7.12.足りない経験値
空を飛んでの移動であれば、簡単に目的地へと向かうことができた。
今回は俺のためだけの依頼。
サクッと倒して経験値を獲得したいところではあるが……。
このワルフルとかいうふざけた名前の奴、マジで速い。
いや速度的には簡単に追いつけるんですけどね?
この龍の成り損ない無駄に速いからその制御ガァッ!!
『イダア!!』
「何をしているのだ応錬! そっちではない!」
『今の俺速すぎて制御できねぇんだよ! 一直線にしか行けん!』
「香車かお前は!!」
ああ、いい得て妙。
いや待て、感心している場合じゃない。
アレナの技能も速すぎる敵には的を絞れないらしく、不発が何度も続いている。
鳳炎の攻撃も簡単に避けられ、中々攻撃が当たらない。
こりゃ面倒くさいなぁ……。
「チャチャ!」
「ぬおっと! てい!」
「チャチャチャッ!」
急に軌道を変えたワルフルは鳳炎の頭上を通り抜ける。
完全に捉えていたと思われる攻撃だったが、鳳炎はのけぞってその攻撃を回避し、持っていた炎の槍で攻撃を仕掛ける。
が、その速度に攻撃が間に合うはずもなく空を切った。
そのまま突っ切っていったワルフルは、一度地面に降り立って俺たちを睨む。
一匹だというのにまったく引く気配がない。
どうやら勝てると思われているらしい。
だが俺が何の考えもなしに突っ込んでたと思うなよ!
次にワルフルが助走をつけて走り出した瞬間、地面がグワッと持ちあがり、ワルフルの体に水が展開された。
それはすぐに重みを増して襲い掛かり、一切の行動を不可能にさせる。
どれだけ暴れても水が離れることはなく、ずっしりとした重い圧がかかり続けていた。
水捕縛。
移動中何度も何度もこの技能を使用して、こいつが罠にかかり続けるのをひたすら待ったのだ。
素早いし地面をほとんど踏まないのでどうなることかと思ったが、何とか捕まえれたことにほっとする。
三十個くらい置いたぞマジで……。
鳳炎とアレナもその様子を見て、ようやく構えを解いた。
ゆっくり空から降りてくるアレナを待ったあと、俺はワルフルに止めを刺す。
『『剛牙顎』』
喉を噛み千切り、その肉を食べる。
久しぶりの感覚だが、慣れてしまっているのかやはり抵抗はなかった。
【経験値を獲得しました。LVが167になりました】
……おお、結構あるな!
一口でレベルが2も上がったのであれば上出来だろう!
じゃあ全部頂きまーす。
「応錬。討伐部位だけは残しておいてくれよ」
『あー……。どこだっけ?』
「こいつの場合は牙である。頭だけ残しておいてくれれば、私が解体しよう」
『じゃあ任せた』
首を噛み千切って頭を転がす。
それを鳳炎が持って牙を何本かナイフで剥ぎ取ってくれるようだ。
その間に俺は全ての肉を腹の中に納める。
自分の体よりめちゃくちゃデカい魔物だというのに、やはり全部入ってしまう。
一体どういうことなのか、というのは考えることを昔放棄したので今も考えずにただ食べていく。
全て食べ終わった後、また天の声がレベルアップの報告をしてくれた。
【経験値を獲得しました。LVが201になりました】
あんれぇ?
なんかおかしくない?
まぁ40くらいレベルが上がったと考えればいい方なんだろうけど、さっきは一口でレベルが2も上がったのに、全部食べてこれってのは何か……誤魔化されてないですか!?
おい天の声どうなってんだ!
【……】
ああーそうですか知ってましたよ。
クソウ……これじゃいつ進化できるか分かったもんじゃないぞ……。
「どうだった?」
『思ったより上がらなかったな……』
「でも上がったんだな。それだけもよしとしよう。次の進化まで後なんレベル必要なのだ?」
『……99』
「なんだって?」
いやすいません……まだまだあるんです……。
で、でもこの魔物を何回か食べることができれば、進化もすぐの筈だ!
「……応錬。実はこの魔物はレアなんだ」
『ファッツ』
そういうことも考えてお前はこの依頼を受けたのか。
グヌヌヌヌ……まじで進化はしばらくお預けになりそうだぞ……。
ていうかそろそろ龍になれるんじゃね?
だって今龍の成り損ないだからさ、次くらい普通の奴になるっしょ!
なってくれマジで頼むから。
あーでもワルフルがもう居ないとなると、ここにいる意味はあんまりないなぁ……。
そろそろ夜になるし、一度帰らなければならない。
さすがに約束をほっぽるわけにはいかないからな。
「お腹すいたー」
「そうであるな。ま、気長にやっていこう」
『そうするかぁー……』
居ないのであれば仕方がない。
明日はアレナの受けたがっていた依頼を受けてみることにするかな。
俺の技能があればすぐに討伐はできるだろうし。
あ、でも素材の剥ぎ取り大変だな……。
まぁそれも練習か。
場所は確か洞窟だったから、鳳炎は技能を使わないようにしてもらわないといけない。
俺たち死んじゃうからね……。
『じゃ、とりあえず帰るか』
「何処に集まればいいのだ?」
『転生者同士の話だ。できれば人目のつかない場所がいいな』
「となれば……サレッタナ王国の外であるな。前に応錬と口裏合わせをした場所はどうだ?」
『いいぞ。あいつも場所は指定しなかったし、来なければ来なかったで俺が探す』
「任せた」
とりあえず方針は決まった。
アレナには申し訳ないが、ここは俺たちだけで行くことにしよう。
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