6.4.バレている
あの飛竜に乗るのがどれくらい大変なのかは分からないが、それはジグルが練習しているのを見ていればわかる事だ。
騎竜たちが食事を終えたところで、ジグルが練習に入る。
「なぁ。なんでジグルを飛竜に乗せようとしてるんだ?」
「一番の理由は移動よ。教会の魔法陣で移動できる距離ってたかが知れてる。そんなところでレベル上げや依頼を受けても同じような物しか受けれないでしょ」
「じゃあなんだ? 魔法陣ではいけない場所に行く依頼の為に、乗れるようになってもらおうって事か?」
「まぁそんな所ね。馬車だと時間かかり過ぎるしね」
まぁ確かに、この移動方法であれば確かにいろんなところに素早く行けるな。
明らかに馬より速そうだし。
そう言えば、採取依頼とか魔法陣ではいけないような場所ばっかだった。
まだ依頼を多く受けているわけじゃないから、そういうことは分からないのだが、Sランク冒険者であるユリーがそう言うのであれば、そうなのだろう。
これは俺も覚えておいた方が良い情報かもしれないな。
依頼受けるときは場所とかも把握しておいた方が良いね。
ジグルはローズに指示されて飛竜に乗り込む。
乗るだけであれば特に嫌がったりはしないらしい。
何が問題なのだろうか。
そうしてみていると、飛竜は歩きだした。
ラックは背中を気にしつつゆっくりと歩いているのだが……。
途中で上体を起こしてジグルを背中から落としてしまう。
「うわわ!」
ジグルは何とか体勢を立て直して地面に着地するのだが、その後大きなため息をつく。
どうやら何度も同じことをされている様だ。
「何が駄目なんだ?」
「多分なめられてるのよね。まずラックって男の子だから」
「……え、それ関係ある?」
「……」
なんか言えよ。
でもそういう事もあるのか?
まぁあるにはあるんだろうけど……。
ジグルは何度か乗り込むが、結局落とされてしまう。
なめられているとユリーは言っているが、ではどうすればなめられない様になるのだろうか?
何をしなければならないのかが分からん。
ツンツンッ。
「んぁ?」
後ろから何かにつつかれた。
見てみると、翼の生えていない騎竜が俺を口で突っついている。
先程まで怖がっていたようなのだが、今は普通に接してくれていた。
だが、一匹はまだ怖がっている様だ。
何なのだろうか?
とりあえず顎とか触ってみる。
「……え?」
「結構すべすべしてるんだなー」
「……なんで普通に撫でれてんの?」
「ん? え、何かマズかったか?」
「いや……別に……」
こいつがどういう名前の騎竜かは分からないけど、普通に触れて結構満足。
この手触り何処かで覚えがあるんだけど、なんだっけか……。
怖がっていたもう一匹の騎竜も、恐る恐る近づいてきた。
まだ様子を伺っているようだが、近くに座ってくれる。
こうしてみれば結構可愛いのだが、近くに来ると迫力があった。
それを見て少し引いてしまうが、騎竜はズイッと顔を押し寄せてくる。
ちょ、やめい。
押すな押すな押すなっ!!
「ぬおあ!」
「何でそんなに懐かれてんのよ……。普通そんなのあり得ないわ」
「んなこと良いから助けろ! っどわああ!?」
一匹の騎竜が俺を咥えて空中に放り投げる。
少し高めに吹き飛ばされた後、重力に従って落ちていくのだが、地面に足は付かなかった。
ガズッ!
という音と同時に、俺は騎竜の背に乗せられた。
股がバチクソいてぇんだが。
俺が無性じゃなかったらしばらく動けてねぇぞ。
「お前…………何すんだ……ぐっ……」
「はははは! 遊ばれてるわね!」
ええい、何とでも言いやがれ。
てかどうして急にこいつらはこんなことし始めたんだ。
「一体何なんだよお前……」
「
「はぁ? ……は!?」
待って!?
こいつの言ってることわかるんだけど!!
え、なんでなんでなんで!?
いや、でも聞き間違いかもしれない。
ちょっと確認をしてみよう……。
「な、なぁユリー。こいつの名前ってリックか?」
「ジグル君から聞いてたの? あってるわよ」
「……」
まぁじで??
こいつまじで喋った……いや、喋ったんじゃなくて、何故か鳴き声が言葉を持っていると言う感じか。
俺も今のだけ聞くとなんとなくしかわからない。
これは……文字を見て何故か読めるという感覚にとても似ているな。
と、とりあえずもう少しこいつと会話してみるか……。
「リックって言うんだな。で……下ろしてくれるか……?」
「
「はぁ? ってぐあぁ!? っどああああああ!!?」
リックはもう一匹の騎竜と一緒に走り出す。
いきなりという事もあって、俺は首を一瞬で痛めた。
この騎竜という奴は自分が想像していたよりも速い。
一歩進んで三メートルくらい進んでいる気がする。
それに加えて滅茶苦茶乗り心地が悪い。
上下に揺れたり左右に揺れたりと忙しないのだ。
痛めた首がっ!!
やめろリックもう少しゆっくりっていうか!
「止まれこの野郎! てか説明しろよなんだよ何とかするってよー! いでででで!」
止まらねぇんだけど!
って思った瞬間に止まった。
びっくりするぐらい急に止まったので、俺は宙に放り投げられる。
何が何だか分からなさ過ぎて混乱し、着地失敗。
だが地面じゃなくて違う物にぶつかったようだ。
「グルァ!?」
「ゴッフ!」
「わあああ!?」
ラックに直撃し、乗っていたジグルも落ちて俺も背中を強打して地面に転がる。
ジグルだけは綺麗に着地したようだ。
めっちゃいてぇ……。
一体何だってんだよ……。
「ガルゥ……」
「うっわ」
目を開けてみれば、ラックの顔が目の前にあった。
どうやら睨んでいる様なのだが、何故か全然怖くない。
とりあえず顔が近いので、手で押しのける。
「邪魔だ」
「ガフッ! ……!!?」
俺がラックの鼻辺りに手を当てた瞬間、何かを感じ取ったかのように後方に勢い良く下がった。
体を震わせて怯えている。
突然のことに他の三人も理解できないという表情をしてラックを見ていた。
ラックは今も俺を睨みつけてはいるが、一定の距離から近づこうとはしない。
ローズは慌ててラックの所に近づくが、飼い主であるローズが近くに来ても震えは止まらなかった。
「
「……
「……俺が?」
二匹の騎竜は小さく頷いた。
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