6.30.名前取り
ライキは骨を手に持ちながら、自身が有する一番強い技能を使った。
名前取り。
その名の通り、相手の名前を取ってしまう技能である。
だが、それだけではない。
「……死鬼ガラク。レベル200、体力5040、魔力102、攻撃力7000、防御力2013、魔法力70、俊敏109……」
ステータスを全て見ることができるのだ。
その場合は肉体に触れていなければならないという条件はあるが、それだけで全て見れるのであれば簡単な事だ。
「……この技能は、死んでから発動する物か……。死鬼骸とは……恐ろしい」
ライキは何も持っていないもう片方の手で、空を撫でる。
すると、悪鬼ガラク、という名前が浮かんだ。
それは紫色と明るいピンクを混ぜたような不気味な色をしており、ゆらゆらと揺らめいていた。
持っていた骨をポイと捨て、浮かんでいる名前を手に取る。
そしてそれを、破り捨てた。
「この技能はの、名を取り破り捨てることで、その者の存在を消してしまう技能じゃ。記憶には残るが、肉体的には死んでしまう。名前が消えるので、他の者もこの者の名前を思い出すことはもう無い。名前も知らない者と戦ったことになってしまうが、死鬼はこうせねば死なぬ。奇妙な感覚がするやもしれぬが、堪えてくだされ」
ライキは悪鬼であるガラクを見た時から、彼が死鬼になる危険な存在だという事を見抜いていた。
だから吹き飛ばされた隙を見て隠れ、機が訪れるまで隠れていたのだ。
何故ライキがガラクが死鬼になる存在だという事が分かったのかというと、昔何度か死鬼をこうして殺したことがあったからである。
死鬼は不死身だ。
例え体がばらされようとも動き続け、燃やされても灰が敵に襲い掛かり、凍らせてもいつか割ってまた暴れだす。
そんな危険な存在と、ライキは何度か戦ったことがあった。
それこそ三百年以上前の話である。
この技能はとても強力な物だ。
故に代償がある。
名前取りという技能を使う度に、力が衰えてしまう。
鬼としての力が無くなってしまうのだ。
今回も、ライキのステータスが大きく下がる結果となった。
===============
名前:ライキ
種族:鬼
LⅤ :100/100
HP :190/190
MP :1342/1342
攻撃力:50
防御力:44
魔法力:761
俊敏 :102
===============
攻撃力が40、防御力が45減ってしまった。
これが名前取りの代償だ。
使うたびに攻撃力と防御力の数値が半分になって行ってしまう。
これをライキは、何度も行っていたのだ。
今回で何回目かは、既に覚えていない。
ステータスの減少は、体に負荷をもたらす。
ライキはぐらりと前のめりに倒れた。
「!」
すかさずウチカゲがライキを支え、ゆっくりと地面に座らせる。
それを心配して皆が集まり、ライキに声をかけて行く。
「大丈夫ですか!?」
「応錬水!」
『わ、わかった!』
水を作り出し、鳳炎の魔道具袋に入っていた湯飲みに注いでライキに飲ませる。
それで少しは落ち着いたようで、大きなため息を吐いてから目を開けた。
とりあえずは大丈夫そうだ。
「ほほほほ、年寄りが出張る物ではないのぉ」
「いえ、俺たちでは奴の息の根を止める事は出来ませんでした。感謝いたします」
ちらりと骨を見てみると、だんだんと灰になって行っている。
名前が消えたことにより、その骨の名前は分からなくなっていた。
不思議な感覚だったが、それが敵であったという事は全員が理解している。
これでよかったのだ。
少しばかり落ち着いたら、ライキはラックに乗せて帰らせる。
鳳炎がラックの居場所は把握しているようだったので、ウチカゲに伝えて連れてきてもらうように指示していた。
割と近くにいたようで、ライキが落ち着くまでには隣に来てくれていた。
「……お久しぶりですな、白蛇の応錬様と会うのは」
『
「そうなのですかな? 勇ましい姿ですわい」
そんなことは無いと思うけどなぁ……。
「そう言えば、応錬は人間の姿に戻らないの?」
『まだ何が出てくるか分からんからな。あまりMPを消費したくないから、前鬼の里に帰るまではこれでいいさ』
「あ、そう?」
ていうかMPスッカスカなんです。
俺いっつも無駄使いしてんなぁ。
「そう言えばアレナは?」
「先程戦っている時に、鼓楼の方で気配を感じました。姫様を救出しているのかと」
「じゃあ早く行かなきゃ!」
「それには及ばなさそうです」
ウチカゲがそういうと、指をさす。
その方向を見てみれば、アレナと泣きじゃくる姫様が歩いてきている最中だった。
しかし、その後ろにまだ誰かいる。
誰だろうと見てみると、そこには老齢の鬼がゆっくりと歩いてきていた。
「!! 応錬様ああああ!!」
『ぎゃああああ!! お前速いな!? いでででで!! 手加減! 手加減して!!』
「わああああああ!!」
『ぎゃああああ!!』
思いっきり握りつぶしてくる。
もうちょい、もうちょい手加減して頼む。
俺の防御力そんなに高くないからああああ!!
わかった!
分かったから痛いから待って姫様!
てか君は俺の姿みても引かないんだな!
ちょっと嬉しい。
メキッ。
あぐほぉ!?
か、回復水……。
「……に、日輪様……?」
「え?」
「ん?」
『ダレデスカ?』
そう言葉を発したのは、老齢の鬼だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます