7.49.準備


「ど、どうして!?」

「それは分からない。だが、私がアトラックから聞いた話だとそうだったのだ」


 鳳炎は嘘をついた。

 だがアレナはそれを聞いて疑うことはしなかったようだ。


 流石に天の声から話を聞いたとは言えないか。

 だがまだ時間はある。

 鳳炎のお陰でここで集めれる情報はそれなりに集めれたと思うし、確かに早めに行って何かの対策をしておいた方がいいかもしれない。


 来ることが分かっていれば、彼らもやりようはあるだろう。

 そう簡単に何度も人が住んでいる場所を壊されてなるものか。

 それが例え悪魔にとって邪魔である行為だとしても、何の罪もない者たちが殺されるのを黙ってみているわけにはいかないからな。


「また……? また壊されるの……?」

「壊させはしないさ。だから戦いの準備をするんだ。ちょっと帰るのが早くなるが……」

「うん……」


 しょんぼりしているアレナの頭を、俺は軽く叩いて気持ち程度に励ます。

 こんな事くらいしかできないからな。

 さぁ、やるとなったらとことんやるぞ。


 俺も進化して能力値も上がった……しな!

 まぁステータスはあんまり変わってなくても、攻撃力とかは上がってるだろ……。

 人間の姿で何処までできるか分からないが、何とかなるだろう。


 本当であればイルーザに話を聞きに行きたかったが……零漸が起きていない以上、追及するのは難しいか。

 あいつ寝てんのかなやっぱり。

 顔だけ見ていくことにするか。


「鳳炎、飛んでいくか?」

「準備をするのであれば、早く行った方がいいだろうからな」

「じゃあ決まりだ。ラックも飛べて喜ぶだろ」

「ああ。そういえばジグルがお前に会いたいと言っていたぞ?」

「あれ? お前ジグルと面識会ったっけ?」

「昨日ちょっとな」


 そうなのか。

 じゃあ、ローズの所のラックを借りるときにでも話をして見るとしましょうかね。


 飛んでいくことが決まれば、後は準備だな。

 まだムカデの肉何処かで売ってたりしないかな。

 あれがあればラックの食費が凄く浮くんですが。

 あのダンジョンで倒した蟹持ってきたらよかったかなぁ。


「お、応錬、鳳炎! 悪魔はいつ来るの!?」

「予定としては二ヶ月後である。だが向こうに行って準備をするのだ」

「分かった!」


 アレナもなんか知らない間に強くなってたしな……。

 何もしなくても強くなるってこの子相当凄いんじゃない?


 なに、重力系の技能って使わなければ使わない程技能増えて強くなるのかしら。

 俺あんまりアレナが戦ってるところみたことないよ。

 いや、ただ見てないだけで実はめっちゃ戦ってるかもだけどさ。


「鳳炎、お前は何か準備するものはあるか?」

「悪魔との戦いだ。私の持っている一番いい槍を回収してくる」

「……もしかしてお前武器コレクターかなにか?」

「!? そ、そんなのではない! ないぞ!」


 うーん、分かりやすい。

 前にも防具とか武器とか預けてる場所があるって言ってたもんな。

 まぁ俺は別にどうでもいいけど、武器で強さとか変わるのか?


 えっと、俺は特に準備する物はないな。

 あるとすればラックの食事くらい。

 さっさと買い出しに行くとしますか……。


「まぁいいや。じゃあ俺は先にラックの食事でも買ってくる」

「う、うむ。向こうまでは飛んでいけば大体二日と半日くらいで到着するはずである。だが私は先に前鬼の里に寄ってくる」

「何かあるのか?」

「ヒナタに少し話を聞きたくてな」

「そうか。わかった。じゃあ俺とアレナは準備ができ次第向かうとするよ。他に誰か連れていくとかあるか?」

「いや、ない。私たちの事情に首を突っ込ませるわけにもいかないだろう。可能なのはリゼと零漸、そしてウチカゲや鬼の者たちだけであるな」

「じゃあ向こうに行った時にでも援軍を寄越してもらえるか聞いてみてくれ」

「任された」


 よし、じゃあ準備するか……!

 いくぞバミル領!

 二度も壊させてたまるものか!!

 

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