9.29.解除
「なんで応錬君が地面から生えてんのよ!」
「生えてる言うな! これも作戦の一つなんだ!」
「そんなだっさい作戦あってたまるものですか!!」
「うるせぇ! 零漸の土地神が厄介なんだよマジでよぉ!!」
ほんとにまじで!
俺の分身めっちゃ被害受けてるから!
いやぁー、さすがに本体で戦うとマジで死にそうな気がしたから、隙を見て泥人に変わってもらったんだよねー。
向こうは本気で来るからな……。
で、このローブ女はマリアが相手をしていたのか。
とりあえず地面から抜け出しましてっと。
「んで?」
「スーッ……」
「気をつけて! そいつ零漸君みたいに硬い!」
「ああ、そういうことか」
零漸の奴、こいつに身代わり使ってんだな。
そりゃマリアが勝てないはずだ。
んー、でもこいつも接近戦では俺より強いだろうし……。
ここは……。
「影大蛇、『天割』!」
影大蛇を抜刀すると同時に天割を発動し、斬撃を飛ばす。
それは見事直撃し、ローブ女はとんでもなく遠くの方へと吹き飛ばされていった。
一度距離を取るのがいいだろうからな。
マリアも何か怪我しているみたいだし、とりあえず治しておいてやるか。
「『大治癒』」
「君ねぇ……」
「誰も居ないから大丈夫さ」
動けず足手まといになっても困るからな。
治せるときに治しておかないと。
「で、状況は?」
「どうもこうも、君が大暴れしたせいで他の子たちも大暴れして、いつ援軍が来るか分からない状況よ。さっさと零漸君倒してもらって良いかしら?」
「無茶言うんじゃねぇよ……。あいつマジでどうやって倒せばいいか分かんねぇんだから。拳交えた瞬間爆発して俺の負けだぜ?」
「ああー……。じゃあ奴隷紋を何とかするしかないのかなぁ……。でも主が分からないし……」
それなんだよなぁ。
この騒ぎを聞きつけてくる可能性もあるけど……。
んー、どっちかって言うと援軍に来た兵士をとっ捕まえて話を聞いてみた方が早そうだな。
……ドドドドドド!!
あー。
来ましたね!!
ドガアアアンッ!!
邪魔だと言わんばかりに家や馬車が操られている土に潰される。
俺の分身も巻き込まれとる!!
「!! 本物発見っすー!!」
「ええい、チキショウ! 『咆哮』!」
零漸の動きがぴたりと止まる。
影大蛇を抜刀し、下段から掬い上げる様にして突きを繰り出す。
「『天割』! 突きバージョン!!」
零漸は操っている土で攻撃を防ごうとしたらしいが、そんなものでは俺の天割は止められない。
土をすべて貫通し、零漸にぶつかって再び遠くへと吹き飛ばす。
大体これの繰り返しだが、このやり方では一生戦闘は終わらない。
まぁ今はそれでいいんだけども。
「……やっぱり規格外ね……君も零漸君も……」
「まぁーなー」
「で、どうするのよ」
「どうしようなぁー……。もういっそのこと使ったことのない技能を零漸で試してやろうか」
「大丈夫なの?」
「ああ。俺が直接拳で攻撃しない限り防御貫通は適用されないしな。普通の技能であれば大丈夫なはずだ」
まぁー……一番気になっている技能があるんですわ。
この青龍の審判っていうんですけどね。
マジでこれ何。
何を審判するんですか。
あと水龍ってのが気になるな。
天災は字面からやばめなので使わないけども。
「んじゃま使ってみますか!!」
「大丈夫!? 本当に!?」
「なんとかなるやろ! 『青龍の審判』!」
両手を合わせて技能を叫ぶ。
対象は零漸!
ぶっちゃけ何を審判するのか俺もよく分かっていません!!
【零漸。人質を取られ奴隷紋を無理やり刻まれている。本人の同意の上ではない契約である。解除しますか?】
「はああああああああああああああああああああ!!?」
「うわあびっくりした!!」
「え!? う、いや、はああああああ!?」
「何よ!!」
「れれ、零漸の奴隷契約……解除できる……」
「はああああああああああああああああああああ!!?」
「だよな! その反応になるよな!!」
「なんでもっと早く言わないのよこの馬鹿!」
「俺だって知らねぇよこんな使い方があるなんて思わなかったんだからよぉ!!」
天の声の不親切さは相変わらずだなぁおい!!
マジでもう少し分かりやすくしてくれ!!
ていうか説明あったっけこの技能!?
まぁいいわ!
全部がプラスになるんだったら俺は零漸の奴隷契約を解除するぞ!!
おらぁこの野郎!
早く解除しやがれ!!
【解除中。……解除しました】
「できた!?」
「本当に!?」
「おい零漸帰ってこーい!! はやーく!!」
本当に解除されてるか気になりすぎる!
これでまだ攻撃されるってなったらたまったもんじゃねぇぞ!
そうなった場合はマジで天の声切り刻むから覚悟しておけ!
遠くで爆発が聞こえた。
黒い塊がこちらに飛んでくる。
それは地面を転がって俺たちの数メートル手前で大きく跳躍し、着地と同時に土下座した。
「すんませんっしたぁあああああ!!」
「そんなダイレクトな土下座見たことないんだが?」
「兄貴! 本当にありがとうございましたっす! 声が聞こえて応錬の兄貴が解除してくれたってアナウンスがきたっすよぉ!!」
「ああ、よかった……。ぶっつけ本番だったから心配だったんだ」
「はぁー……ほんと、君たち頭おかしいわ……」
それは否定できないな。
でもこれで気兼ねなくクライス王子を助け出すことができるぞ!!
「零漸も助けた。あとはクライス王子だな」
「もう頭が上がらないっす……」
「分かったから早く行くぞ! こちとら暴れすぎて時間がねぇんだ!」
「分かったっす! ……あ、でもクライス王子を助け出すのは司祭を殺さないと難しいかもしれないっすよ!」
「まじ?」
そうなってくると面倒だぞ。
……って、司祭?
「司祭がお前に奴隷契約を施したのか?」
「そうっす。あの時は状況が違って違う人間がやったっすけど、戦闘奴隷としての権限は司祭になるようにされてたっぽいっす」
「……ちょっとまって零漸君。君が奴隷契約をされたところ、思い出して話して頂戴」
「分かったっす」
それから零漸は、思い出しながら今まで会ったことを話してくれた。
事の始まりは、声と再び出会った時からだったようだ。
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