7.24.知ってるそいつ


 依頼を達成するためにギルドに戻って来た俺とアレナは、早速受付に行って依頼報告を済ませた。

 素材を手渡して完了なので、とても簡単だ。

 駆除は長期戦となる予定なので、一度に数十匹狩ってくればいいという内容だったが、全部倒してしまったのは言わないでおこう。

 後にバレるだろうが。


 リゼは一緒にここに来てしまうと良くないので、途中から別行動してサレッタナ王国に戻ることになった。

 合流場所はギルドから少し離れた場所に指定しているので、まぁ大丈夫だろう。


「にしても……本当にこれアレナさんとその……蛇? 従魔で達成したの?」

「そうだよー!」

「凄いわね……」


 受付嬢に驚かれるのも無理はないだろうな。

 つっても俺はほぼ何もしていないが。

 やったことと言えば回収して食べたくらいか……。


 今回はリゼの活躍が著しかったな。

 あの雷魔法は非常に強かった……。

 俺もそういう魔法が欲しかったなぁとは思うが、今持っている物だけでも満足しているので贅沢は言うまい。


 さて、依頼達成報酬も頂いたことだし、そろそろ情報収集をしている鳳炎と合流して進捗を聞きたいな。

 とは言っても、一日でそんな情報は集めれないだろうけど。

 そう言えば合流場所を決めてなかった……。

 でも鳳炎なら適当に探してきてくれるだろう。

 適当にふらついていれば見つけれるかな。


 ああ、そういえばリゼが人探し得意だったな。

 だったら折角だし、リゼに鳳炎のいる場所まで案内してもらうことにするか。


『よし、アレナ行くぞ』

「ん? あ、行くの? 分かった」


 尻尾で足元を突ついて、外に出るように促す。

 そしてリゼのいる場所に向かって行く。


 しかし……あれだけの魔物を食べたというのに、まだレベルは上がらないな……。

 もう少し強い魔物は居ないのだろうか?

 レア度の高い魔物でなければ、経験値はなかなか手に入らないっぽいし。

 でもSランクやAランク、Bランクの依頼はまだ行けないし、こりゃもう少し時間がかかるなぁ……。


 そろそろ昇格試験ないのかね。

 Sランクになったらマリアと模擬戦するらしいけど。

 まぁその辺はまた鳳炎に聞いておくとするか。

 まだ俺たちCランクの仕事ほとんど受けてないから、昇格はもう少し時間がかかりそうだな。


「あ、おかえり~」

「ただいま!」


 そうこう考えている内に、リゼの待っている場所まで到着することができた。

 壁に寄りかかって暇そうにしていたな。

 さて、じゃあ早速鳳炎を探してもらおうか。


『リゼ、鳳炎の場所は分かるか?』

「ん? 分かるわよ。一度会ってるから匂いは覚えたし」

『便利だな……。今あいつはどこにいる?』

「真上」

『ほ?』

「んー?」


 俺とアレナは、同時に空を見上げる。

 すると、炎の翼を羽ばたかせながら降下してきている鳳炎の姿が目に入った。

 探す必要すらなかったようだ。


 相変わらず目立つなぁと思いながら、降りてくるのを待つ。

 着地と同時に翼を仕舞い、俺たちのほうに歩いてくる。


「収穫があったぞ」

『マジ!?』


 よくもまぁこんな短時間で情報を収集したものだ……。

 普通にセンスがあるんじゃないかこいつ。

 でも本当は零漸の方がこういう仕事得意なんだろうな。


「場所を変えるぞ」

「え、そんなに重要なお話なの?」

「この際だ。リゼにも聞かせておこう。巻き込むことになってしまうが、戦力的にも欲しいしな」

「せ、戦力って……。私はあんまり協力するつもりないわよ? メリルの側にいないとだから」

「それでもいい。情報収集役として欲しいんだ。それくらいならそのメリルとやらの側にいてもすることができるだろう?」

「え、多分……。何を調べるか分からないけど……」


 け、結構強引に持っていくんだな……。

 まぁ俺たちと同じ境遇にある人物だ。

 先代白蛇が言っていたことにも繋がるし、俺たちの協力は必要になる時が絶対に来るだろう。

 昔……五百年前は協力していただろうしな。


 だが落ち着いて話ができる場所か……。

 こういう時バルトの静寂っていう技能が役に……。


『あっ』

「? どうしたのだ?」

『いや、いい技能を持っている奴が居るぞ。密会には持って来いの技能を』

「ほう? 誰であるか?」

『奴隷商のドルチェ』


 あいつに頼んで技能を使ってもらえば、安全な密会が可能だ。

 久しく会っていないし、今の姿を見ても俺だとは思わないだろうけど、名の通った鳳炎のことからそれなりに優遇はしてくれるだろう。

 こいつが奴隷商との関わりがあるかどうかは知らないが。


「初めて聞くな……。奴隷商とはあまり絡みがなかったからな」


 なかったか……。


「分かった。そいつに頼んでみるとしよう。それとだな、さっき零漸と話してきた」

『え!? 零漸起きたの!?』

「一時的な物だと思うぞ。また眠ってしまうだろう。冬が終わるまではあのままだ」

「へー……」

「だがあいつ、めっちゃ重要な情報を持っていやがった……」

『そうなのか?』


 零漸が重要な情報を持っていたとは知らなかったな。

 完全に盲点だったぞ。


「魔水晶のことについて知っている奴が居たらしいんだ。ムカデを掃討している時に出会ったらしい」

『おうふ……まじかよ……』


 それはもう少し早く知っておきたかったなぁ……。

 今まで誰も魔水晶のことについてなんて知らなかったんだ。

 それを知っている奴が重要な情報を持っていないわけがない。

 あの悪魔も水晶を埋めるとかどうとか言ってたし、あの魔水晶は悪魔と関係がある物で間違いないだろう。


 話を聞くことができれば、進展するかもしれない。

 零漸……ちょっと遅かったけどよくやった!


『で、それどんな奴なんだ?』

「零漸の奴名前を魔女っ子としか呼んでなかったから名前を憶えていないらしくてな。藍色の髪の毛で男っぽい見た目の女だそうだ。それと子供を二人か三人連れて逃げていたそうだぞ」


 …………。

 おん?

 魔女っ子って事は魔女の格好してて、藍色の髪の毛で、男っぽい見た目の女……?

 それと子供を二人か三人連れていたって…………?


『あれ……? そいつ知ってるかも』

「なんだとぅ!?」


 イルーザじゃね?

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