7.23.Side-鳳炎-詳しく
「零漸! 早く教えろ! 詳しく話せ!!」
「ちょ、わ、分かったっすから……」
ここに来てまさかの有用な手がかり。
サレッタナ王国の中で起きたことのはずなので、何処かにその魔女っ子本人もいるはずだ。
魔法使いだということは零漸の話から理解できるが、それ以上の情報がない。
もう少し詳しく話してもらわなくては。
「どこで出会った!」
「え、えっと……応錬の兄貴にムカデの処理を頼まれて……ウチカゲとアレナと離れてすぐにあったっすね。魔女の格好してて、藍色の髪の毛で、背は結構低かったっす。男かなって思ったっすけど、声を聴いて女って分かったっすね」
「……名前は?」
「聞いてないっす」
姿が分かればとは思ったが、魔法使いなんてこの辺にごろごろいるから特定は難しそうだ。
名前が分かれば何とかなったかもしれないが……私も流石にそこまで人の背格好などを覚えていられるわけではない。
……ほかに何かないか?
「魔水晶のことっすけど、俺が魔水晶壊しに行くんでーって言ったら露骨に反応したっすよ。昔弄ったことがあるとか、同じ人の魔力で繋がってるとか、いろいろ言ってたっす」
「おいおい……。その情報があったら私がどれだけ楽だったことか……」
魔水晶のことについて知っているのであれば、悪魔との繋がりがあるかもしれない。
それが間接的にだとしても、話は聞きに行くべきだろう。
しかし如何せん名前が分からないとなると厄介だ。
探すのに相当な時間を有してしまうかもしれない。
隣にいたクライス王子にも話を聞いてみたが、やはり知らないということだった。
まぁ流石に一介の冒険者を王族が知っているわけもないか……。
後は冒険者の皆に聞いてみれば、一人くらい知っている奴が居てもおかしくはないだろう。
ここは私の人脈を使えば、簡単に探し出すことができるはずだ。
「ああ、あと子供連れてたっすね」
「子連れなのか?」
「いや……顔は似てなかったっす」
「となると孤児を引き取っているのかもしれないな。その線でも話を聞いてみるか」
これだけ情報が集まっていれば、探すことはできるだろう。
一体どうして魔水晶のことを知っているのか……。
過去に何かあったのだとは思うが、彼女から得られる情報は有用なものになるはずである。
というか零漸は大丈夫なのか?
これから一緒に行動できるのであればしたいところだが……。
「俺っすか? んー……まだまだ余裕で眠れるんすよね……」
「となると、もしかすると起きていられるのは一時的な物なのかもしれないな」
「なんだと……! また寝てしまうというのか!?」
「おそらく……」
冬は始まったばかりだ。
まだ零漸も進化しきっていないので、応錬のように冬場に冬眠しないということができないのだろう。
だがこの話を聞けただけでも今回は満足しておくとしよう。
暫く零漸は活動できないと思っておいた方がいいかもしれないな……。
「零漸! 余は何も教えてもらっていないぞ!」
「すまないっす……。もう暫くは寝させて欲しいっす……」
「ぬぅー……」
しょぼくれているクライス王子の頭を零漸はぽんぽんと軽く叩いている。
そんなことができるのはお前くらいだと思いながら、私は次にとる行動を考えていた。
この城の書庫を漁ってもいいが、まずはこの情報を早いところ応錬にも伝えておいた方がよさそうだ。
そろそろ帰ってくるだろうし、まずは合流するとするか。
「零漸、お前は冬が終わるまで休んでおけ。どうせろくに活動できないだろう」
「そうするっす。迷惑かけるっすね」
「構わないさ。今はこっちも動けないしな……」
「どういうことっすか?」
「ああ、そうか。いや、だがここで言うことはできない。また活動できるようになったら教えるさ」
王子がいる所で応錬の正体を話してしまうのはマズいな。
やめておこう。
今の零漸だと、この部屋から出た瞬間に寝てしまいそうな勢いだ。
しっかり活動できるようになってから戻ってきてもらうことにしよう。
だが折角ここまで来たのだ。
クライス王子に許可だけ取っておこう。
「クライス王子。後日この城の書庫を見たいのですが、構いませんか?」
「む? 構わないぞ? だが奥の古い文献があるところには入れないかもしれない」
「それが一番みたいのですが……」
「父上と相談しなければならないからな。それだけはもう少し待つのだ」
「ふむ、仕方ないですね」
まだ帰ってきていないんだったな。
ではそれまでは入れるところまでの資料を明日にでも読むことにしよう。
よし、今日はここで退散だ。
零漸はここに置いて、クライス王子に任せるとして、私は応錬たちと合流することにしよう。
冒険者ギルドに戻るついでに、零漸の言っていた魔女っ子のことも探そう。
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