第七章 集結

7.1.上がらないレベル


 サレッタナ王国付近の森の降ろしてもらって、二人と一匹には帰ってもらう。

 ラックは何処か寂しそうにしていたが、恐らくはまたあの狭い所に行くのが嫌なだけだろう。

 俺が人間の姿で帰ったら、ローズに物申してやるからな。


 さて、俺です。

 お久しぶりですね応錬です。

 いや、別に久しぶりとかじゃないけど、なんかこの姿になるとそう言いたくなる。

 なんででしょうね。


 ていう事で早速魔物を探しに出発だ。

 目標はとりあえず生きている物。

 まずは食べることによって獲得できる経験値を把握しておかなければならない。

 とにかく一でもレベルが上がりさえすれば儲けものだ。


 もし経験値を獲得できませんでしたとか言われた場合、速攻で強敵の元に向かってその肉を食う。

 久しぶりの狩りだ。

 鈍っているかもしれないが、昔の俺より遥かにパワーアップしているので、その辺は安心して欲しい。


 という事で、まずは昔の様に操り霞を展開して魔物を捜索する。

 ……マテヨ?

 俺昔操り霞を駆使して魔物なんか探していたか?

 いつも行き当たりばったりで探していたような気がするんだが。


 ……まぁ成長の成果って事で、捜索を続行していこう。

 捜索しながら、のそのそと森の中に入っていく。

 魔物がいるかどうかも分からないから、急いでも仕方がないけどな。

 今回はのんびり昔の感覚を思い出すことに専念しよう。


 お……?

 早速魔物の反応が俺の操り霞に引っ掛かったわけだが……。

 これ、小さくない?

 動いてはいるけど、ネズミくらいの小さなサイズだ。

 これを食べても何の足しにもならなさそう……。


 せめて一匹丸ごと食べてレベルが1上がる程度の魔物がいいよね。

 鳥とかいいんじゃないかな?

 となるともう少し上空まで操り霞を広げることにするか。


 あ、そう言えば俺、ダンジョンの方に向かわないと行けないんだった。

 迷子になるのは嫌だし、ここは遠回りなんかせずに真っすぐダンジョンの方に向かうとするか。

 もし冒険者が居ても、俺の暗殺者には誰も気が付かないだろう。

 見つかったとしても、普通に驚かれる未来しか見えない。

 その隙に逃げれば問題ないか……。


 でもそれでサレッタナ王国に討伐依頼が張られたら目も当てれないことになるな。

 や、やっぱり、み、見つからない様にしよう……。


 突然、操り霞に少しばかり大きい魔物の反応があった。


 お!

 ようやっと食べごたえのありそうな奴が出て来てではありませんか!

 よっしゃ待ってお肉ー!!


 距離的にはそんなに遠くない。

 速度を出すと木とかにぶつかりかねないので、ある程度セーブして走っていく。

 だんだん慣れてきたところで、ようやくその魔物の姿を見ることが出来た。


 鶏。

 うん、あれは鶏。

 背丈は人間と同じくらいだろうか……?

 この世界でも鶏は見たが、トサカに毒々しい角は生えていなかったはずだ。


 どうやらあの鶏は巣を作っている様だ。

 その前に、久しぶりに天の声さんにあの魔物がどういった物かを聞かせていただきましょうか。


===============

―バクチョウ(亜種)―

 普通のバクチョウは大きさにして五十センチほどしかないが、亜種は人の背を上回る程にまで大きくなる。

 小さな巣を作ると、そこに卵を産み落として何処かに行く。

 人里の農作物などを荒らす為、増える前に駆除しなければならない。

 産んだ子供は小さくか弱いが、大きくなると狂暴性を増してしまう。

 頭の角の色は卵を産んだ数だけ毒々しい色になる。

===============


 ……おっとぉ??

 ちょーっと待ってくださいよ天の声さん。

 俺の目玉が今現在色彩をはっきりと認識しているのであれば、あの角はとんでもなくどす黒いんですけど、もしかしてとんでもない数の卵を何処かに生み落としているんですかね?


【……】


 うん、こういう聞き方して回答してくれないってのは知ってたよ辞書め。

 でもこれマズいよね?

 俺は知らず知らずのうちに変なことによく首を突っ込んでしまうな?


 こいつが何処かに行ってしまう前に、とりあえず本体は片付けてしまうか。

 よいしょ『多連水槍』。


 バクチョウの周囲に五本の槍を出現させる。

 巣を意気揚々と作っていたバクチョウはそれがなぜ突然出てきたのか分からなかったらしく、簡単に串刺しにすることが出来た。


 めっちゃ弱い。

 こいつそんなに経験値手に入らないかもしれないな……。


 とりあえず、頂きます。


 …………一口食べただけじゃダメですか。

 じゃあもう全部頂きますねー。


 よく噛んで食べるという事は出来ないので、そのまま肉を千切って丸呑みする。

 それを繰り返していけば、その肉はすぐに無くなってしまった。

 しかし、一向にレベルは上がらない。

 どうやらこいつだけでは不十分だったようだ。


 んー、マズいなぁ。

 レベルが1でも上がらないと対処ができない。

 今のでどれくらいの経験値量だったんだろう?

 天の声ー。

 なんかわかりませんかー?


【……】


 えーとですね、今の種族でレベルが上がる方法を教えてくれ。


【魔物を食べることで、経験値を取得できます】


 やっぱそうか。

 じゃあもう少し魔物食べに行くとするか。

 その前に……!


 こいつが産み落としていった卵片っ端から見つけて食べてやらないと、またサレッタナ王国に被害が出てしまう!

 ったく、これ以上あの国に面倒ごと持ってくんなって。

 今復興中だから魔物も大人しくしてろよ!

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