第六章 悪鬼が歩む
6.1.復興作業
サレッタナ王国はまるで祭りでもしてるんじゃないかってくらいに復興作業が進んでいた。
一日しか経ってないのに凄い進行速度だ。
そもそもムカデで壊された建物は国の規模に対しては少ない方。
時間のかかるのはムカデの処理だけだ。
なんせどこ行ってもムカデの肉料理しか出てこない。
でもあれ結構おいしんだよなー。
ムカデの肉ですよって聞いた時はマジでびっくりしたけど、割とおいしかったから別に気にしなくなった。
でもあの肉は鮮度が命らしい。
後一日経つと匂いが出始めて食べることが出来なくなってしまう様だ。
急いで消化しないと駄目らしいんだよ。
全部捨てることになってしまうみたいだし。
とは言え賄いでめっちゃ出てくるんだよなぁ……。
流石に飽きるわ……。
因みに俺たちは、ギルドでしっかりと依頼を受けており、現在は復興の為に物資を大量に運んでいる。
木材、石材……後はムカデの片付けetc……。
この運搬作業では俺とアレナの技能がとても役に立った。
アレナはグラビティドームを展開して物資を軽くし、どんどん必要な場所に運搬していく。
とは言えその技能の規模は小さいものなので、持ってきた物資を馬車に詰め込む作業をしている程度だ。
とは言え、それだけで作業効率がとても早くなった。
俺もそれに似たようなもので、石材を無限水操で持ち上げていろんなところに運んでいく。
木材を水で持つわけにはいかないので、俺は石材専門で運んでいる。
なんせこれの量が多い事多い事。
まぁレンガ作りの建物が多いからなぁ……。
仕方のない事だ。
だけどMPも全然余裕だし、これは遠距離まで運ぶことができる。
よーしどんどん持ってこーい。
「…………なんで私は肉を焼いているんだ……」
「こいつら捌くの結構きついんですよ。炎魔法が使える人には調理を頼んでいるんです」
「それは分かっているのだが……」
鳳炎は肉を焼いている。
主にムカデの肉。
小さく切らないと家の中にある厨房には運び込めないので、こうして外で肉を焼いているのだ。
炙るように焼いているので、肉に火がついてしまうという事は無い。
今にもついてしまいそうではあるが、そこは炎技能が多い鳳炎。
丁寧に調整している様だ。
鳳炎はこの仕事に少し不満を覚えているらしいのだが、これも必要な事。
嫌な事でもしっかり仕事をする姿勢は嫌いではないぞ。
「疲れたー!」
「おお、アレナお疲れさん。魔力切れか?」
「うん。もう技能使えない」
「じゃあ休憩だな」
あの戦いでアレナも少しはレベルが上がっているはずなのだが、MPの総量はそんなに変わっていないらしい。
実際に止めを刺していったわけではないらしいからな。
どちらかといえば足止めを主にしていたらしい。
アレナの技能であればそれが普通になるかな。
サポート系の技能だもん。
めっちゃ強いけどな……。
俺も少し休憩しよう。
MP的にはまだまだ余裕はあるけど、体力的には結構消耗して来てるからな。
喉乾いた。
「あー! アレナちゃんだー!」
「本当だー!」
「ん?」
子供らしい声が聞こえてきた。
パッと見てみると、イルーザ魔道具店で働いている子供たち三人がパタパタとこっちに走ってきているのが見えた。
「おおー、無事だったんだな三人共」
「わー! 久しぶりー!」
この三人がアレナの事を覚えていたのは正直意外だった。
ちょっとしか一緒にいなかったからな。
子供の記憶力が凄いのか、それとも同じ境遇にあったからこそ、覚えていたのか……。
まぁなんにせよ、アレナと同じくらいの年の子の友達はこの位しかいない。
故郷ではもっといるだろうけどね。
「折角だ。遊んで来たらどうだ?」
「行ってきます! 行こー!」
「やったー! ジン! 荷物宜しく!」
「ええぇ……」
確かジンってミナとムーより年下だったよな……。
既に上下関係が決まってしまっているぞ。
女の子って子供でも強いんだね。
さーて、結局俺一人になってしまった……。
ってそう言えば。
あの子たちが来ているという事はイルーザが何処かにいるはずだと思うんだけど……。
何処に居るあの引きこもり。
子供たちのお陰で引きこもり脱出してたみたいだけど。
目立つから居ると思ったんだけどなー。
どうやら周辺にはいないらしい。
子供たちも買い出しをしに来たというより、何処かに遊びに行っておいでみたいな軽い格好だったから、自由にさせているのかもしれないな。
てか復興作業って結構大変なんだなー。
何より片付けが大変。
俺知らなかったよ……。
基本的には瓦礫とムカデの撤去。
これが時間かかる。
壊れている場所と壊れていない場所を確認しておかないといけないし、ムカデも家に突っ込んで死んでいる場合もあった。
てかデカすぎるんだよムカデ。
十人がかりくらいじゃないと動かせないわ。
まぁ復興が進んだって言っても、ようやく再建に取り掛かっている場所が増えてきた程度なんだけどね。
一日でそこまで進むのはめっちゃすごいと思う。
素人目からしてだけど。
因みに、外の魔物の死体は完全に地面の中に埋まってしまって見つからなかったそうです。
残ってるのは地面に染み付いた血液だけ。
あれは雨と共にいずれ無くなるでしょう。
匂いやばそうだなぁ……。
「あ、ジグルだ」
遠くの方でジグルが歩いているのを見つけた。
久しぶりに会う気がするし、ちょっと声をかけてみるとするか。
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