8.10.周辺観察


 アレナが悪魔と対峙している時……。

 二人と一匹はバミル領の全容を把握するために空を飛んでいた。


「どうだ、どっちから来そうか分かるか?」

「あの時と同じく魔物の軍勢で襲わせるということであれば、進軍しにくい森は避けるだろうが、夜襲となればそうとも限らん。だが魔物自体は単純だ。指揮していない場合は森の中を好んで進んでくるだろうな」

「となると……二方向には注意を払っておかないとな……」


 バミル領周辺には二つの方角に森がある。

 どちらも広大で自然豊かである為、狩りなどもそちらで行うことができるのだ。

 そのため、魔物が森から出てくることも珍しくない。


 木の柵しか建設されてはいないが、森側の方はそれなりに整備されており、防衛もすることができそうだ。


 もう二方向は森がなく丘や平原が続いており、ガロット王国に行く為の整備された道などがある。

 その方角からであれば進軍はしやすいだろうが、発見される可能性は増える。

 とはいえ、数にものをいわすのであればこちらを選んで進軍してくる可能性は十分にあるな。


 というか防衛戦ってむずいんだよなぁ~……。

 攻める側の方が楽なんだぜ攻城戦ってよぉ!

 利点としてはどこからでも攻めれるっていうのがある。

 防衛側はそれを見越して準備しておかないと簡単に崩されてしまう。


 前世での籠城戦知識や攻城戦知識は、この魔法が使われている世界で通用するわけないし、さーどうしたもんかと悩んでますハイ。

 だが森側はそれなりに対策はしてあるので、その反対側の整備を急いだ方がいいかもしれないな。

 何処から来られても問題ないようにしておかなければ。


 くそー、サレッタナ王国では来る方向が分かってたし、時間もそれなりにあったし人員も充実していた。

 だが今回は足りない物ばかりだ。

 これは本当に難儀!


「で、どうする?」

「んー……まだ時間はあるが、ない。早急に防衛設備を整えなければならないだろう。優先するべきは森の反対側であるな」

「土地精霊で簡単に作るか?」

「それでもいいが、領民たちに作らせないとこういうのは意味ないだろう」


 彼らが守らなければならない場所なのだ。

 技能で簡単に作れるとはいえ、任せられることは任せておいた方がいいというのが鳳炎の提案だった。


 確かにそう聞くと、彼らに任せるのがいい気がしてくるな。


「じゃあ俺たちは何をするんだ?」

「私たちはよそ者だ。戦う時以外はサテラたちにアドバイスをする程度でいいのではないか?」

「いいのか……それ……」

「彼らの街だ。私たちの判断で指示をすると、納得しない者も現れるだろうからな。だから私たちはこの街の危ない所などを見つけるのだ。攻めてくる場所の予測も立てないとな」

「難しそうだなぁ……」


 それが一番難しいだろうなぁ。

 ていうかあいつら飛ぶし。

 前回みたく軍勢を引き連れてくるということであれば、そっちの方は何とかなるかもしれないけど、悪魔だけは簡単に侵入を許してしまいそうだ。


 あいつらの能力、基本的に特殊なのが多いんだよな……。

 俺が見たあの塊。

 完全に人の姿をとっていなかったし、洗脳という技能を持っている厄介にもほどがある敵だった。

 ウチカゲや零漸に吹き飛ばされてるから、接近戦には弱いのかもしれないけどね。


 今回もそいつらが来るかどうかは分からないけど、警戒はしておいた方がいい。

 魔水晶が埋まってたら洒落にならんし、俺はそれを探しにでも行ってみますかね。

 アレナとダンジョンに行った時、土地精霊で地面の中の様子を見ることができたし、同じ要領で魔水晶を探すこともできるだろう。


 多分零漸も同じ感じで探していただろうしな。


「じゃあ俺は魔水晶が周辺に散らばっていないか探ってみる」

「分かった。他にも何か気になるものがあれば教えて欲しい」

「あるか分からんが、まぁ見ておくよ」


 何かあれば苦労はしないけどな……。

 まぁなんにせよ今は手掛かりが欲しい。

 サレッタナ王国の時みたいに何か仕込まれていたら厄介だし、後でバミル領の中も調べてみることにするか。


 鳳炎は俺が頷いた後、そのままどこかへ飛んでいってしまった。

 あいつはあいつなりに何かするだろうし、放っておいても問題はないだろう。


 一番こういうことについてしっかりしているっぽいしな。

 後は援軍がどれくらいで来るか、だな。

 鬼たちのことをサテラが上手く領民に伝えていたらいいのだが……。

 まぁ大丈夫だろう。

 ここは領主であるサテラを信じることにしよう。


「よし、ラック。地面に降りてくれるか?」

ガルァ了解


 よし、じゃあ調べてみましょうかね。

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