6.9.パリン
「おおー……。素直になったなぁ」
「「
今日は個人的に飛竜に興味があったので、冒険者の仕事をお休みしてローズの所有している騎竜たちの住んでいる場所に来ていた。
飛竜がひっくり返ってから一日。
ラックは随分と大人しくなって、ジグルを背中に乗せて低空で飛行していた。
俺たちはあの日、各々の好きなことをしに行く為に解散という流れになったのだが、ローズはラックを滅茶苦茶に怒ったらしい。
そのせいか、今日は俺よりもローズの方を警戒しているような気がする。
ユリー曰く、あそこまで怒ったローズは見たことがないとの事。
確かにローズは温厚な性格をしていると思うので、怒鳴るという事はしなさそうだ。
まぁそう言った雰囲気の人が怒るときは、総じて怖い。
これは全世界共通だろう。
「そういえば、ローズは何でこんな場所を持ってんだ?」
「飛竜や騎竜を飼いならしたかったからです。実は私、冒険者よりもこういうブリーダーの方が好きでして」
「へ、へー……」
ブリーダーの域を超えていないか……?
まぁ人の好きなことにケチ付ける気は無いが……予想の斜め上の回答に少し困惑。
似合わないもん……。
因みにだが、性格の良い騎竜二匹は俺のことを背中に乗せたいらしく、こぞって奪い合いが何度か発生した。
別に乗る分には悪くないのだが、乗り心地が最悪なのだ。
できれば鞍か何かを用意して欲しい。
だが、こいつらに乗って旅をするとなると、随分慣れが必要になりそうだ。
乗れても二人だし、乗り心地は最悪。
旅先よりも道中で殺されかねない。
乗るなら飛竜の方が絶対に良いと思う。
とは言え飛竜は個体数がそもそも少ない。
繁殖させようにもまず番が居ないし、卵を取りに行こうとすれば殺されてしまいかねないらしい。
だが産まれた直後に動いている者を親だと思う為、産まれてからでは育てることが出来ないという。
育てるのは簡単だが、卵から孵化させるまでが飛竜や騎竜はとても難しい様だ。
「なので、私は東方の山を駆け巡って──」
「よくもまぁ聞いてもないのにそこまでぺらぺらと言葉が出てくるもんだな」
「……飛竜の親の目をかいくぐって」
「いや続けんのかい!!」
うん、まぁ……。
ローズが飛竜と騎竜の事が大好きだっていうのは伝わったよ。
「兄ちゃーん! おーい!」
「楽しそうだな」
あそこまでラックに悪戯されておいても笑顔でこっちに手を振っている。
それを見てラック自身、少し罪悪感を覚えているようではあるが……。
まぁいいか。
にしても綺麗に飛ぶもんだ。
低空飛行だというのに翼をあまり動かしていない。
僅かな空気を翼で受けて、最低限の羽ばたきで低空飛行を維持している。
中々できる事ではないだろう。
「んー、これなら大丈夫そうね」
「ユリー帰ってたのか」
「さっきね。こいつらの食費結構かかっちゃうのよね。今はムカデのお肉が安いからいいけど。」
ユリーは飛竜たちの食事を買う為に買い出しに行っていた。
今回も山の様に持ってきたようだが、何処にそんな力があるのか……。
自分よりも背の高い荷物を持つユリーは、鬼に近いイメージがする。
何かの技能なのだろうけど。
「そう言えば、あんたはこんな所にいて良いの?」
「こんな所……?」
「いやっ、ちょっ! 違うってローズ、そういう意味じゃないから……」
こんな所っていうのを聞いて怖い目をして反応するローズ。
気持ちは分かるが、露骨に反応しないでね?
怖いから。
えっと、とりあえず話を戻して……。
バリンッ!
「……は?」
ウチカゲに渡した水の玉が……割れた?
どうして……?
一度ならず二度までも壊してしまうとは考えにくい。
それに今回はウチカゲに手渡した。
ついでに言えば相当な力が加わらない限り壊れることの無いように作ったつもりだ。
……ウチカゲがここを出て二日……。
あいつが期日通り前鬼の里についているのであれば、あれが壊されたのは前鬼の里という事になる。
これはもう故意的に壊したというのが妥当だろう。
壊れてしまった、という線は絶対にないはずだ。
何かあった。
そう考えるのが妥当!!
「すまん! 用事が出来た!」
「えっ? そんなことある?」
「ローズ! 後で飛竜借りるかもしれん! 準備宜しく!」
「……ええ!? ま、まぁいいですけど……」
そう言い残して、俺はすぐに走っていく。
俺一人じゃ対処しきれない問題かもしれない。
せめて仲間を連れて行かなければ。
鳳炎、アレナ。
零漸は…………。
昨日の今日でまた呼ばれても迷惑か。
あの飛竜三人は乗せれなさそうだし、今回は置いていこう。
ぶっちゃけ王子になんか言われるのが面倒くさいし、あの場所にできるだけ戻りたくない。
暫く空けることになりそうだしな。
楽しんでいる所を邪魔したくはない。
はぶってしまうが、まぁ……いいか!
それにぶっちゃけ城に行く時間が勿体ない!
急げ!
急がないと……これはマズい奴だ!
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