8.5.バミル領の現状
サテラの屋敷にお邪魔してしばらく経った後、アレナとバラディムは模擬戦をする為にちょっとした準備をしている様だ。
その途中、ふと思い出したことがあるのだが……。
「あれ?」
「どうしたの?」
「そう言えば鳳炎ってまだなのかな? 前鬼の里で一泊してるか?」
「鳳炎さんですか? それなら昨日見かけましたが」
「え、知ってんのバラディム」
「サレッタナ王国では有名人ですからね。こちらにも彼の話は届くんです」
へー、本当にあいつ有名人だな。
ていうか昨日にはここにもう来てたのか。
でもサテラとバラディムとは面識がないから、どこか適当な場所に泊っているのだろう。
まぁいるということが分かっただけでもよしとするか。
ていうかあいつ今何してるんだろう……。
「応錬さん、今アレナってランクはいくつなんですか?」
「ああ。Cランクだ」
「え!? Cランク!?」
「そっそ。普通に技能が強いからな……。依頼をどんどんこなしていけば、Aランクもすぐだ」
「ええー! すごい! ……あれ? そう言えばウチカゲさんと零漸さんはどうされたのですか?」
「ああー……いろいろあってなぁ……」
ウチカゲは破壊された里の復興。
零漸は冬になると冬眠してしまうという面倒くさい足枷を背負っている。
前鬼の里もあれだけ壊れていたし、復興にはまだまだ時間がかかるだろう。
ほんと、俺ウチカゲに相当助けられてきたんだなっていなくなってから気が付いたよ。
零漸は……冬眠から覚めたらさっさとレベル上げさせて進化してもらわないとな。
結局神霊の類になるんだろうし、冬眠はしなくなるだろ。
多分。
「俺らもそうだが、サテラも随分と頑張っているみたいじゃないか。住民の反応を何度か見たが、それでどれだけお前が慕われているか分かるぞ」
「フフッ。私じゃ何もできませんから、町の人たちの声を聴くことに専念しているんです。困っていることを解決すれば、いい街になることは間違いないですからね」
ほんとこの姉妹幼いのに頭良すぎじゃない?
普通この歳でそんなこと考える奴なんていないぞ。
アレナもアレナで頑張っていたが、サテラも同じように頑張っているんだな。
こりゃその辺の貴族より有能かも。
貴族のことよく知らないけど。
「でも……最近人手不足で困っているんですよね……」
「どんなことで?」
「大工さんが足りないんです。この街に入る時、建材が置いてありましたでしょう? あれ、二ヵ月くらい前から置いてありまして……」
「住民の家や来訪者の宿、それにギルドの設立、教会なんかも建てているのも見たな……。そうか、城壁建設に回すだけの人材が今はいないのか」
「はい。人々は自らの生活を優先します。なのでどうしても困っていることに耳を傾けると城壁建設に裂く人員がいなくなってしまいまして……」
やはりまだまだ復興途中、といったところか。
頑張ってはいるようだが、人手不足はなかなか解決しないらしいな。
建材などはガロット王国から寄付されてくるらしいが、大工はなかなか寄越してもらえないらしい。
ガロット王国は広く、城壁の整備や家々の立て直しなども頻繁に起こっているようなので、人員の補充はあまり期待はできないようだ。
確かにあのガロット王国は城壁の防衛施設がめちゃくちゃ充実していたからな……。
「でも防衛施設の建設は大切だろう?」
「そうなのですが、今はガロット王国の兵士さんたちがバミル領を巡回して魔物や盗賊たちを倒してくれているのです。なので復興時からこれといった危険がなく、あまり危機感を持たれていないのだと思います」
「なーるほどねー」
これから悪魔が来るってのに、城壁が完成していないってのはちょっと問題かもしれないな。
今俺たちがいる場所は城壁に囲まれているが、その外の方が住民は多く、生活に大切な施設も多く点在している。
ていうかあいつら飛ぶからな……。
小さな魔物相手になら有効かもしれないが、悪魔にとっては城壁もないのと同じか。
でも最低限の食い止めはしないとなぁ。
木の柵はあるが、それだと一発で壊されてしまいそうだ。
「あとは……ギルドの人員と冒険者の募集……。食料事情などは安定してきましたが、まだガロット王国からの輸入に頼っているのが現状です。それに職人さんが圧倒的に少ないので、彼らには負担を掛けてばかりです。もう少し改善してあげたいのですが……残念ながらまだ私たちの力だけではこのバミル領を支えれないのが現状です……」
「お、おう……。まぁそう落ち込むなって。そうやって頑張っている姿を見てるから皆お前を慕ってくれるんだ。何とかなるさ」
「そうですね」
んー、このお姉さん本当に頑張ってるな。
こりゃ慕うのも分かりますわ。
まだ襲撃まで時間があるし、これだったら一度ガロット王国に行ってアスレに話をして見るのもいいかもしれないな。
ついでに増援も送ってくれるか聞いてみるとするか。
「若いのによくやってるよマジで」
「フフッ、皆で過ごした思い出の故郷ですから。だって私、領主様の娘ですからね!」
「アズバル、だったな。一度会いたかったぜ」
「……お墓があるので、この後ご挨拶に行きますか?」
「じゃ、そうしようかな」
俺たちが話していると、どうやら二人の準備が整ったようでアレナがこちらに声をかけてくれた。
「よし、まずはあいつらの戦いを見るとするか」
「はい!」
「応錬ー! 審判ー!」
「やれってか……」
ま、いいけどね。
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