6.29.剛牙顎


 MPを100使用して魔物の姿に戻る。

 これは少し時間がかかるのだ。

 それまでは攻撃されたくない。


 体が一度収縮し、今度は伸ばされる。

 進化の時よりは全然痛くないので、変身だけは唯一安心して行える。


 片目が角に潰され、そこから三又の角が生える。

 三メートルくらいの長さになり、口が大きく裂けた。

 翼が生えかけたが、片方がボロボロでもう片方は付け根から少し残してちょん切られている。

 痛々しい姿になった、龍の成り損ないが久しぶりに顕現した。


『お久しぶりでーす! いやー……目線が低くなったからあいつがでかく見える……。みんなデカく見えるよ……』


 本当に久しぶりの変身だ。

 この姿ではうろついたことが無いから、ちょっと動きにくいなぁ……。

 でもま、とりあえず戻りますか!


 体の形自体は蛇と変わらない。

 動き方としてはあまり変わらないというのはちょっとした利点だった。


 だが予想外なことが……。

 めっちゃ速い。

 自分の制御できる速度を軽く超えていらっしゃいますわ!

 あああああああ!


「!? 応錬様!?」

「何してんだよー!」


 二人を軽く追い越して壁に激突した。

 普通に痛いんですけど。


 え、何……?

 こいつそんなに早く動くことが出来たんですか……?

 俺知らねぇよ……。


「てか気もち悪!」

『おい! てめぇ今なんて言いやがった!! ぶっ殺すぞ!!』

「うわああああ声が聞こえる!!」

『え、マジ? いやだとしても何でそんなに嫌そうなんだ鳳炎!』

「びっくりしただけだよぅ!」


 本当か?

 本当の本当に本当か?

 もしそうじゃなかったらガシャ髑髏の次にお前食べてやるからな。


 ……あ!

 しまった久しぶり過ぎて忘れてたけど!

 俺剛牙顎使ったらこいつのこと食べなきゃいけないじゃん!!!!

 うわああああああああみすったあああああああ!!


「応錬様、宜しくお願い致します!」

『え、あ、うん。期待しないでね?』

「……」

『え、無視? あのーテンダ? テンダー?』

「……」


 あ、これもしかして俺たち転生者しか声聞こえてないやーつ?

 嘘じゃん、俺また意思疎通できないのかよ。

 はーまたこれ会話するだけで体力使う奴ですよー。


 まぁ今は鳳炎がいるからいいか。

 通訳してもらえば、何とでもなるでしょう。

 よーし! ガシャ髑髏いただきます!!


『あ、鳳炎! 足の肉全部燃やしといて!』

「え!? あ、わかった!!」


 流石に腐ってる肉は喰いたくないからなぁ……。

 骨は食べれるだろうから、そこだけ頂くことにいたします。

 でもまだ食べれると断言できるわけではない。

 まずはそれを確かめなければ。


 真っすぐな道であれば、この体の速度でも何とか制御できる。

 そのまま突っ込んで、今倒れているガシャ髑髏の骨に噛みつく!!


『『剛牙顎』!』


 カリッ。

 やっわらか!!

 ポッキーじゃんこんなの。

 おまけに今口めっちゃデカいから一杯頬張れるー!


 よし、とりあえず腰あたりまで登って胴体と下半身切り離してやるぜ。

 ……ちょっと待ってレベル上がらないんだけど……。

 まじ?

 ……いや、また前みたいに倒してから獲得できるかもしれないしな!

 このまま行くぜ!


 ガシャ髑髏の体を登るのは非常に簡単だった。

 相手も俺の存在にはまだ気が付いていないようで、そのままウチカゲを何とかしようと奮闘している。


 俺が骨を食べても何も気が付かなかったって事は、もしかしたらこいつ痛覚が既に無いのかもしれないな。

 骨に痛覚とかありますか、って言われたら否っていうしかないけどさ……。

 まぁ攻略方法が分かっただけで十分だろう!


 下半身のほとんどは既に鳳炎が燃やしてしまった。

 焦げた肉がボロボロと骨から剥がれ落ちている。

 有難い。


 腰まで到着した俺は、すぐに剛牙顎で腰骨を喰らう。

 一口で三分の一程は食べることができるので、二回食べた頃には骨が折れて上半身が切り離された。

 ガシャ髑髏の上半身は地面に倒れ、下半身は上半身を失ったがためにバランスが取れなくなったようで、そのままどっちも倒れてしまう。


 という訳で俺は上半身の骨から頂きます。

 うまうま。


「ええー……。いや、え、ええー……」

「斬新な戦い方ですね……」

「斬新ってレベルを超えてるよ! 奇天烈だよ!!」


 なんか聞こえるけど、とりあえず無視で。

 ていうか骨って味しないんですね。

 食感だけ楽しむ感じ?


 いっつも思うけど、食べた分何処に行ってるんだろう。

 いつまでも食べれるんだよなぁ。

 でもこれ一人で食べるのは流石に無理かぁ。

 食べきれるだろうけど、時間がかかり過ぎる。


 とりあえず動けない様にするために、肩の骨とか食べとくかー。

 そうしておけばもう動かなくなるっしょ!


 俺はそのまま関節部分を全部食べていく。

 ウチカゲやテンダには暴れるガシャ髑髏を抑えてもらったりしていた。

 時間はかかったが、これで全部の関節を食べたことになる。

 ご馳走様でしたー。


「凄まじいですね……」

「応錬様がガシャ髑髏の半身を切り離してからは、殆ど攻撃してこなくなりました。やりやすくて助かりましたよ」

どいたまーどういたしまして

「でもまだちょっと動いてるよ……」


 確かにまだウゴウゴしている。

 どれだけ生命力あるんだこいつ……。


 でもあれだな。

 テンダとウチカゲが来なかったら、俺たちあの場所でつぶされてた。

 マジで助かったぜ。

 今そう言っても伝わんないから黙っておくけどねー!


 カランカラン……。


「ふ~。ようやっと終わったかの?」

「ライキ様!? ご無事でしたか!」

『おい待て今どっから出てきた』


 地面の中から出て来たよな今……。

 ずっと地面の中に居たのかよ……。

 まぁライキが表に出てても邪魔だったからいいけど……。


 てか結局技能何も使わなかったね。

 多分一番何もしてないのライキさん、貴方じゃないですかね。


 すると、ライキはおもむろに骨を手に取ってまじまじと見た。


「『名前取り』」


 え、あ、ここで?

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