6.14.作戦


 常世の地図は随分と大雑把な為、詳しい地形は分からない。

 簡単な絵に、何がどこにあり、ここはこういう場所、という事が記載されている程度だ。

 だが、読み取れないことはない。


 基本的に常世は常に夜の様で、日の光は一切無いらしい。

 道は険しく、足場は悪い。

 その様な事が書かれているが、建物がある場所は整地されているらしく、道がしっかりとあるようだ。


 建物は三つ。

 どれも和風建築の様ではあるが、どれもボロボロのようだ。

 これは見てみないと分からないな。


 だが、建物の方はそれなりにしっかり書かれている。

 中まで入ったわけではない様だが、外から見える範囲でできる限り予想して書いているようだ。


 ランにはそういう知識があるのだろう。

 そんな感じには見えないけどね……。


「シムが姫様の居場所は知っております。だが、常世の入り口はいつも同じ場所にしか開けませぬ。その場所は……ここ」


 ライキが指差した場所は、建物から少し離れた場所。

 その場所から建物のある場所に行くまでは、徒歩で十分。


 移動だけでそんなに時間がかかってしまうのか……。

 走っても六分……くらいはかかるだろうな。


「あっ、移動はラック使うか」

「えっ……。応錬、それ大丈夫?」

「連れてってもらった後にすぐ帰ってもらえばいいさ。とりあえず借りてる奴だしな……」


 この際使える物は使わないとな。

 ラックを使えば移動はほぼ一瞬だ。

 目星をつけた所に下ろしてもらえれば、姫様を探す時間も短縮できる。

 もしかしたらそのまま連れて帰れるかもしれないしな。


 ラックには後でこの事を言っておこう。

 多分引き受けてくれるだろう。


「移動に関しては大丈夫そうだね。えっと、シムさん曰く……姫さんがいる所はここだってさ」


 バルトが指差したところは三つの内の一つの建物。

 常世の門が開くところから言うと、一番遠い場所だ。


 敵さんも隠したいってのが前面に出てる配置だな……。

 だがこうなると絶対に接敵してしまうだろう。

 戦わなければ助け出す事は出来なさそうだ。


 覚悟を決めておこう……。

 大丈夫、大丈夫だ。


「ここにいる鬼たちは殆ど戦闘には参加できないみたい。シムさんも常世の門を開くときは動けないんだって」

「てなると……。此処にいる奴らだけで行った方が良いか」

「実質、前鬼城最高戦力であるからの」


 話の流れ的に、常世に行くのは俺、鳳炎、アレナ、ウチカゲ、テンダ。

 この五人になるだろう。

 鳳炎は今いないけど、連れて行くからな。

 流石にライキは連れて行けないだろうし、バルトも無理だろう。


「ワシも行きましょうかの」


 その言葉に、全員が驚いた。

 明らかに戦闘できるタイプでないライキが声を上げたのだ。

 驚いてしまうのも無理はない。


「え? いや、無理はしない方が……」

「そ、そうだよお爺ちゃん……」

「心配なさるな。ワシの技能は強いですからな」


 ほら、アレナがめっちゃ心配してんぞ?

 おれもめっちゃ心配なんだけど……。

 大丈夫なのかライキ。


 そう言えばライキの技能知らないな。

 どんなのなんだろうか?


「ワシの技能ですかな?」

「ああ。強いって言っても、どの程度なのか……」

「では、お教えいたしましょうかの」


 そう言って、ライキは自分の技能を一つずつ教えてくれた。


===============

 名前:ライキ

 種族:鬼


 LⅤ :100/100

 HP :190/190

 MP :1342/1342

 攻撃力:90

 防御力:89

 魔法力:761

 俊敏 :102


 ―技能―

 攻撃:『雷音』

 魔法:

 防御:『土城』

 回復:『回復』

 罠術:『攻城』

 特異:『名前取り』『指揮伝達』『指揮受信』

 自動:『軍師』

===============


 なっ……なんっだこれ。

 鬼なのに攻撃力90でMPが四桁……?

 どうなってんだライキの能力値。


 てか体力と防御力ひっく!

 俊敏も低すぎな!?

 どれを取ってみても鬼とは思えない技能なのだが……。


 一番気になるのが特異技能の『名前取り』という技能だ。

 普通に考えてみれば、名前を取ってしまうという技能だと考えてしまうのだが……。

 どうなのだろうか?


「それがワシの一番強力な技能ですな」

「ほ、ほぉ……」

「悪鬼でも通じるかは分かりませぬが、やって見せましょう」


 あ、詳しい事は教えてくれないのね……。

 まぁ一番強い手の内だもんな。


 だがこれだけの自信があるのであれば、頼りにもなる。

 少し助けてあげなければならないかもしれないが、それくらいなら問題ない。

 危なくなればラックに連れてってもらえばいいしな。


「常世に行くのは僕以外と、あと……」

「鳳炎ってのがいる。外にいるかな。あと俺が乗って来た飛竜のラック」

「飛竜かぁ。中々すごいの連れて来たね……。まぁいいけど」


 運が良かっただけなんだけどね。


「じゃ……飛竜には何人乗れるの?」

「二人か三人だな。俺とライキが乗って……アレナはどうする?」

「ウチカゲと一緒に行く」

「ああ、それでも問題ないか」


 アレナとウチカゲは一緒に行動していても全く問題なかったからな。

 じゃあ飛竜に乗るのは俺とライキ。

 鳳炎にはテンダを連れて行ってもらうことにしよう。


 ていうか今回の戦いで鳳炎めっちゃ優秀なのでは?

 当たれば勝ちだしな。

 もしかしたら俺たちの出番はないかも。


「じゃあ常世の門が開いたら直行でここにいくこと。接敵しても戦いは極力避けてね。制限時間は一時間。それまでに姫さんを助け出してきてね」

「このチームの中で一番速いのはウチカゲとアレナか」

「そうじゃの……。姫様のいる場所は分かっているが、その建物の何処に居るかはわからぬ。ウチカゲ、索敵を任せるぞ」

「承知」


 後は臨機応変に……だな。

 やることは単純だが、敵の動きが全然分からない。

 相手の出方を伺って進まなければならないだろう。


 やることは決まった。

 後は実行するだけだ。


「シムは?」

「呼んできましょう」


 ウチカゲがスッと消え、シムを探しに行った。

 シムが来たら、作戦開始だ。

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