7.47.調べてきたもの
ダンジョンからようやくサレッタナ王国に戻ってきて俺とアレナは、鳳炎と合流する為にギルドへとやってきた。
大体三日ほどでダンジョン二つを制覇してしまったわけだが……。
意外と簡単だったなぁ。
まぁ苦戦したと言えば苦戦したんだけどね。
最後のあの蟹野郎はなかなか強敵だった。
でもお陰で進化して人間の姿に戻ることができた。
いやー、意外といい経験値持ってたからなぁ~。
だけど二度と戦いたくはないな……。
「応錬。鳳炎はどこかな?」
「んー、合流場所とか決めてなかったからなぁ。まぁあいつのことだ。ギルドで待ってたら来るだろ」
「そうだね」
気にせずに喋ることができるって素晴らしい……。
意思疎通できないって結構きついからな。
だけど、もう人間の姿に戻れなくなるっていうことはないだろう。
しっかりとした龍になれたことだしな。
でも次の進化先……応龍。
進化する条件が足りないって言われたけど、その条件が何なのか本当に分からないんだよなぁ。
リゼはあれが最終進化先らしいし、何か知ってるかも。
また今度会ったら聞いてみることにするか。
今は何しているか分からないけどな。
とりあえずギルドの中に入り、用意されている椅子に腰かける。
ああ、そういえばアレナにバミル領のことについても話しておかなければならなかったな。
俺も人間の姿に戻れたことだし、説明しておかなければ。
だがここでは良くないな。
鳳炎と合流してから説明できる場所を設けることにしよう。
「あら、応錬君じゃない。なんか久しぶりね」
「お、マリアじゃないか」
後ろから声をかけてきたのは、サレッタナ王国のギルドマスターのマリアだった。
そういえばこいつとも暫く会っていなかったなぁ。
「何してたの?」
「情報収集、といったところか」
「あー、鳳炎君も何か調べものしてたわね」
「今そいつを探してるんだが、何処にいるか知ってるか?」
「それなら知ってるわよ。サレッタナ城にいるはず」
サレッタナ城?
あの貴族嫌いの鳳炎が?
ふむ、じゃあそっちに行った方が早そうだなぁ……。
「じゃあそっちに向かってみるとするよ」
「それはいいけど、貴方たちもう少しCランクの仕事してよねー? じゃないとランク上げられないんだから」
「おっと耳が痛い話だ。よしアレナ行くぞ」
「うん! ばいばいギルドマスター!」
「あ、ちょ……。はぁー、まぁいいけどねー」
マリアは何か言いたいことがまだあるようだったが、それ以上は何も言わずに溜息だけをついた。
応錬達の姿を見送った後、また部屋に戻って書類の整理をするのだった。
◆
サレッタナ城に到着した俺とアレナは、門番に話をして鳳炎が来ているという場所まで案内してもらうことになった。
どうやら鳳炎は書斎に閉じこもっているらしく、誰も入らせないようにと指示して一人で調べ物をしているらしい。
暫くはあいつに任せっきりだったから、俺も何とか手伝わないといけないな。
そうだ、ここに来たんだったら後で零漸の所に向かってみるとしよう。
起きていたら何か話を聞けるかもしれないしな。
「こちらです。鳳炎様! 応錬様とアレナ様がお見えです!」
一人の兵士が扉を強めにノックし、大声で中にいるであろう鳳炎に俺が来たことを伝えてくれた。
暫くすると、奥の方から足音が聞こえてくる。
そして扉が開き、鳳炎が現れた。
「……遅かったであるな」
「すまん、待たせた」
部屋から出てきた鳳炎は、目に隈ができて眠そうな表情をしている。
一体どれだけの時間この場所で調べ物をしていたのだろうか……?
「ご苦労である。私たちは引き続き調べ物をするので、また見張りをお願いしたい」
「はっ! かしこまりました!」
「うむ。二人とも、入ってくれ」
鳳炎にそう言われて中に入る。
周囲は綺麗に整頓された本棚が並んでおり、それは梯子を使わなければ手が届かない程に高い。
ここを今貸し切っているのかと感心するが、それよりも目につくものがあった。
奥に行くと大きな机がある。
その上には大量の書物や瓶、何かの魔道具などが数多く置かれていた。
明らかにこの書斎にはないはずの物が転がっていることに違和感を覚えて、もう一度周囲を見渡してみる。
すると、本棚の本はほとんど抜かれていなかった。
これだけ大量の本が机に乗っているのであれば、この部屋の本棚に空きがあってもよさそうなものだが……ない。
「鳳炎、これはどっから持ってきた」
「レクアムの研究室だ」
「レクアム……?」
「まず簡単な事から説明していくぞ」
「その前のこれ飲め」
そう言って、俺は回復水を鳳炎に渡す。
受け取った鳳炎はそれをすぐに飲み干し、空になった瓶を机の上に置いた。
回復水は体の不調を中から治すこともできるもの。
本来は臓器の破損の際に使用するものだが、こういう使い方もある。
エナジードリンクみたいなものだ。
それによって鳳炎の隈は消え去り、顔色が良くなった気がする。
「相変わらずいいものであるな」
「回復水だ。これも危ない技能らしいから、言うなよ……?」
「エナドリではなかったのか!?」
「あの時は周囲に人もいたし、そういう風に言うのがいいと思ったんだ」
「いい判断である」
一度頷いてから、鳳炎は真面目な顔をする。
それから自分でも一つ一つ確認するように、今まで集めた情報を俺に共有してくれた。
「まず……イルーザだが、魔水晶のことは知らなかった」
「嘘だろ?」
「嘘ではない。隠そうとしたのか、それとも本当に知らないかは分からない。零漸が動くことができれば追及できるだろうが、あいつは今寝ている。冬の間は動かすことは難しい」
「……そうか」
知らないというのはおかしな話な気がする。
まぁ俺も実際に見てないし聞いてもいないから、あまりとやかくは言えないが……。
「それで、行き詰った私はレクアムに悪魔が憑りついていたことを思い出したのだ」
「……うん」
「応錬、お前がレクアムと戦った時、奴は意識を乗っ取られてはいなかったんだろ?」
「見た感じはそうだな。性格もあの時と同じだったし」
「そうか。で、レクアムが死んだ後に悪魔が出てきた。奴らは何かしらの協力関係にあったはずだ」
「そう言えばダチアとかいう悪魔と一緒に出てきたしな」
なんて言ってたっけな……。
あんまり内容は覚えてないぞ……?
だがレクアムとダチアが何かの契約をしていることは分かった。
実際にはあの二人ではないか……レクアムは悪魔と契約したと言っていたな。
「それで私は、レクアムの研究室に何かがあるのではないかと踏んで、探しに行ったのだ」
「あー。そういえばあの地下牢の最奥に部屋があったな」
「何故お前がそれを知っているのだ?」
「え?」
だって……操り霞で見えたから……。
まぁその時は子供たちを助けるので精いっぱいだったから調べるなんてことはできなかったけど。
「あそこには魔法が掛けられて扉が見えなくなっていたのだぞ? というかいつ入ったんだ?」
「アレナを助ける時……」
「結構前のことだねー」
嘘は言ってないです。
「まぁいい……。で、私はそこでこの資料の山を手に入れ……悪魔に会った」
「「え?」」
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