7.48.資料
「「悪魔に!?」」
「声を落とすのだ。ここは静寂とか言う技能は使われていないからな」
「すまん……。だが大丈夫だ。この辺には誰もいない」
操り霞を広めに展開し、周囲を探ってみたが近くには誰もいない。
このまま話しても問題はないはずだ。
だが何故そんな所で悪魔に出会うんだ……?
もしかしてレクアムの残した資料を回収しに来ていたのだろうか。
「そうではない。元からずっと居たのだ。扉の中に……埋まっていた」
「めちゃくちゃ怖いな……」
「そして奴……アトラックという名前なのだが、そいつは様々なことを教えてくれた」
鳳炎はそのアトラックという悪魔から教えてもらったことを教えてくれた。
この世界は千百年前に作られた事。
私たちは二代目で、初代は白蛇の日輪、黒亀の漆混、赤鳥の
名前もしっかり漢字だ。
この四人は元日本人の転生者と認定して問題はないだろう。
「あいつは漆混という黒亀と仲が良かったそうだ。口調が何処かの方言だったからな」
「よく理解できたな……」
「私の爺さんたちがよく方言で話していてな。完全に同じものではなかったがなんとなくで分かった。そしてやはり先代白蛇、日輪は悪魔と何かの協力関係を築いていたはずだ。恐らく他の転生者もそうだろう。でなければアトラックと仲良くなるなどできないだろうからな。それにアトラックは他の者のことも知っていた……。話は聞けなかったが」
「それだけあれば確定だな」
で、問題はどんな協力関係を築いていたか……なのだが……。
「その前に奴は死んだ」
「寿命か?」
「いや、呪いと言っていた。現に奴は私に何かを伝えようとした時、首を刎ねられて死んでしまった。最後に『悪魔はて──』と言ってな」
「……何を伝えたいのか良く分からんな……。てか首を? 誰に?」
「それは分からん。それだけ言って首が刎ねられたのだ。勝手に死んだ……というのが一番いいかもな」
悪魔のことを伝えようとして死んだ……ということなのか?
というか何だその呪いは。
全ての悪魔に呪いがかかっているということになるのか?
「そしてこうも言っていた。話さないのではない。話せないのだ、とな」
「……指定された単語などを言おうとすると死ぬ呪い……?」
「有り得ない技能だが、そういった物があってもおかしくはない」
まぁ確かにな。
前に鳳炎に技能のことについて言われたことがあるけど、この技能とかいうのは危険だ。
こんなに簡単に使えるんだからな。
俺の破壊破岩流なんていい例だ。
だが悪魔全員にそういう呪いがかかっている……のか?
それはまた随分大掛かりなことをしたものだ。
「ねーねー」
「なんであるか?」
「悪魔は、その呪いを解くために動いているの?」
「……可能性は、ある。それがなぜ人が住んでいる街を破壊するのかが気になるところではあるがな」
「それが解呪条件……?」
「そう考えるのが一番いいかもしれないが、なんにせよ悪魔とはもう一度話がしたいな。天の声が悪魔は敵だと断定しているが、私は倒す以外の方法も考えたい」
「それには同意する」
難しい問題かもしれないが、やってみるだけはやってみたい。
だが悪魔から人間の住んでいる場所を守るのは前提だな。
流石に好き勝手はさせられない。
「私がアトラックから聞いた話は大体こんなものである。次にレクアムの資料から見つけたものだが……」
そう言い、鳳炎は俺に一枚に資料を渡してくれた。
これは日本語で書かれたものでこの世界の人は読むことができないようになっている。
軽く目を通してみると、それは魔水晶の研究についてまとめられているものだった。
魔水晶の作り方も書いてある。
魔水晶は、魔力を大量に水晶に溜め込んでから、該当する魔物の子供、もしくは卵を入れると作ることができる。
魔物はダンジョン内にいる生物でなければならない。
一つ作ればそれを複製できるが、十個までが限界である。
地面に埋めることにより、日の光が届く場所に魔物を召喚することができる。
普通に置くとそこから魔物を大量に召喚できる。
地面に埋めると召喚できる量は少なくなるが、ある程度の強さを持たせることができる。
「これは……」
「次にこれ」
これは魔水晶とは関係のないものだ。
だがそこには悪魔との契約方法が書かれていた。
これは日本語ではないところを見るに、実際にレクアムが書いた資料なのだろう。
魔法陣を用意して、そこに自分の血を流して供物を用意することで悪魔の召喚が可能。
供物は魔力。
契約方法は悪魔と召喚者の同意があれば可能。
「レクアムはあの体の中から出てきた悪魔と契約をしていたのか」
「それからは魔道具についての研究が続いている。その全てが、魔力をため込む魔道具を作る物だったが」
「ということは……。こいつは魔水晶を量産する為に悪魔と契約をしたのか? 人一人の魔力量ではあれだけの魔水晶を作るのは無理だろう」
「ああ、その考えであってると思うぞ」
そう言ってから、鳳炎は大量に持ち込んだ資料を一つ手に取り、一つずつ丁寧に燃やしていく。
「おい……」
「もういらないからな。誰かに読まれても面倒である。それに、ほとんどは私の頭の中に入っているから安心するのだ」
「子供になって忘れたりしないだろうな……」
「それは分からん」
小さく鼻で笑いながら、鳳炎は資料を燃やし続ける。
高火力で一気に一つずつ燃やしていくので、塵もほとんど残らない。
鳳炎の話を聞いて、レクアムの目的は分かった。
悪魔に加担していたし、サレッタナ王国を落とそうとしていたのは間違いない。
だがやはり、未だに悪魔の目的は謎のままだ。
呪いを解呪するために動いているということであれば、その行動理由も分からないでもないが……何故伝えれないということに対してそこまで躍起になるのだろうか。
あいつらは一体、何を知っているんだ……?
「よし、応錬。バミル領に行くぞ」
「なに?」
「早い内に向かって準備を整えた方がいい。何が起こるか分からないからな」
「え? え? ど、どういうこと?」
アレナは慌てて俺たちにそう言った。
俺と鳳炎は、一度頷いてからアレナにあの事を話す。
「次に悪魔に襲われる場所は、バミル領だ」
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