7.19.先の長いレベル上げ


 洞窟の奥まで水を展開し、落ちているバディッドを回収して俺たちがいる場所まで持ってくる。

 ごそーっと持ってきたので数なんかは一切数えていないのだが……。

 ちょっと……多すぎやしませんか……。


 俺たちの前には積み重ねられたバディットの山がある。

 それは洞窟の半分ほどを埋め尽くしてしまう程で、てっぺんを見るのであれば見上げる形になるのは言うまでもない。

 俺はともかく、アレナやリゼですらも見上げているのだ。

 四メートル……いや、五メートルはあるだろうか……。


『これ、全部食べるの?』

「当り前じゃない。あんたが人間の姿に戻らないと、私の計画が実行できなんだから」

『恋路とかくそどうでもいいー……』


 確かに俺とジグルは知り合いだけどさ……。

 ていうか恩人に当たるんだろうけど、そこまでの面倒見る気はなかったぞ。

 でもリゼはやる気満々だし……。


 まぁ、零漸が起きるまではこの国を移動できることはできなさそうだし、まだ情報収集も終わっていない。

 あ、そういえばガロット王国のあの二人ならこの姿でも話ができるな。

 しまった……バルトに会った時情報を集めてくれるように頼んでおくべきだった……。

 こっちにはない情報があるかもしれないのに。


 まぁその辺は空を飛んで移動ができる鳳炎に任せることにしよう。

 完全なパシリだけど。


 さて、俺も人間の姿に戻る為にちょっと気合入れて食べるとしますかね!

 マジでこれだけの肉どこにいってるのか不思議で敵わないけど。

 ということでいただきます。


 山積みになっているバディットを一匹平らげる。

 だが天の声によるレベルアップの報告は無かったので、続いて二匹目、三匹目を平らげていくのだが……。

 一向に声が聞こえない。

 しかし九匹目でようやくレベルが1上がった。


 まじか。

 こいつの経験値少ないんだな……。

 でもこれだけあるんだから、全部食べればそれなりにレベルも上がるだろう!

 っしゃ食うぞおらああああ!!


 剛牙顎を使用してプリンみたいな勢いでバディッドを腹の中に納めていく。

 レベルが上がるにつれて取得経験値量も少なくなっていくのか、それともレベルアップに必要な経験値が多くなっていくのかは分からないが、一つレベルを上げるのに食べなければならないバディッドの数が増えていった。


 大体三十分ほどで全て食べ終わる。

 無心に食べていたので今どれだけレベルが上がったのか覚えていない。

 とりあえずステータスを確認してみることにする。


===============

 名前:応錬(おうれん)

 種族:龍の成り損ない


 LⅤ :211/300

 HP :1123/1123

 MP :2120/2120

 攻撃力:1193

 防御力:1143

 魔法力:2678

 俊敏 :403

===============


 おお!!

 四桁になったぞステータスが!!

 HPと攻撃力と防御力が四桁行った!!

 もうそろそろかなとは思っていたけど、一気に来たな!


 これはなかなか成長したんじゃありません?

 でもやっぱりあれだけの数を食べたのにも拘らず、レベルはあんまり上がらなかったな……。


 ていうか……本当に一掃してしまったんだな……。

 操り霞で奥まで見るけど、一匹も魔物が居ない。

 バディッドだけじゃなくて他の奴も全部片づけてしまったようだ。


 雷技能とかどうやって防いだらいいんだろう。

 土とか盛り上げたら防げるかな。

 あんな足場の踏みどころもない程の攻撃範囲技能の前では無意味かもしれないけど。


 さて、俺のやることは終わった。

 とりあえず一度帰ってまた違う依頼を受けることにしよう。

 今回のバディッド討伐依頼の証はしっかりとアレナが剥ぎ取ってくれているので、依頼も達成できるな。

 あとは帰るだけだが……。


「へー、そうなんだ! じゃあメリルさんは恩人なんだね」

「あの時は本当にどうなるかと思ったわ。でもメリルの家でもお父様が反対し続けて大変だったのよー。姿は魔物だったから」

「あ、そうだよね。どうやってメリルさんの家に住めるようになったの?」

「め、メリルが私が捨てられるならメリルも家出するって言ってね……。本当にあの時は大変だったわ……」


 なんかお話が盛り上がっている。

 ここで止めてしまうのは悪いだろうし、もう少し後で帰ることにするか。

 幸いここには魔物もいない様だしね。


「アレナは? 応錬といつ会ったの?」

「あれはねー。私が奴隷になった時でー」

「えっ」


 よし、止めよう。

 帰るぞお前ら。

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