6.34.宴
あれから暫くして、宴が始まった。
太鼓などは瓦礫に埋もれて使い物にならなくなっているようだったので、まだ使える笛や辛うじて残っていた琵琶などで代用している。
そこまで楽器を持ち寄らなくてもいいと思うのだが、鬼曰く音が無い宴など、詰まらないという事らしい。
まぁ彼らがそう言うのであれば、俺から言う事は何もないです。
食料などはガロット王国の兵士が持ち寄ってきた物と、城に蓄えられてあった物を準備していた。
ガロット王国の兵士が持ってきた物を使っていいのかと思ったが、持ってきた物資はそれなりに多かったようで、どれだけ使っても問題ないという事だ。
バルトが言ってた。
もう少し詳しく説明すると、そもそも前鬼の里の為に持ってきた物資だったので、別にどう使おうと問題ないという事だ。
めっちゃ気前いいやん。
これアスレの指示かな? バルトかな?
そして、今は木を組んで起こした炎を囲みながら、酒を酌み交わしていた。
鬼の里では弱い酒から強い酒まで用意されている様で、人間でも飲める酒がいくらでもあるようだった。
何故酒だけはこんなふんだんにあるのか……。
酒樽だけこの里の惨状の中で生きてるの強すぎない?
でも皆楽しんでいるようで何よりだ。
鬼と人間たちは踊ったり酒の飲み比べをしており、各々が宴会を楽しんでいた。
そんな中、俺は一人むくれていた。
「いやー、こんなこともあるんだね~」
「ね~」
「まさか……戻れなくなるとは……」
「でも私はこのままの応錬様でもいいです! んー♪」
姫様?
嬉しいこと言ってくれている様で悪いんだけど、もう少し力加減覚えてお願い。
また骨逝っちゃうから。
「こうなると、僕もちょっと危ないかもしれないね」
『それはねぇよ。今の俺の種族が龍の成り損ないって奴で、この種族は生物として中途半端な存在らしい。種族がしっかりしてれば、俺みたいなことになることは無いだろうさ……』
「それを聞いてほっとしたよ」
俺としてはもう一人くらい道連れにしたいんだけど。
同じ苦しみを味わってくれないだろうか?
あー……俺このままサレッタナ王国に帰るの厳しいぞー?
とか言ってもラック返しに行かないといけないし、俺がここにいると鬼たちに気を使わせてしまう。
早々に出ることを俺が決めてたし、それを後からうだうだ言って進化するまでここにいるのはちょっとな……。
とりあえず、サレッタナ王国の近くで魔物食べるか。
久しぶりに……昔の生活に戻ることになるけど、まぁ大丈夫だろう。
昔より強くなったし、その辺の魔物だと相手にならないかもしれないな。
……そう言えば、人間の姿での経験値獲得って結構難しかったよね。
って経験値で思い出した!!
俺あの骨食べたのに全然経験値獲得できてねぇ!!
あれ肉じゃないから駄目なんですかね!?
……くぅ……。
やっぱり普通の肉食べないと駄目っぽいなぁ……。
でも俺、人間の姿でゴブリン倒した時経験値獲得できなかったから……少し心配。
この姿でも同じことが起こったら、俺は普通に何処か別の土地に旅に出なければならなくなりそうだ。
それこそ、高ランクダンジョンの中にいる魔物じゃないと、まともな経験値は獲得できないかもしれないからな。
最悪の場合のことも考えておいた方がよさそうだ……。
……今まで俺がいたところに帰ってみるか?
ぶっちゃけ何処か忘れてるけど、空飛んで見てみれば何とかわかるかな。
でもあの辺強い魔物いるのかな?
俺が産まれた頃にいた場所だし、そんなに強い敵はいないかも。
「応錬様はどれくらいここに滞在されるのですか?」
『悪いがすぐに行くぞ? 調べないといけないこともあるしな』
「だってさ」
「ええー! もう少しゆっくりして行ってくださいよー!」
姫様がそう言った後、周囲にいた全員が里の現状を見る。
とてもゆっくりして行けそうな雰囲気ではない。
姫様もそれに気が付いたのか、だんだんと声が小さくなっていく。
……頑張って復興してくれ。
俺も手伝いたいけど、今の姿だと邪魔になるだろうしな。
そっと里を後にすることにするぜ……。
「何にせよ、僕はお米が食べれたので満足です。ここに来た甲斐があったー」
「私もあのもちもち好きー」
「僕の頬をムニムニしながら言うのは止めてくれないかな」
相変わらず鳳炎はアレナに確保されている。
てか飯食って盛大に泣いてたから俺はびっくりしたよ。
食涙の鳳炎ってマジだったんだな。
ま、今日は普通に楽しむとしよう。
明日俺の事に関して皆と相談だ。
これからの動きに注意しておかなければならないからなぁ……。
早い事進化して、また普通に会話がしたいです。
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