5.33.Side-鳳炎-共闘
街の中で爆炎が起こる。
そしてその後に風が吹きすさび、火の粉を上空へと巻き上げてしまう。
それによって、周辺への被害は全くなくなっていた。
有難いけど……なんか癪に障る!
僕の技能がほとんど役に立っていないんだからね!
もう!
「でー!? 一体君たちどういうつもりなのー!?」
「鳳炎さん! その質問は後でお願いできませんか!」
「そうだぜそうだぜ! 会話とかしてる余裕ないわ俺ら!」
「君たち仮にも騎士団の団長と副団長でしょ!? これくらい簡単に捌いてよね!」
「「無茶な!!」」
今現在、ロイガーとツァールは僕が作り出した炎の制御を行っている。
絶炎の事は冒険者は勿論、騎士団にもリークされてしまっているのだ。
その為、二人は僕の炎を魔物以外に付けない様に一生懸命風魔法を使って燃え移らないようにしているのである。
僕としてもその辺に関しては細心の注意を払っているつもりだ。
全く心配性なんだから。
でも風を巻き起こしてくれているので、僕の能力は格段に上がっている。
それに加えて今は子供の姿。
素の炎魔法の威力も上がっているのだ。
空が飛べないのが難点だけどね……。
いや、実際には飛べないわけじゃない。
でも翼が大人の時と同じ大きさで作られるから、どう頑張っても体が軽すぎて制御できないのだ。
一回羽ばたいただけでめっちゃ飛んでいくんだもん。
無理だよ。
「もういっちょ行くよー! 『ファイヤーブラージ』!」
「わあああー! 馬鹿馬鹿! そんな弾幕張るんじゃねええ!!」
「兄さんしっかりしろって! はああ!!」
「ええい! どぅおらああああ!!」
ムカデに炎の弾が着弾し、燃え上がる。
そして風によって空気が送り込まれ、炎上。
次にムカデごと空に飛びあがって空中で燃え尽きてしまう。
大体はこの繰り返しだ。
ようやく息が合うようになってきた。
この連携で倒していけば、何とかなるはずだ。
にしても今回ばかりは騎士団の記憶が消されていて助かった。
これは完全に敵側の失敗だろうけど、騎士団が待機しているおかげで湧きだしたムカデの対処を早くにすることができたからね。
記憶を消さずに城壁の防衛に来ていたら、被害はもっと出ていたよ。
不幸中の幸いとでも言うべきかな。
でも魔物が現れるまで騎士団は本当に魔物の存在を知らなかったみたい。
それは会った時に話したから間違いない。
やっぱり応錬と予想した通り、一人が記憶を消されるとその周辺にいる人の記憶も消されるみたい。
一部だけど、その一部が完全に消されるからそれに繋がることも忘れるっぽい。
そんな技能なんて聞いたことないし、考えた事すらなかった。
「技能ってなんなんだろう……」
空の声からは種族の固有技能って聞いたけど、それは進化における過程でどうやって獲得するかを説明してくれているだけ。
僕が聞きたいのはそうじゃなくて、技能とは何なのかって事なんだよね。
でも空の声は教えてくれなかった。
本当に何なんだろう。
こんな危険な技能、あっていい物なんだろうか。
そしてそれは持っていれば誰にでも使える。
何が基準で与えられるのか。
本当に分からない。
僕の持っている技能はとても危険な物ばかりだ。
殺傷能力が高すぎる。
当たれば勝ちなんだからね。
卑怯と言われても何も言い返せないよ。
「鳳炎こら! 何ぼーっとしてんだよ!」
「ツァールほどじゃないよ」
「んだとこの野郎!」
相変わらずうるさいけど……今は戦闘中だ。
考え事は後にしよう。
最後の一匹を燃やして終了だ。
二人がそいつも空中に運んでくれているので、周囲への被害はない。
完璧だ。
これで周囲の敵は大体殲滅できたっぽい。
騎士団の連中も各々が駆け回ってムカデを駆逐していってくれているようだし、この辺はなんとなかったかな。
にしても騎士団は結構やるね。
一人ではムカデにやられるけど、数人がかりで確実に仕留めてくれている。
流石、訓練されているだけあるみたい。
「ぜぇ……ぜぇ……。俺はサポートには向かねぇんだよ……」
「でもだんだん良くなったじゃないか」
「うん、そうだね。動きとしては良かったと思うよ」
「……その姿で褒められるとカチンとくるぜ」
「はいはい」
僕も好きでこの姿になってるんじゃないやい。
ちょっと油断しただけだし!
大丈夫だし!
「……まだ残っているみたいだな……」
「数は?」
「足音を聞いているだけだから分からんな。冒険者も上手くやってくれている様だ。有難い」
「そりゃー僕たちの方が優秀だからね」
「んだとー!?」
「事実だよ」
物資補給、民間人避難、その役割分担、更に防衛の為の準備と前線に出ての敵前衛殲滅。
それをしなかった騎士団と全部こなした冒険者のどっちが有能か、なんて見ればわかる。
「働きに見合った金額要求するから覚悟しとけよ……」
「何故だ。子供なのになんだこの威圧感」
「兄さん諦めて……。鳳炎さんには勝てないし信頼度でも兄さんは負けてる」
「嘘だろ」
副団長それでいいのかと思ったが、無視しておこう。
さて、言いたい事は言ったのでそろそろ仕事に戻るとしよう。
音を頼りにして向かえば、大体は敵と出会うことができる筈……。
……あれ?
音が聞こえなくなった。
いや、実際には人々の声とかは聞こえているけど、ムカデが走っている様な大きな音が聞こえない。
さっきまで聞こえていたんだけど……。
「鳳炎殿!?」
「ほうえー……ん?」
「あ、ウチカゲさんにアレナさん!」
「「誰」」
「僕だよおおおお! 鳳炎だよおおおお!!」
子供の姿の障害がっ!!
初めて会う人は大体こういう反応するよね!
知ってたよ!!
「わー! 私より小さーい!」
「ちょっ! こらやめなさい! 持ち上げるなあああああ!」
「どうしてこのような事に……俺たちの事もさん付けになっていますし……」
説明するからとりあえず下ろして欲しい。
ぬおわああああ!
ちょまっ、止めてふりまわすなわああああ!!
アレナが鳳炎で遊んでいるのを横目に、ロイガーが今の現状を二人に説明してくた。
「食涙の鳳炎……。彼は不死でね。一度死ぬと子供の姿になって復活するのさ」
「なるほど、それで……」
「して、君たちは?」
「俺は霊帝のウチカゲです。あっちで遊んでいるのがアレナです」
「おお、そうだったか。私はロイガー。騎士団の隊長だ」
自己紹介終わったかい?
助けて。
「弟みたーい!」
「精神的には大人だけど、実際僕は君より年下だからそれは間違ってな──」
「わーい!」
「ぎゃああああ」
今度死んだときは絶対この子の近くにはいかないことにしよう……。
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