6.27.死鬼
ガラクは自害した。
だが、最後に不気味な技能を口にしたのは分かっていた。
これから何かが起きる。
そう直感させる何かが、ガラクの死体から溢れ出そうとしていた。
その時、翼を羽ばたく音が上空から聞こえた。
上を見てみれば、鳳炎が子供の姿になって不安定な格好で飛んでおり、俺の方に落ちて来ている。
「ぬおおおおおお!?」
「わああああああ!!」
何とか回避すると、子供鳳炎が地面に突き刺さる。
翼のお陰で地面にぶつかる直前に減速できたようで、まだ生きている様だ。
地面から顔を引っこ抜いたと同時に、俺に文句を浴びせかける。
「ちょっと! 受け止めてよ!!」
「いやだよ……。お前の翼燃えるじゃん……」
「あっ」
そういやそうだったみたいな顔しても遅いからな。
それにどんなことがあっても死なないんだから、それくらい大丈夫だろう。
いや、今はそんなことどうでもいい。
「鳳炎、構えろ」
「えっ? ってわあ! 悪鬼やっつけたの!? すごいじゃん!」
「違う。まだ何かしてくるぞ」
「へ?」
鳳炎から見れば、明らかに死んでいる相手にどうしてそこまで警戒しなければならないのだろうという気持ちなのだろうが、俺は聞いていたのだ。
生首の状態で技能を呟いたガラクを。
そこで、ガラクの死体に異変があった。
骨が隆起して皮膚を突き破り、まるで脱皮をするかの様に質量を無視した骨が出てき始めていた。
バキバキという音を鳴らしているが、これは骨が折れている音ではない。
関節が鳴っている音だ。
完全に出てきたその骨は、ガシャ髑髏を思わせる外見をしていたのだが、頭は無い。
それに胸の骨にも大きな穴が開いている。
それだけでも不気味なのではあるが、腰から下は肉が付いており、悪臭が漂ってくる。
大きさは現世にある天守閣を優に超える。
三十メートルくらいはあるだろうか?
頭が無くてそこくらいなので、頭があればもう少し高く見えるだろう。
「ぎゃああああああ! が、がガシャ髑髏じゃんかああああ!!」
「鳳炎、お前そういう知識あったのか……」
「くっさ!! てか下半身肉あるし!」
「ちょっと会話してくれない?」
子供だからか、少し混乱している様にも見える。
こんな子供のお守りは御免こうむりたいので、放置しよう。
もし死んでも復活するしな。
ていうかこれ……どうやって攻撃したらいいんだよ……。
とりあえず残っている空気圧縮で作った空気を破裂させてみよう。
それでこいつの強度が分かるはずだ。
思い立ったら即行動。
すぐに圧縮した空気を操ってガシャ髑髏の骨に接触させる。
それと同時に全ての空気を破裂させ、ガシャ髑髏にダメージを与えていく。
やはり威力は相当な物で、大きな体を持つガシャ髑髏でも体を振り回されている様だ。
このままうまくいけばいいと思ったのだが……流石にそうもいかないらしい。
「────」
「ちょっと欠けた程度かよ……」
「んじゃこれはどうだっ! 『フレイムボム』!」
鳳炎が大きめの火球を作り出し、それをガシャ髑髏に向けて放っていく。
接触したと同時に大爆発と熱風が発生するのだが、依然としてガシャ髑髏はそれを意に介さない。
そして、鳳炎の絶炎が効果を成さなかった。
「なんでぇ!?」
「燃えないのかよ……。おい、絶炎はどうした……」
「わかんないよ! こんなの初めて!」
燃えないし、あの骨は随分と固そうだ……。
俺の波拳で吹き飛ばすことが出来ればいいが……あれに近づくだけでも結構大変そう。
まずは肉のある足を狙ってみるか。
あそこであれば鳳炎の炎も通用するかもしれない。
俺は魔道具袋に仕舞っていた白龍前を取り出してから、鳳炎に指示をする。
「鳳炎! 足を狙え!」
「了解! 『フレイムボム』!」
「『天割』!」
二人で足を狙う。
肉が付いているので多少ダメージが通ると思ったのだ。
鳳炎のフレイムボムは接触した瞬間に爆発し、肉を焦がした匂いが周囲に漂う。
その後に俺の天割が直撃する。
バキン!!
何かが折れる様な音が聞こえた。
足を斬ることが出来たのかと思い、ガシャ髑髏を見てみるが、体勢を崩すそぶりは一切見られない。
折れたのは、俺の天割の様だったようだ。
「嘘だろ!?」
「肉は燃えるけど……骨は燃えないみたい!」
ぐぐぐぐぐぐ……。
ガシャ髑髏が今動き出した。
頭はないのだが、俺たちの方をしっかりと見据えている様だ。
骨の腕を振り上げて、地面を殴ろうとしてくる。
「わああああ! 応錬逃げるよ!」
「駄目だ! 防いでくれ!」
「なんでぇ!?」
「あれが地面に当たったらこの辺全部吹き飛ぶかもしれん! 腐っても悪鬼から出てきた奴だ!」
「止めれるの!? 僕の技能じゃ無理だよおお!」
「やるんだよ!!」
攻めて威力を落とすだけでいい。
理性も何もないような奴だ。
先程のガラクとは違い、見境なしに攻撃するに違いない。
そうなれば、姫様がいると思われる櫓も壊れてしまう。
それだけは何とか避けたかった。
「『土地精霊』! 『水流結界』!」
「うわああああ! 『炎操』!!」
土を持ち上げて軌道をまず逸らす。
そして水流結界の水圧でその動きを止める。
鳳炎は炎を操って威力を抑えようとしているらしい。
だが、想像以上にガシャ髑髏の攻撃は重いようで、土がどんどん潰されて水流結界は弾かれてしまう。
炎もほとんど意味をなしていないが、この三つの技能を組み合わせてようやく威力が落ちている様にも見える。
しかし、このままでは潰されるだろう。
「土地精霊もうちょい粘れや!」
「わああああああ!!」
そこで、ガシャ髑髏が力を緩めた。
何故そうしたのが分からず、俺はガシャ髑髏の方を見てみると……。
ガシャ髑髏がのけぞっていた。
それにより腕の力が抜けたようで、今は体勢を立て直そうと一生懸命になっている様だ。
「応錬様ー!」
「! ウチカゲか! 助かったー!」
「おおおお! ありがとーー!!」
そこで、俺の隣にテンダがすっと現れた。
こんなに早く動けたっけと思ったが、それは後で聞くことにしよう。
テンダはガシャ髑髏を見て驚いているようだ。
「こ、こいつは何でしょうか!?」
「ガラクの死体から出て来やがったもんだ」
「えっと、何故鳳炎殿は子供なのでしょう……」
「死んだ☆」
「え?」
凄い勢いで語弊を生むからその言い方は止めような。
ウチカゲもストっと降りて来た。
二人ともボロボロになっているが、大きな怪我などはしていない様だ。
すぐに大治癒を二人に施して、万全の状態にしてあげる。
「有難う御座います」
「かたじけない」
「いいさ。で、こいつ何とかなるか……?」
「俺の攻撃でも少し削る程度しか……」
「ウチカゲでもか……」
これはちょっと厳しいかもしれないが、まぁ、やるしかないんだよな。
このまま他の建物壊されると敵わんからな!
ガシャ髑髏はのそーっと体勢を立て直し、俺たちの方を見据えたような気がする。
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