7.30.イルーザ魔道具店へ……


 俺のレベル上げもしなければならないのだが、まずは気になるところから終わらせていこうと思う。

 まずはイルーザだ。

 魔水晶の事を知っているかもしれない彼女に話を聞きに行かなければ。


 場所は把握しているし、復興も随分と進んでいる。

 恐らく仕事も再開している事だろう。


 朝、俺たち三人は一度集まり、朝食をとりながら会話をする。

 だがアレナにはまだバミル領のことは伝えていない。

 伝えればすぐにでも飛んでいきそうだからな。

 それにまだ時間もある。

 準備ができるまでは俺のレベル上げに勤しむことにしよう。


「で、どうしようか。私だけでイルーザという者の場所に向かってもいいが……」

『ぶっちゃけそれでもいいかもな。俺とアレナはまたレベル上げに行こう』

「そうだな。じゃあアレナはまたこいつと一緒に依頼をこなしてくれ」

「分かった!」


 今の状況を考えると、俺は本当にレベル上げに専念した方がいい。

 マジで不便すぎるんだよ……。


 もういっそのことダンジョンに潜ってみようか?

 いや、だがこの辺にいいダンジョンはあるのだろうか……。


「あるぞ」

『あるのか!?』

「魔水晶が埋まっていたというアレナたちが行った洞窟は、ギルドが管理している比較的安全なダンジョンだ。安全面を無視すれば……二つある」


 近くにあるダンジョンと、遠くにあるダンジョンの二つがあるらしい。

 近い場所にあるダンジョンは、Cランク帯が推奨されている場所のようだ。

 その代わり管理されていないので、最下層に降りても魔法陣などはなく、自力で帰ってこなければならないらしい。

 だがそれは教会にある魔法陣を使用しなかったらの場合。

 とりあえず教会にある魔法陣でもらう魔法石があれば、すぐに帰ってくることはできるようだ。


 そして遠くにあるダンジョンはDランク帯が推奨されているダンジョン。

 中堅に位置する冒険者がこぞってそのダンジョンに潜り、魔物の素材を高く売り払うために用いられるようだ。

 今回は俺とアレナだけで向かうことになるので、Dランク帯が推奨されているダンジョンの方に向かう方がいいかもしれないな。


 情報収集は鳳炎とリゼに任せておけばいいだろう。

 一番鳳炎が大変だろうけど、まぁ頑張ってもらおう。


「鳳炎大丈夫? 凄い大変じゃない?」

「やるしかないさ。なんだか探偵みたいで面白いしな!」

「たんてー?」


 さすがにこの世界では分からない職業……か?

 まぁ聞かないもんなそういう話。

 あったらあったで面白そうだけどね。


「では、私は早速行ってくることにする」

「うん。私たちは遠い方のダンジョンに行ってみるね」

「ああ。地図と食料、事前の情報収集は忘れてはならないぞ?」

「大丈夫!」


 こ、この辺はアレナに完全に任せることになりそうだ……。

 大丈夫かね?



 ◆



 

 Side-鳳炎-


 さて……イルーザ魔道具店というのはここであっていたかな。

 しかし、結構賑わっているのだな。


 空からであればその賑わいは一目瞭然。

 長蛇の列とはまではいかないにしろ、それなりに並んでいる人がいる所を見るに繁盛はしている様だ。

 これから大切な話をする予定なので、もう少し人が居なくなってから店に入ることにしよう。


 しかし、これはいったいどれくらいまで続くのだろうか……。

 暇なので並んでいる人にイルーザという人物の人柄でも聞いてみることにするか。


「今いいだろうか?」

「え? あ、はいって鳳炎さん!?」

「この反応も慣れたものだ」


 一人の客が自分の名前を叫んだものだから、周囲の人々の視線もこちらに集まってくる。

 これも慣れたものなのではあるが……どうしていつもこうなってしまうのか……。

 そんなに有名になったつもりはないのだが。


 まぁ、一番は目立つということが問題なのだろう。

 それくらいは自分でも分かっている。

 だが注目されるというのはそんなに悪いものではないからな。

 いつしかこうして調子に乗ってしまった末路だ。


 さて、そんなことは置いておいて話を聞こう。


「イルーザという人物について少し教えてもらいたいのだが」

「ああ、ここの店主ですね。お若いのに孤児であった子供を養子に持ち、今ではその子たちと魔道具店をしていますね。人柄もいいですし、なにより彼女の作った魔道具は良い品なのです」

「ほぅ?」


 悪い印象はついていないようだな。

 だが魔道具という物は基本的に高価な物ばかりだ。

 平民が買えるような品物まで取り揃えているのだろうか……?


 いや、だが零漸が魔女っ娘は魔水晶に手を加えていたとか言っていたな。

 魔道具の最適化……というか安く売る為の量産方法を確立しているのか?

 どちらにせよ、魔道具は魔水晶にも当てはまる。

 魔水晶について知っていても……おかしくはない情報だな。


「どんな魔道具を売っているんだ?」

「それは中に入って見てもらった方がいいですね。でも小さいものが多いですよ」

「そうか。情報提供感謝する」

「あれ、店には入らないので?」

「ゆっくり見たいのでな。人が少なくなった時にまた入る」

「そうですか。日が沈む前には閉まっちゃいますので、それまでには中に入った方がいいですよ」

「気を付けよう」


 子供たちのこともあるので、閉店の時間は早いのだろう。

 まぁそれに合わせてはいることにするか……。

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