6.32.俺たちと俺たち
多分今ヒナタが言った言葉は、日輪が言った言葉として見て間違いないだろう。
だがそこで、『俺たちと同じ奴ら』という言葉を使っている。
という事は……先代白蛇のほかにも、亀や鳳凰が居たはずだ。
俺たちが四霊であるのであれば、もう一人転生者がこの世界の何処かにいるはずだ。
まだ見つからないが、これはいずれ探していこう。
……という事は、悪魔は先代白蛇以外にも、先代の亀や鳳凰とも接点があった訳だ。
悪魔の寿命って何年か分からないけど、五百年以上は生きているってことになるな。
そもそも寿命とかあんのか?
「応錬……。君がここに来た理由がやっと分かったよ」
『気が付いたか』
「うん。話聞いてたら嫌でもね。悪魔の言っていた事がようやく分かった」
本当はここに来る道中に教えておくべきことだったのだが、流石に俺も先代白蛇のことは分からないことが多すぎた。
鬼たちに直接聞いた方がいいと思ったので、あえて教えていなかったのだ。
すまんな。
しかし悪魔の言った言葉の意味をずっと考えていた鳳炎は、この話を聞いて話が進んだと喜んでいるように思える。
まだ分からないことが多いが、この進捗は大きなものだ。
少しも分からないより、ちょっとだけ分かっただけでも十分だった。
「まだ先代白蛇や亀、鳳凰との接点、サレッタナ王国襲撃の理由、目的は分からないね」
『流石にここでそこまでは出ないさ。だが悪魔が昔、先代の俺たちと何かしらの接点があったという事が分かっただけ上等だ』
「確かにね。……あ、アレナちゃん大丈夫?」
「何が?」
「いや、体調……?」
見てみるが、アレナはピンピンしている。
どうやらここは瘴気ではなく呪いがかかっていた土地の様だ。
全員問題はなさそうだな。
それよりもアレナは子供鳳炎に飛びつきたくて仕方が無かったらしく、結局呼びかけられて我慢できなかった為、鳳炎はアレナに振り回されることになった。
逃げようとしたが、小さな鳳炎ではアレナを回避する事は出来ず、簡単に捕まってしまう。
「かーわいいー!!」
「だからやめるのだーーーー!!」
楽しんでいるところ悪いが、そろそろ出ないとな。
俺がラックに目を合わせると、言いたいことがすぐにわかったようでライキの隣に近づいた。
伏せて乗るように促してくれている。
それに気が付いたのか、全員が帰宅の準備をし始める。
残っている時間はあまりないという事を思い出したのだ。
一時間すれば閉じてしまう。
「テンダ! 早くライキ様を!」
「うむ! こ、こいつは何人乗せれるんだ……?」
とりあえず姫様とライキは乗ってもらわないとな。
俺もこの体だったら乗れるかな?
ちょっとでかいかもしれないけど、まず姫様が離れてくれないので乗るしかない。
アレナはウチカゲの肩に乗って貰う。
鳳炎……子供の姿だからちょっとテンダを持ち運ぶのは無理か。
しかし、テンダは走っていくという事だったので、鳳炎にはラックに乗ってもらう。
こいつは人を背に乗せて飛ぶの得意だからな。
何とか調整してくれるはずだ。
あと……ヒナタはどうしようか……。
「私は此処に残ります」
『……分かった』
準備が整ったところで、ラックが飛び上がる。
それと同時に、ウチカゲが走り出し、門へと向かう。
ヒナタはそれを静かに見送り、また鼓楼へと戻って行った。
道中、一人の鬼がこちらに向かって手を振っていた。
誰かは分からないが、ウチカゲが何か話していたので、悪い奴ではないのだろう。
俺たちはそのまま、現世へと戻って行った。
「応錬様! 応錬様~~!」
『めっちゃ元気になったなこいつ……』
「すごい懐かれてるじゃーん。えーと、姫さんだっけ? 手加減してあげてねー」
「はいっ!!」
もうすっかり泣き止んだ姫様は、とても嬉しそうに俺に抱きついている。
二度と放さないという意思を感じるのが少し怖いが、まぁしばらくは此処の復興もあるだろうし……俺たちが居ると邪魔になるだろう。
早々にサレッタナ王国に戻って、悪魔の事を本格的に調査しよう。
そろそろ出口だ。
光が強くなってくる。
目を瞑ってしまう程強力な光だ。
暫くしていると、周囲は目を開けれるくらいになった。
目を開けてみるより先に、大きな歓声と拍手が聞こえてくる。
『帰って来たか……』
目を開けてみれば、そこには鬼たちとサレッタナ王国の兵士面々がいた。
その声、喜んでいる表情を見て、ようやく力が抜けた。
あ。
俺、魔物の姿のままだ……。
でも鬼たちは勿論、サレッタナ王国の兵士たちの一部は俺のこと知ってるから……いっか!
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