5.37.一瞬
MPはまだ全然回復していない。
だが……。
【経験値を獲得しました。LVが165になりました】
===============
名前:応錬(おうれん)
種族:龍の成り損ない
LⅤ :165/300
HP :879/670
MP :259/1751
攻撃力:881
防御力:908
魔法力:2277
俊敏 :299
===============
一気に来た。
あれだけの魔物を倒してこれだけなのか。
人間の成長速度はおっそろしいくらい遅いな。
まぁこれだけレベルが上がれば……火力も上がる。
これで何とかなることを祈る。
「ほぉ! やる気か! 良いぞ良いぞ!! 決着を付けようではないか!」
「逃げたやつが良く言う」
「……殺す」
相変わらず沸点が低い事で。
だが今回は……マジで負ける気はない。
前回は逃げられたからな。
負傷では終わらせない。
絶命で決着をつけてやる。
「『熱線』! 今回はあの黒髪はいない様だからなぁ! ワシの勝ちじゃぞ!!」
レクアムの後方に無数の魔法陣が展開される。
目立つことこの上ない。
今のこの状況としてはとてもありがたいな。
こっちに援軍が来てくれる可能性がぐっと上がる。
あの大量の魔法陣は以前見た物と全く同じだ。
数は少し多くなっているが……。
威力はそうでもない!
無数の熱線が空圧結界に当たるが、今回は罅も入らず様々な方向に弾き飛ばされる。
前回はMPを結界に注ぎ込めなかったから罅が入った。
だが今回は100MPを注ぎ込んでいる。
レクアムの熱線はこれで十分防げるようだ。
「なんじゃと……!?」
「動けねぇようだな……。助かるぜ」
ていうかレクアムってこれが一番強い攻撃なんだろうか?
前にもっと凄いのがあるからなって息まいていた気がするんだけど……。
まぁどうでもいい。
「スー……」
白龍前を抜き、大上段に構える。
ただの振り下ろし技だ。
だが先程の横振りと違って刀自体の重量も付いてくる。
本当であれば悪魔もろとも始末してしまいたいが、流石にそこまで器用ではない。
ここは一人を確実に片づけることを優先させる。
集中して狙いを定める。
目標はレクアム。
奴は魔法の連打で動いてはいないので格好の的だ。
熱線が目の前で弾け回っているので見えにくいが、場所は分かる。
両手に力を籠め、強く握りしめる。
大上段から振り下ろすと同時に、結界越しから一つの技能を叫ぶ。
「『天、割』!!」
ザンッ!!
バリィィイン!!
白龍前を地面に叩きつける勢いで振り抜いたので、威力は一切殺していない。
地面に叩きつけてしまう事に罪悪感はあったが、見てみると地面が深く抉れていた。
どうやら刃には一切土が触れていないらしい。
振り抜いたと同時に結界も壊れる。
飛んできた熱線も全て吹き飛ばしてしまったようで、俺には一切のダメージが無い。
煙が舞う中、レクアムの方を睨みつける。
すると、魔法陣を構えたまま固まっていた。
だが次の瞬間、後方に合った魔法陣が崩壊していく。
どうやら天割は魔法陣すらも切り裂いてしまったらしい。
遠くを見てみれば、地面がぐっぱりと割れていた。
予想は付いていたが、改めてみるとこの威力何回もぶっ放してたんだな……。
天割凄いわ。
レクアムを見続けているが、変化がない。
外れたのだろうか……?
「そん……なこと……ガ……」
「天割……だと? ま、まさか……!!」
悪魔が何やら驚いている。
だがそれよりもレクアムだ。
次の攻撃をしようと思った瞬間、レクアムの半身がずれた。
そのまま半分に分かれて、地面に落下していく。
勝負は一瞬。
長く戦う気など俺にはなかったので、今の一撃で沈められたのは良かった。
次だ。
お前だ悪魔。
「まだ……五百年だぞ……! 早過ぎる……! まだ半分も終わっていないというのに!!」
「覚悟は良いか!」
「ぐっ……!」
バゴオオン!!
後ろで壁が破壊される音が響いた。
それは俺の真後ろからだったようで、壁がこちらに飛んでくる。
「ぬおおおおお!!?」
何とか横に飛んで難を逃れる。
次から次に何なんだよ!!
壁を壊したのは黒い塊だったようで、それが地面をバウンドしながら転がっていく。
あれは人型をしているが……あの色は城で見た黒い塊だ。
もしかして……。
「兄貴ぃー! 大丈夫っすかー!!」
「全く面倒くさいわね! 何で私が貴方担がないといけないのよ!」
「俺足遅いんすよ」
「ハイ降りる!」
「ふべっ」
マリアが破壊した壁の穴からひょっこりと顔を出し、零漸を放り投げる。
綺麗に着地して俺の方に駆け寄って来た。
「兄貴!」
「あの魔法陣を見て来てくれたか!」
「ハイっす! あれは見覚えあったっすから、途中でギルドマスターひっ捕まえて連れてきた貰ったっす!」
「応錬君! こっちはもう大丈夫よ! で、あいつは何なの? 癇癪起こして急に襲って来たからこっちに吹き飛ばしたけど」
「お前がやったんかい」
あぶねぇじゃねぇか。
でもまぁ来てくれて助かった。
俺もうあいつと満足に戦えるか分からんからな。
で、吹き飛ばしたのって……あれ天井か床にへばりついてた黒い塊だよな?
色的に全く同じだし……。
「痛いじゃないかー!」
あ、声同じだわ。
てことは天井にへばりついていた奴かな。
今叫んだ奴は黒いマントに身を包んでいる。
襟が異様に長い奴で、吸血鬼とかが来ている奴っぽい。
マントの下にはツヤツヤしたジャケットみたいなのを着ている。
やけに現代的だな……。
魔界にはそういう技術があるのか?
「ぐっほぁ!!」
「わああああ!! イウボラー!!」
今度は空から同じ色をした黒い塊が降って来た。
地面に叩きつけられて体を押さえて痛みに耐えている様だ。
声的には床にへばりついていた奴だろう。
そして、次はレクアムの死体から黒い粘液質な物が這い出してきている。
それは姿を整えていき、若い姿の悪魔となった。
「うう……気持ち悪いっす……」
「悪魔なんだとよ」
「悪魔!? どうして悪魔が……」
ていうかさっきの悪魔は誰に吹き飛ばされて来たんだ?
「応錬様! お待たせしました!」
「ただいまー!」
「お前らだったか……」
相変わらず速い到着だ。
あれ、鳳炎目を回してないか?
もう少し丁寧に運んでやれよ……。
「応錬様にこの場所を任せっきりにして申し訳ありません」
「私からも礼を言うわ。ありがとうね」
「流石兄貴っす! あれだけの数を一人で! それにレクアムも死んでるじゃないっすか! やったっす!」
「それは終わってから聞くからさ。とりあえず目の前の事に集中しようぜ。悪魔との初戦闘だ」
「負けないのー!」
「……」
「鳳炎起きるのー!」
「ああああああやめろおおおお!!」
いい感じに弄ばれてんな……。
ま、何とか復活してくれたようで何よりだ。
マジで俺だけじゃ勝てなかっただろうからな。
全員が悪魔と対峙する。
吹っ飛ばされた悪魔も集合して武器を取り出して構えを取る。
唯一構えていないのは空中にいる銀色の翼をもつ悪魔だけだ。
いやぁ、今なら負ける気がしないぜ!!
銀色の翼をもつ悪魔が降りてくる。
悪魔全員の肩を一度ポンと叩いてから、こうつぶやいた。
「撤退だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます