7.38.Side-鳳炎-レクアムの研究所
悪魔との関わりがあったレクアム。
ダチアと一緒に行動していたのだから、それは確定している。
さて、どう調べたものかと思ったが、幸いにも私はレクアムが使用していたと思われる場所を知っていた。
ラムリー家。
話にしか聞いてはいなかったが、その家の地下から奴隷の死体がわんさかと出てきたというものだ。
そんな事件もあったのかと、当時は頭の片隅に追いやってしまっていたが、まさかここでそれが役に立つとはな。
「勿論場所も把握済み……」
ラムリー家は、地下牢があった屋敷からは追い出されている。
何故追い出されたのかは知らないが、レクアムを匿っていたとしていろいろ面倒なことになっていたようだ。
だが、それは今どうでもいい。
そのおかげで、昼夜問わず屋敷を物色することができる。
地下は倉庫の床から入れると聞いたことがある。
現地には行ったことがないので見てみなければ分からないが、まぁすぐに見つけられるだろう。
何食わぬ顔で堂々と侵入。
数人の住民が見ていたが、特に止めることはなかった。
こんな所に人一人が入っても、誰も不思議がらないだろうかならな。
だが来る前に事前調べをしておくべきだったか。
間取りが一切わからない。
当時の事件のことも調べてない……。
気が急いてしまって一気にここに来てしまったからな……。
まぁ来てしまったものは仕方がない。
情報だけさっさと回収して、当時の事件も調べて情報と照らし合わせてみるとしよう。
門を開けて中に入る。
ほとんど何もない部屋であり、随分と埃も積もっている気がする。
誰も住まなくなった家の風化は異常なまでに早い。
これまで誰もここに入って来たことはなかったのだろう。
さて、地下のあった場所は倉庫だ。
この家の作りからして……恐らく倉庫はあちら側。
これは何度も何度も貴族の家に訪問しては勧誘を断り続けていた時に取得した要らない勘である。
意外と間取りは似たような場所が多い。
特に一階は。
廊下に出て、それらしき場所の扉を開ける。
「窓が割れている……」
面白がって誰かが石でも投げたのだろうか。
破片はなく掃除だけはされている様だが、修理はしなかったようだな。
だがここが倉庫……らしき場所。
そして隅っこに開いている地下への梯子があった。
石で蓋をしている入り口か……。
なかなか手の込んだ分かりにくいことしてくれるものだな。
余程研究しているものを見られたくなかったらしい。
まぁ奴隷の拷問や人体実験の類だからな。
それもそうか。
早速中に入ってみる。
随分と暗かったので、手元に炎を出して明かりを確保した。
中は確かに牢獄になっており、奥の方には扉もある。
コツコツという音を鳴らしながら、その扉を開いた。
時間は経っていようとも、前からあった物は廃棄されたりしていないらしい。
手枷や張りつけ台……さらには何かの薬品を置いていたであろう棚などがある。
しかし、そこにはもう何もない。
台や棚があるだけで、資料などは一切ない様だ。
「ここではないか」
扉を開けて廊下に出る。
牢の近くに何かあるわけでもないだろうし、向こう側は調べたとしても時間の無駄だろう。
拷問部屋の中には、他の場所に続く扉などはなかった。
あるとすればこの廊下の何処か。
壁を手でなぞりながら歩いてみる。
罠があったら洒落にならないが、私は死んでも生き返るので何の問題もない。
有り得ないくらい痛いけどな……。
カッ。
歩いていると、小さな小石を蹴ってしまった。
灯りを付けたとはいえ、暗い場所なのだ。
小さな小石にまで注意を払うことはできない。
しかし、その小石は妙な音を立てた。
カツーンカツン……コッ。
途中まで石が石にぶつかる音を立てていたが、最後に明らかに材質の違う音が聞こえた。
だが周囲を見ても、石以外のものは見当たらない。
蹴った方向に手を伸ばし、慎重に歩いていく。
廊下の最後。
そこまで来て壁に手を触れようとした時、手が壁の中にめり込んだ。
「!?」
慌ててひっこめるが、特に外傷はない。
もう一度手を突っ込ませるが、やはりめり込む。
そのまま奥に手を伸ばしていくと、何かに触れた。
「……木製扉であるか」
巧妙な隠し方だ。
だが隠してあるということは、ここは絶対に見られたくない場所であるということ。
では早速お邪魔しよう。
手探りで取っ手を探し、掴む。
押して入る扉だったので、意を決して壁の中に体をめり込ませた。
だがそれも一瞬のことで、すぐに違う光景が私の目に飛び込んでくる。
机、椅子、本棚に研究材料のサンプル。
様々な物が手付かずで置かれている、レクアムの研究資料室のような場所を発見した。
埃はかぶってしまっているが、問題なく資料は読めるはずである。
「大当たり……!」
早速物色に入る。
魔道具袋を用意して、片っ端からこの部屋の物を詰めていく。
やっていることは強盗と同じことだが、既にレクアムは死んだ。
この資料は有効活用しなければならない。
調べるのには時間が必要だ。
彼は一体何をここで研究していたのか、奴隷を使って何をしようとしていたのか。
もしかしたらそれが全て悪魔に通じる物なのかもしれないのだ。
必要のない書類など一切ない。
こんな所で文字を読みたくはないからな。
さっさと回収して違う場所で読み漁ることにする。
「……!」
がさがさと資料や研究サンプルを魔道具袋に詰めている時、水晶が目に入った。
それは、中に奇妙な生物が入っているものだ。
「魔水晶……!」
レクアムと悪魔は、確実に繋がりがある。
そう裏付けるのに十分な物的証拠だった。
それもすぐに魔道具袋に突っ込んで、他の物も一気に突っ込んでいく。
急げ、急げ急げ。
悪魔との繋がりが確定した今、ここにいることすら危なくなってきている。
ここはレクアムと悪魔が何かを研究していた場所だ。
何か対策を練られていてもおかしくはない。
レクアムの研究室なので罠などは張られて居ないだろう。
だが、人を感知する物は置かれている可能性がある。
悪魔にバレる前に、素早くこの場所を──。
「おい」
「!!?」
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