7.18.リゼの火力


「あ、見えるようになった」

「あははは……ごめんね……」


 アレナの目がようやく見えるようになったらしい。

 なんとも迷惑な野郎だとは思ったが、ここは静かにしておこう。


 とりあえず死んだバディッドは水に入れたまま地面へと降ろし、その辺に固めておく。

 あとで俺が食べるためにな!


『お前は戦闘の経験浅いのか?』

「え、ええ……。ずっとメリルの隣にいたから……」

『じゃあ護衛は完璧なの?』

「私の技能は範囲攻撃が多いから……護衛とかは向いてないのよね……。あ、でも勿論単体攻撃の技能もあるわよ!」

『もう面倒くさいから技能教えてくれないか……?』

「そ、それもそうね……」


 ということでリゼに技能を教えてもらうことになった。

 さて、こいつは最終進化を成し遂げているので、一体どれだけのステータスになっているか気になるところだ。

 リゼは一度技能を確認してから、俺とアレナに自分のステータスを教えてくれた。


===============

 名前:リゼ

 種族:雷豹


 LⅤ :300/300

 HP :656/656

 MP :1435/1435

 攻撃力:546

 防御力:879

 魔法力:789

 俊敏 :3278


 ―特殊技能―

『陸の声』『狩りの本能』『過去の言葉』


 ―技能―

 攻撃:『雷砲』『サンダークロー』『アイスクロー』『虎斬り』『轟雷顎』『剛瞬拳』

 魔法:『氷塊弾』『氷操作』『雷電蛍』『サンダーウェーブ』『サンダーピストル』『静電気』『雷爆』

 防御:『氷結界』『氷鎧』

 回復:『大治癒』

 罠術:『雷縛』『足止め』

 特異:『絶対零度』

 自動:『纏雷』『三段斬り』

 奥義:『蒼白の雷雹』


 ―耐性―

===============


 ……速くね?

 でもなんだろう、速いってだけで、特筆して長けているステータスはないな……。

 俺の方が勝っている気がするぞ。

 まぁ俊敏は俺の十倍はあるんだけど……。


 ていうか何だ特殊技能の狩りの本能って。

 他にもいろんな知らない技能あるけど、耐性が一つもないというのは……。

 ……まぁ家の中で過ごしてたらそんな危険な目にも合わないか。

 随分とぬくぬく過ごしてきたんだな??


 というかリゼにも奥義がある。 

 俺も鳳炎もあるけど、零漸のは未だに見たことが無いな。

 起きた時にでも聞いてみるとするか。


「こんな感じね。単体攻撃ができるのはアイスクローとサンダーピストル、氷塊弾、雷伝蛍だけよ」

『すっくな』

「つ、使い方次第では他のも単体攻撃になるから!」


 だとしても四つって少なすぎるだろう。

 俺は使い方次第で単体攻撃になるものもあるが……リゼの技能はそうはならなさそうだ。

 本来であれば一つ一つ確認していきたいところではあるが、今は洞窟の中で戦闘中。

 あまり時間をかけていてはいけない。


 まずはこの洞窟にいるバディッドを処理しなくては。

 だが範囲攻撃が多いというのであれば、ここはリゼに一度任せてもいいかもしれない。

 というかやってみて欲しい。

 どれだけの火力があるのか気になるからな。


 攻撃力、魔法力共に俺よりも下だが……。


『じゃあ俺とアレナは下がっておくから、リゼだけでやってみてもらっていいか? そっちの方が早そうだ』

「え、いいの? 本当に一瞬で終わるわよ?」

「リゼさんがやるの? 私リゼさんの技能みたい!」


 相当な自信があるのか、リゼは自信ありげにそう言った。

 そこまで言うのであれば是非とも見せて欲しい。


 俺とアレナは後方へと下がり、とりあえず巻き込まれないように空圧結界を張っておく。

 これであれば雷も弾くことができるだろう。

 多分。


 準備ができたことを確認したリゼは、軽く腕まくりをして手の中に雷の玉を作り出す。


「いいかしらー?」

『大丈夫だー』

「いいよー!」


 今度は自分のタイミングだけではなく、俺たちにも気を配って一度声をかけてくれた。

 二度失敗はしないようにするその心がけ、いいと思うぞ。


「よーしっ。『サンダーウェイブ』」


 手に作り出した雷の玉をぽいと地面に放り投げる。

 ゆったりと降りて行ったその玉は、地面に触れた瞬間に広がった。

 それは洞窟の壁、床、天井を走り、人が走る程度の速度で奥へ奥へと向かって行く。

 こちら側には被害は出ていない。

 どうやら雷が流れる方向を指定できるようだ。


 波のように走っていく雷は、いつしか奥へと進んでいって見えなくなってしまうが、それと同時にバディッドの鳴き声も聞こえなくなっていく。

 あの雷に触れたバディッドが息絶えたのだ。

 遠くから雷の音と何かが無数に落ちてくる音が聞こえて来た。


「こんなもんかしらね」

「わぁー! すごい! 一瞬だった!」

「そうでしょ~! 速度は遅いけど、天井に捕まっているバディッドであればこれが効くかなって思ったのよ。本当はもっと攻撃範囲は広くて持続時間も長いんだけどね」

『広範囲の持続型攻撃技能か……。お前、なんであの時いてくれなかったんだ』

「あの時?」


 これがあれば俺と鳳炎や皆で頑張った魔物との戦いが楽に終わったかもしれないのに……。

 もっと早く出会いたかったぞ……。


 お前のそれがあればなぁ!

 俺はあんなにマナポーション飲まなくてもよかったんだよぉ!!

 何本飲んだかも覚えてねぇし、なんなら冒険者共箱で持って来やがったからな!!


 はぁ……過ぎたことをあーだこーだ言っても仕方がないか……。

 でもその技能、多対戦には本当に便利だな。

 空を飛ぶ敵には使えなさそうだけど。


「応錬、応錬。早くっ」

『ん? あ、そうか。食べないとな』


 その前に回収から始まるんですけどね。

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