9.32.救出方法
話を全て聞いた俺とマリアは、少し考えこんでいた。
俺は声たちが零漸を助けようとしたことのことを。
マリアは奴隷契約の解除方法を考えているらしい。
解除については俺ができるから何とでもなるだろう。
問題はこっちの方だ。
「……悪魔は敵ではない……だが声は敵視している……。悪魔より強く、そして神より下の存在……ってなんだ」
「んー、天使とかっすかね? 悪魔がいるから天使もいるっすよ多分」
「ありえるな。でも一度も会ったことないぞ?」
「そうっすね。ていうか何で悪魔が敵じゃないんすか?」
「ああ、お前には話していなかったな……」
ルリムコオスの所に行っている時は、零漸寝てたから話を知らないのは当然だな。
だがそれは後で話すことにしよう。
今はクライス王子を助け出すことに専念しなければ。
「で、マリアは何を悩んでいるんだ?」
「いや……言葉に反応する契約魔法なんてあったかなって思って……」
「と、いうと?」
「確かに奴隷に発言を制限することはできる。でもそれは、“言えないようにする”だけのもの。“発言後”に罰が下る特殊な制限なんでできないはずなの」
「でもでも、俺がクライス王子の名前を出したら、クライス王子がすっごい苦しそうにしてたっすよ? あいつも呪いって言ってたし……」
「それも変な話なのよ。呪いにそんな力はないわ。まして口にした言葉が対象に被害を及ぼすなんてものは……」
確かに考えてみればそうなのかもしれない。
禁止されている言葉は多くあればあるほど、設定をするのに時間を掛けることになるだろうし、様々な予測を立てて言わせてはいけない言葉を考えなければならない。
そんな時間などないだろうし、もしそれを本当にやろうものなら無駄もいいところだ。
「……ねぇ、これ……一体誰が考えて、誰が教えたの?」
「……んなこと言われてもな……。だが……」
これは、悪魔に掛けられている呪いに近いものだ。
いや、ほぼ同じなのかもしれない。
それを悪魔が知っていた?
では自分たちで解除できるのではないのだろうか……。
悪魔が味方で、悪魔が敵である可能性も出てきたぞこれ。
はぁー、一体誰が悪魔にあんな呪いをかけたっていうんだ……。
「ええい、この件は帰ってから考えるとする。とりあえずクライス王子を助け出すぞ」
「そうしましょう」
「あ、あの……兄貴。もう二人助けてほしい人がいるっすよ」
「ふ、二人?」
「カルナとティックっていう、俺と同じ人質を取られてる仲間っす。多分さっき、マリアさんと戦ってたと思うんすけど」
「あー……」
やべ、俺思いっきり吹き飛ばしちまったわ。
でも零漸の身代わりが発動していたから、ダメージ自体はないはずなんだけどな。
……二人か。
じゃあそいつらは零漸に任せることにしよう。
俺は顔が分からないからな。
「分かった。じゃあそいつを連れてこい。俺はまずクライス王子を助ける」
「応錬!? 敵なのよ!? いいの!?」
「こいつが助けたいって言うんだ。責任は零漸が持つ」
「大丈夫っす!」
「はぁー……。私たち、結構本気で彼らと戦ったから、生きている保証はないわよ」
「分かったっす」
一人は生きているのが確定しているけどな。
あっちは女だったから、そいつがカルナか。
もう一人のティックっていう奴はどうなったか本当に分からない。
さっき電撃レーザーみたいなのが空中に向けられて放たれていたが……大丈夫……かな?
零漸はすぐさま走り出し、短い時を一緒に過ごした仲間の元へと走っていった。
本当はそんな余裕はないのだが、俺も零漸に甘いのかもしれないな。
マリアには心底呆れられているが。
「どうなっても知らないわよー」
「俺に言うな。んじゃこっちはこっちで片付けよう」
「そうしましょう」
場所は把握している。
ずいぶん逃げ回ったので離れてしまっているが、目的地まではすぐに行くことができるはずだ。
操り霞で確認してみれば、どうやらウチカゲがまだ屋敷の中にいるようだ。
動けない理由があるのかもしれない。
「マリア、屋敷に行くぞ」
「状況は?」
「ウチカゲとクライス王子がまだ屋敷の最奥にいる。兵士は全部倒れているようだが」
「苦戦しているの?」
「どっちかというと、クライス王子を動かせない理由がありそうなかんじだけどな」
「それくらいなら奴隷紋でもできるわね……。じゃあ応錬、その辺はよろしくね」
「任せろ」
さっきからやけに眠たいんだが、これは疲れからきているのだろうか?
まぁ瞼が重いだけで眠るってことはなさそうだし、大丈夫だけどね。
よし、とりあえずさっさとクライス王子助けて、零漸の仲間も助けて皆で帰るぞ!
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