8.27.氷照山脈
魔神の場所に行く。
それが何処かも分からなければ、会えるかどうかすらも怪しい。
だが悪魔のことを何も知らない俺たちに、何らかの情報を提供してくれるのは間違いないだろう。
罠でなければ、であるが。
するとウチカゲが首を振って俺の肩を掴んでくる。
「本気ですか!? 罠かもしれませんよ!? 今も他の国で悪魔が活動しているかもしれません! 何かあってからでは……間に合いません……!」
「分かっている」
肩を握る手には力が込められている。
だが手加減はしているのだとわかった。
その力の強さから必死さが伝わってくるが……。
悪魔が俺たちの為にくれた情報というのであれば、行く価値はある。
それに、情報が何もなければ悪魔は本当に敵だということになるだろうし、情報があれば悪魔は俺たちに対して何かを伝える意思はあるということが分かるのだ。
今のところは敵。
だが、この結果で俺も考えを変えなければならなくなるかもしれない。
「悪魔を信用したわけではないが、直接悪魔から話を聞けるのであれば……」
「……目的も分かるかもしれない……ですか」
「そっそ」
この中で唯一悪魔としっかり会話を成せれているのは鳳炎だけだ。
その話し合いの中の様子も含め、鳳炎は今こうなってしまっているのだろう。
途方もない違和感。
自分たちがもしかしたら間違っているのではないかという、懸念。
というか分からないことだらけでこっちはイライラしてんだよッ!!
目的が分からなければ何をどうすればいいかもわからねぇだろうが!
あの悪魔どもさっさと吐けや!!
つっても、あいつらがこのバミル領にしたことは許さん。
これが俺たちのためになるだって?
それだけはどう考えてもおかしな話だ。
ま、それが目的なのかもしれないけどな。
この辺はまだ分からん。
「そう……ですかー……。まぁ応錬様はそういうお方でした」
「んー? どういう意味かなウチカゲ君」
「発想が斜め上なんですよ……。今回も広域治癒なんて使ってしまって。これからどうするんですか」
「何とかなるだろ多分」
「そういうところです……」
国から追われるのかしら。
いや~だなー。
でもまぁ、この技能使わないとほとんどの奴らが死んでただろうし、仕方ないじゃん。
今回は反省も後悔もしていないぜ!
前向きに行こう前向きに!
さて、やることが決まったわけだが、その魔神のいる所が皆目見当がつかん。
どうしたもんか。
「魔神のお話なら、サテラお姉ちゃんの屋敷にあるよ」
「まーじで?」
「うん。暇なときに二人で読んだ。ひょうしょうさんみゃく、ってところに奥さんがいるらしいよ」
なんて?
ひょうしょうさんみゃく……?
えーっと、ひょうは多分氷で、しょうは……正、生、少?
「
いつの間にか少し回復した鳳炎が、その場所について教えてくれた。
その山脈は広大で標高も高く、峠付近に近づくほど氷柱が増えていく場所だが、麓は雪がうっすら積もっている程度らしい。
登るとなると大変だが、通り過ぎたり寄ったりするくらいであれば問題ない場所であるらしいが……。
非常に寒く、この時期に行く人はほとんどいないという。
氷柱って……なんだ、めちゃくちゃ気になるなぁ!?
悪魔云々に関わらず普通に見て回りたいぞ!
ちなみに名前の由来なのだが、氷が照らされる山脈であるということからその名が付いたらしい。
そのままだが、その光景を見てみたいというのは俺だけだろうか。
しかし今は冬で雪も積もっている。
向こうはもっとすごいことになっているのではないだろうか?
「で、今氷照山脈はどうなってるんだ?」
「馬車は無理ですね……」
「まぁそうだろうな。でもラックがいるから移動はできるか。近くに村か何かあるのか?」
「いえ、ありません」
「あ、そう……」
んー、となると、魔神がいる場所探すのは難しいかもしれないなぁ。
この時期にそんな場所で長期的に捜索するのは難しい。
誰か地形を知っている人物がいればいいのだが……。
流石に寝泊まりとかできそうにないだろうからなぁ。
洞窟とかあれば違うんだろうけど、あるかどうかも分からないからね。
「まずは氷照山脈の情報収集だな」
「サテラお姉ちゃんの部屋に地図があったよ!」
「じゃあそれ見せてもらうか」
ま、周囲の様子を見るに……サテラの屋敷に戻れるのは夜辺りになりそうだけどな。
この魔物の死体、片付けにどれだけ時間かかるんだろうか……。
戦死者もいるし……葬儀とかもしてあげないとな。
落ち着くまでは調べ物は後にするか。
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