7.10.ばったり


 城から出て来た俺たちは、とりあえずギルドへと向かっていた。

 零漸が眠ってしまった今、俺と鳳炎、アレナしか活動できる者はいない。

 いきなりこんなに減ってしまうとは……誰が予想できただろうか。


 まぁ零漸が寝ている間に俺たちは一回くらい進化しておかないとな!

 フフフフ……あいつの驚く顔が目に浮かぶぜぃ。


 だが問題は……。


『どんな魔物なら経験値を獲得できるんだ!!』

「それであるなぁ」


 この辺にいる魔物はぜんっぜん駄目だった!

 卵とか食べても意味ねぇよな! うん知ってたよ!

 ていうか辞書が仕事全くしないんだよなぁ??


 今更期待しちゃいないけどさ、こうなるの初めてなの?

 あいつ時々辞書更新するからな。

 覚えてるからなマジで?


 兎にも角にも、金を稼ぎながら魔物を食べれる依頼が欲しいところだ。

 肉か素材をちょっとでも残しておけばお金は貰えるし、俺は経験値を手に入れることができるしで一石二鳥なのだが……。

 俺たちのランクで戦える魔物ってどんな奴なんだ?

 あのゴボックとかいう奴はBランクだったっけ。


 今あれ食べて経験値手に入るかと言われると……んんーーーー……。

 無理じゃね?

 てことはAランクくらいの魔物じゃないと厳しいのか……?

 何処にいるんだよそんな魔物よぉー……。


 この辺にいるのか?

 結構遠くに行かないといない気がする。

 ……本当に魔物の姿から人間に戻るのにどれくらいの時間が必要なんだ……?

 めちゃくちゃ不安になって来たんだが。


『ぐぬぬ……』

「……ナリコはレベル上がってないのか? 人であれば魔物を倒すことによって経験値を取得できる」

『ナリコやめろくそが。……ステータスでも見てみるか……』


===============

 名前:応錬(おうれん)

 種族:龍の成り損ない


 LⅤ :165/300

 HP :879/879

 MP :1751/1751

 攻撃力:881

 防御力:908

 魔法力:2277

 俊敏 :299

===============


 んー……あれから全然変わってねぇなぁ……。

 今やっと折り返し地点だな。

 あの時倒した魔物全部食べてれば何か変わったんだろうけど……まぁそんな状況じゃなかったんだけどね。


 てか魔法力ずば抜けてんなぁ……。

 MPも結構あるし、これであればMP切れはしなくなるだろう。

 だけどMPを大量消費する技能もあるし、油断はできないんだけどね。


「鳳炎は、なにか強い魔物と戦ったことないの?」

「……いやいや、もうあれ以上強い魔物とか、流石に見たことがない」

「あれって?」

「ん? いやほら……あれだよ……。前鬼の里……で…………あ……あれ?」


 何言ってんだこいつ。


『大丈夫か?』

「いや、すまんなんでもない。そうだな、強いて言うのであれば……鳥だな!」

「えっ?」

『……』


 鳥とだけ言われてもなんのこっちゃとしか言えないんですけど。

 聞いても参考になりそうにないし、早く冒険者ギルドに行って依頼書見たほうがいいな。


 暫くそんな会話をしながら歩いていると、周囲が少し騒がしくなる。

 なんだと思って見渡してみるが、人の通りが多くて良く分からない。

 だが鳳炎とアレナはそれをしっかりと見ることができたようだ。


「ん?」

「わー! 凄い! 何あの綺麗な魔物!」

『……どれ?』


 背が低いので人の足しか見えない。

 操り霞で確認してみればそのシルエットは分かるが色までは見えなかった。

 綺麗だというので是非見てみたいのではあるが……この状況では見れそうにない。


 しかしその魔物はこちらに向かって歩いてきているので、暫くすれば見ることができるだろう。

 魔物の移動に合わせて人が少しはけ、その姿を見ることができた。


 白と蒼白の色を交互に交えた虎。

 それを見てすぐに思いつくのは、白虎だった。

 蒼白い色の毛が若干光っているような気がするのだが、それが美しさを醸し出しているのかもしれない。

 大きさは普通の虎程で、隣には綺麗な服を着た子供と甲冑を付けている一人の兵士がいた。

 あの魔物を従えている人なのだろうか。


『……いやいやいやいや、おいそこの白虎!』

『……!? …………』


 俺が尻尾を地面に叩きつけて音を鳴らし、そう呼びかけると明らかに驚いた表情をして足を止め、こちらを向いた。

 だが少し考えた後、フイッと前を向いてまた歩き始める。

 無視を決め込むようだ。


『おいこらぁ!!』

『……ワタシニホンゴワカリマセン……』

『日本語って言ってる時点でアウトなんだよな!!』

『アアァッ!!』


 めっちゃ動揺してんじゃねぇか!


 鳳炎はこの会話を聞いている。

 だが見た瞬間から理解していたのか、あまり驚いてはいないようだった。

 アレナは常に首を傾げているが、今は放っておこう。

 こちらの会話が最重要項目だ。


 白虎で、日本語という単語が出てきたところを見るに……こいつが四人目の転生者だろう。

 だが待てよ……?

 もう確定事項なので言ってしまうが、俺たちの最終進化先は四霊、それか四神。

 四霊であれば麒麟 、鳳凰、霊亀、応竜になれる。

 四神は青竜、朱雀、白虎、玄武となるのだが……。

 この場合は四神が濃厚になるのだろうか?


 ……てなると……。

 え?

 零漸は玄武になるの?


 嫌だなああああああ!!

 霊亀の方がいいんですけどー!

 絶対尻尾の蛇に違う性格つくやつじゃああん!


『貴方……』


 急に白虎が俺の方を向いて立ち止まった。

 ようやく話を聞いてくれるようだ。


『……醜いわね』

『うーーーーるせえええなああああああ!!!!』

「はははははははは!! あーはっはっはっはっはっは!! アーハライタイ! あはははははは!!!!」

『ぶっ殺すぞてめぇ!!』

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