7.13.リゼ
夜になり、俺と鳳炎はあの時集まった場所にもう一度来てそこであの白虎を待っていた。
しかし……本当に来るのだろうか?
言っては何だがここはサレッタナ王国の外であり、ここにあいつが来るかどうかと言われると……少し不安だ。
とは言えサレッタナ王国の中で会話をするのは厳しいだろうし、この辺が一番良いんだよな……。
幸いそんなに離れているわけではないけど、どうやって探し出そうとしていたのだろうかと気になってしまう。
「来るのか……? そういう技能を持っているようなことは言っていたが……」
『まー来なかったら探しにいくさ。夜であれば俺の泥蛇が使えるからな。何とかなるだろ』
「じゃあその時は任せる」
あんな目立つ魔物、操り霞で見つけれないはずないしな。
前みたいに探っていけばいいだろう。
それに、隣にいたあの二人の恰好からして、貴族だということが分かる。
爵位とかは分からないけど、それが分かっただけで捜索範囲は格段に狭くなるからな。
とは言え、今晩来てくれた方がいいのには変わりがないのだが……。
「そう言えば応錬。奴に会って何を聞くつもりだ?」
『さてどうしようかね』
「決めていないのか……」
そりゃそうですよ。
次いつ会えるか分からないから、あの時は声を掛けただけだし。
でも向こうも何か話したいからこうして夜に時間を指定したはずだ。
別に向こうからの質問に答えるだけでも問題はない。
仲間になって欲しいとまでは言わないが、俺たち日本人はお前以外にもいるんだよということを伝えることができたのであれば、それでいいかもな。
昔みたいに今は一人じゃないし。
あいつも恩人の側を離れるなんてことはできないだろう。
『おい、来たぞ?』
「本当に?」
少し広めに展開している操り霞に反応があった。
姿は虎のままであり、周囲を気にしながら一直線にこちらに向かってきている。
国の外だというのによく見つけれたものだ。
しばらくしていると、姿を現す。
暗い夜に、この白虎の青白い模様は淡く光っているので少し目立つ。
だが本当に美しいものだ。
『こんな所に居たのね。まぁいい判断だと思うわ』
「ああ、君は女なのか。笑い転げていて気が付かなかった」
『マジで失礼な奴だよ』
『……え? なんで人間が私の言葉を理解できるの? 急に笑い転げる変人だと思っていたわ』
「おい! 私も元日本人だ! 君と同じ魔物である! 転生者同士はどの様な姿でも意思疎通ができるのだ!」
『ああ、人の姿をとっているのね』
デカい声出すなよ……。
まぁこの辺りだったら問題ないだろうけどさ。
『えーと、名前は?』
『あら、ごめんなさい。私はリゼよ。前世の自分に関する記憶はないわ』
『俺と同じなのか。俺は応錬、こいつは鳳炎。こいつともう一人、零漸は前世の記憶を覚えてるんだがな』
『……全員で転生者は四人いるの?』
『今のところはな。多分これ以上増えることはないだろうけど』
これで四神、もしくは四霊が揃っているわけだからな。
これ以上増えたら四神と四霊が居るということにもなるかもしれないが……まぁないだろう。
さて、こいつも転生者ということであれば、絶対に知っていることがあるはずだ。
『お前はどの声から教えてもらっているんだ?』
『……え? 陸の声のことかしら?』
「やはり全員いるのだな……」
陸の声。
俺は天の声で、零漸は地の声、鳳炎は空の声……。
これもやはり四つあったか。
「君はこの声のことに関して何か知っているか?」
『さぁ? 急に声を掛けられた時は驚いたけど、役に立っているからそこまで問題視したことはないわ』
『俺もそうだな』
辞書って言うことくらいしか知らん。
というかあいつの声あんまり聴きたくないんだよな!
性格悪いもん!
でも、あの声ってよく分かんねぇよな。
なんで俺たち転生者だけに声が聞こえるのか分かんないし、一番おかしいのは……ステータスの特殊技能欄に声の説明がないということだ。
名前はしっかりと載っているのに、その記載が一切ない。
というか調べられないというのが正しいのだろうか?
まぁ俺たちだけが持っている特殊技能なわけだし、説明しろと言われても難しいのかもしれないけどね。
その辺はよく分からん。
『しかし、私以外にも日本人がいるとはね。よく今まで出会わなかったものよ』
『まぁ四人だしな』
「そういえば君は何故人の姿にならないのだ? 普通は魔物の姿で居続けようなどとは思わないはずだが」
『……その……その蛇? 応錬はどうなのよ?』
『諸事情により人化できません』
かなちい。
まぁそれはそれとして……。
確かに今のリゼであれば人の姿をとることはできるはずである。
だというのに何故魔物のままの姿でいるのだろうか?
『私は勿論人化できるわ。でもこの姿の方がレベルも上がるし、何より皆の前で人の姿になるわけにもいかないしね』
『そういうものなのか? 話もできていいだろうに』
『そうでしょうけど、私はこの姿で人の世界に足を踏み入れたの。そんな魔物が急に人の姿になって怖がられたりしたら嫌でしょう?』
「随分家族想いなのであるな」
『う、うるさいわねぇ……』
あの貴族が家族となっているのは間違いないだろうしな。
そうか、こいつは嫌われたくないからこのままでいるのか。
俺の場合はなんか知らんけど、みんなすぐに納得しやがりやがったからな。
ウチカゲの反応も微妙だったし、アスレも飲み込み有り得ないくらい早かったし。
鬼はなんとなくわかるとして、人であるアスレはもっと驚いても良かったくないか……?
あれか、あれが王の余裕というやつか。
『そう言えばずっと気になってたことがあるのよ』
「なんだ?」
『人化する条件……あの取得条件ってなんだったの?』
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