9.12.作戦会議
「ブルルルッ」
「「ギャキャッ!」」
なんか三匹が喋っとる。
お前ら意思疎通できるんか。
「とりあえず水を飲め~」
桶を用意してその中に水を入れる。
魔法って便利ですね本当に。
ていうかこいつらあんだけ走りとおしたのに疲れている気配が微塵も感じられない。
息切れしてる?
ああ、してないね。
「応錬~! はーやくー!」
「ああ、今行く」
アレナに呼ばれて皆が集まっている所まで歩いていく。
これからは少し作戦を皆で考えることにしたのだ。
その間も俺は操り霞を展開しておかなければならないけどね。
でも今のところは何もいないみたいだ。
いるのは小さな小動物くらいかな。
馬車の点検をしていたローズとユリーも合流した。
問題はなかったみたいだな。
「よし、じゃあ皆集まったことだし、バルパン王国に到着した後の話を明確にしましょう」
マリアが一度手を叩いて注目させた。
誰もが彼女の意見には賛成だったようで、小さく頷く。
「私たちの目的は、クライス王子の救出と零漸君の阻止。向こうも抵抗してくるだろうから、救出組と戦闘組に別れる」
「潜入するのに長けているのは俺と応錬様、あとはシャドーアイの面々ですが……」
「俺は零漸を止める。お前らじゃあいつは止められないだろうからな」
「うん、応錬君には戦闘組に入ってもらう。ウチカゲ君が救出組ね。でも……」
「あの女ですね。恐らく俺であれば対処できますが、どうしましょう」
「見つけた場合は戦闘してもらった方が良いわね。多分私たちだと負けちゃうから」
「ではその様に」
対象を弱体化する技能を持っているあのローブ女のことか。
確かに……ウチカゲですらあそこまで動きを遅くされたんだ。
他の奴らにあんなの使われたらほとんど動けなくなる可能性が高い。
適任だな。
「ま、見つかった場合の話だけどね。んで、シャドーアイは救出組を担当。雷弓は戦闘組。アレナちゃんは救出組の方がいいかな。鳳炎君は戦闘組ね。私はもちろん戦闘組。アレナちゃんと一緒に動くわ」
うん、妥当だな。
安全性と戦闘能力を考えたらこれが一番丁度いいだろう。
「連絡手段はどうする?」
「自力でやるしかないわ……。通信水晶なんて高価な物持ってこれなかったしねー」
まぁそうなるか。
今マリアが提案した内容は、もし戦闘になってしまった場合の話。
一番いいのは見つからず、戦闘も起きず、クライス王子を無事に救出すること。
零漸のことはその後でも何とかなる。
人質が居なくなれば……あいつも従うことはしなくなると思うが、話に上がっていた奴隷紋が気になるな。
あれを零漸に施されている場合、どういう展開になっても戦うことは逃れられない。
その辺は覚悟しておかなければな。
「で、一番初めの行動は?」
「シャドーアイ、ウチカゲ君、応錬君が情報収集。まずは囚われている場所を探し出さないと。応錬君はそういうの大の得意でしょう?」
「まぁ……感覚に頼るのは無理だけどな」
「護衛は四人。失敗はしないでね。場所が分かったら皆で突撃よ」
最後は強行突破になってしまうか。
それは仕方ないかもね。
とりあえず警戒しなければいけない人物は二人。
零漸と、あのローブ女。
零漸に出会ってしまったら、俺以外の奴はとにかく逃げてもらわなければいけない。
マジで勝てないからな。
接近戦でも、遠距離でもあいつは優秀すぎる。
そもそも硬すぎるからな……。
作戦を大体伝え終わったマリアに、ユリーが質問する。
「マリアギルドマスター」
「何かしら?」
「なんか作戦雑じゃない? いつもは、こう……もっと綿密な計画っていうのをやってたと思うんだけど……」
「それは長期の作戦か、サレッタナ王国の中で何かが起こった時の話。不慣れな場所、更に今回の作戦は速度勝負なんだから、根回しなんかもできないの。だから今回は単純に、素早く的確な行動をする為に簡単にしたのよ」
「臨機応変に、ってところであるな」
まぁ自由が利くのは俺たちにとっては少しやりやすいかな。
何が起こるか分からないし、予測できない事も起こりうる可能性があるから、可能な限り自由であればある程ありがたい。
確かに考えてみれば今回の作戦は簡単だな。
まず王子が囚われている所を探す。
それから救出。
最後に零漸をどうにかする。
うん、大体三つの工程に分かれてるね。
救出と零漸のことは同時にすることになるかもしれないけど。
「決まりであるな。他に誰か、異議や不明瞭な点がある場合は聞いておくのだ」
「あっ。ねぇねぇ、お迎えはどうするの?」
「そこは心配しなくてもいいわよアレナちゃん。この二匹は自分たちだけでバルパン王国付近に走ってくることができるの」
「「
アレナの問いにローズが答える。
誰か一人をここに残しておかなくてもいいというのは便利だな。
バトルホースも同じことができないのだろうか。
いやなんならこいつ勝手についていきそうではあるけど。
話を通しておくか。
「二匹が走る時に、バトルホースも連れて行ってくれな」
「「
うん、これで大丈夫だろう。
バトルホースと会話できるっぽいし、一緒に連れて行ってくれるはずだ。
こいつら普通にいい子だもんなぁ。
そこで、何かが俺の展開している操り霞に写った。
ウチカゲもそれが分かったらしく、立ち上がって警戒する。
シルエットは四足の獣だ。
それがこちらに向かって全速力で突っ込んできていた。
「応錬様」
「……あ? これ……」
シルエットの姿が変わった。
一回転して人のシルエットになったそれは、通常より少し速い速度でこちらへと走ってくる。
なんでお前がここに来てんねん。
「どうなってんだ……?」
リゼが若干息を切らしながら、俺たちの前に現れた。
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