

「こんにちは!」


 二人が干し草を持ってこちらに近づいてきた。

 そういえばバトルホースもここで世話になってるんだったな。

 ローズとユリーがいない間はこいつらが世話をしているのか……。


 ていうかメリルって確かお嬢様だったよね……?

 おいジグル、貴様なに干し草運ばせとんじゃい。


「久しぶり! 今まで何してたの?」

「ちょ、ちょっと遠出をしていてな……! ていうかジグル。お前お嬢様に干し草なんて運ばせるなよ……」

「あ、いいのです応錬さん! 私が好きでやっている事ですので!」

「え? あ、そうなの? んじゃ……いいか!」

「いや実際は良くないのである」


 でーすよねー。

 まぁ今のところ誰も居ないみたいだし、子供というのはお手伝いをしたがる。

 好きにさせておいても問題はないし、なにより俺には関係ないっ!

 よしっ!


 まぁそんなことは置いておいて……。

 ジグルなら鞍がどこにあるか分かるだろう。

 それを取ってきてもらうことにしよう。


「頼めるか?」

「任せて! スターホースー! ここに置いておくよー!」

「ブルルル」

「よし、じゃあ行こうかメリルさん」

「はいっ!」


 二人と入れ替わるようにして、スターホースが干し草を食べにきた。

 んー、もう俺たちが関わらなくてもあの二人は大丈夫だろう。

 普通に仲よさそうだし。

 リゼの奴が思い切ってジグルに全部ぶん投げたお陰かもね。


「ブルルルルッ……」

「お前も行きたいのか? まぁそうだよなぁー。あ、そうだラック。お前本気で飛べないのか?」

『飛べるけど、背中に人を乗せてると落としちゃうから』

「ああ、やっぱりそうなのか。本気出したらどれくらい早く着く?」

『やったことないから分からないけど、多分一日もかからない』


 そんな速いのか……。

 絶対振り落とされるわ……。

 んじゃ予定通り二日でガロット王国に到着するっていう流れで行きますか。


 騎竜たちも連れて行くとなると、少し食料を買っておいた方がいいかもな。

 魔物がいたら別だけど。

 あ、でも移動時間は二日くらいだから大丈夫か。

 騎竜たちも二日くらいでガロット王国に行けるだろうからな。

 あの速さから見て、そうでなければおかしい。


 そうこうしている間に、ジグルとメリルが鞍を持って来てくれた。

 それをラックに取り付けてくれる。

 さすがにメリルはその補佐しかできないようだが……いやそれでもよくやっている方だな。


 取り付けが完了したところで、ラックがようやくリックとパックを引き剥がす。

 地面に伏せて、俺が乗るのを待ってくれていた。


「よし、じゃあ行くか」

『『ずるいー!!』』

「お前らも行くんだよ!」

『『え!?』』

「ベリル! 門を開けてくれ! 騎竜は鳳炎が連れて行ってくれる! スターホースも来い!」

「ブルルルッ!」


 鳳炎が思いついた声復活阻止の三つの方法は、こいつらにも手伝わせることができる。

 微力かもしれないけど、仲間は多い方がいいって言ってたのは鳳炎だし、大丈夫だよね!


「え!? 皆連れて行くの!?」

「おう! お前も世話ばっかしてないでメリルと遊んでやりな! ラック頼む!」

『了解』


 地面を蹴ったあと、翼を広げて飛び上がる。

 その間に騎竜とバトルホースは門をくぐって外へと出たようだ。

 鳳炎がしっかり誘導してくれている。

 あいつもこいつらを連れていくのには賛成ってことでいいんだろうか。


 まぁ元より騎竜とバトルホースに乗ってガロット王国に向かう予定だったんだもんな。

 あとでローズになんて言われるか分からないけど、まぁ何とかなるさ!


 ラックは騎竜とバトルホースに合わせて低空で飛行してくれている。

 その後ろから三匹が走ってきて、鳳炎が俺たちと合流した。


「思い切ったな」

「何とかなると思って」

「いや、これでいい。こいつらは役に立つからな。……もしもの場合はだが」

「ん? それはどういうことだ?」

「気にしなくてもいい。作戦が成功すればいいだけの話なのだからな」

「疑うわけじゃないが……勝算はあるのか?」

「私の予想した邪神復活方法を聞いた悪魔は、それを否定はしなかった。あの中に答えがあると、私は踏んでいる」

「お前が間違ったら誰も分からんからな。んじゃ信じるぞ」


 俺たちの中で誰よりも先に答えに辿り着いたのが鳳炎だ。

 こいつが言うのだから、間違いはないだろう。


 よし、じゃあ……やってみますか!

 声の復活阻止!!

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