5.32.Side-零漸-解除
あれから暫く走ってるっすけど、全然魔水晶に近づけないっす!
一番近い場所なのにムカデの野郎に足止めされまくって動けない!
「ぬあー! イライラするっすー!」
「いいから速くしなさい!」
「分かってるっすよ! 『爆拳』!」
三匹まとめて倒しても、すぐにまた新しい敵が湧いてくる。
これの繰り返しで全然前に進めないっす!
ダンジョンの時は応錬の兄貴が水の槍で壊してくれたからよかったっすけど、今回はそうも言ってられないんすよね!
地面に埋まってるから攻撃できないし!
そもそも兄貴が居ないっす!
俺は遠距離攻撃持ってないんすよー!
「ほっ」
イルーザっていう魔女っ子は風魔法でムカデをどんどん斬っていってるっす。
無詠唱なんすけど。
俺でも技能使う時は名前を言わないといけないのに!
羨ましいっす!
ていうかちょっとMPが残り少ないっす!
こいつらから奪っとくっすか!
ムカデがこっちに突進してきた事を確認して、技とその攻撃を喰らう。
牙をがっちりつかんで魔力吸収を発動させて、MPを奪って行く。
相手もMPを奪われていることに気が付いたのか、何とか俺を振りほどこうと暴れているけど、残念ながらどんなに振り回されて壁に当てようとも俺はダメージが一切ないっす。
なのでMPが完全に切れるまではこのままっすよ!
俺のMP少ないんすからもう出てこないで欲しいっす!
流石にこのデカさの魔物だと俺の地身尚拳も使えないっすからね!
回避には使えるっすけど!
「どりゃあ!!」
MPの供給が無くなったので、貫き手でムカデの頭を貫く。
こうしておけばもう動かない。
だが、また新手のムカデが飛び出してきた。
「キリがないっす!!」
「あれはそう言う魔道具だからね! 魔水晶との距離は分かる!?」
「あの噴水の下っす!!」
場所までは見えてきている。
だが距離的にはまだ数百メートルはありそうだ。
ムカデたちは魔水晶に近づけさせないように、こちらに全部向かってきている。
そのおかげで被害はあまり出ていないのだが、流石にこの数は骨が折れる。
追撃が終わらないのだから。
かと言って逃げるわけにもいかないっす!
後回しにしたら被害が出そうっすからね!
でも近づけないっすー!!
くそおおおお!!
「魔女っ子! 何とかならないっすか!」
「なるけど家が数件は吹き飛ぶわ!」
「却下で!」
ぐぬぅ!
仕方ないっす!
MPの消費が激しいっすけど、これ使ったほうが確実っすね!
「魔女っ子! ちょっとの間一人で捌けるっすか!」
「問題ないわ! 後誰が魔女っ子よ! イルーザだって言ってるじゃない!」
「じゃあ頼むっす! 『土地精霊』!」
ふげぇ!
やっぱきっちり100MP持っていかれるっす!
だけどこれで魔水晶をこっちに持ってくることができるっすよ!
すぐに魔水晶のある場所の地面を動かし、それを外に弾きだす。
土でそれを覆い、こちらに持って来させる。
後は残っているムカデを掃討するだけなので、土地精霊の能力を使ってムカデを全て地面の中に引きずり込む。
ベギャギャギャギャという音と共にムカデは地面に沈んでいき、ようやく静かになった。
魔水晶が外に出されれば一時的に湧きが止まる。
とりあえずこれで何とかなったっす!
「ほい!」
「ちょ! ちょっと投げないで!!」
魔女っ子は何とかそれをキャッチしたっす。
大丈夫っすよ。
絶対にキャッチできるようにしっかり投げたんすから。
でもとりあえず落ち着いたっすね。
後はこれをこいつがどうするかっすけど……。
「解除にはどれくらいかかるっすか? 時間がかかるなら俺は次の所に行くっすけど」
「あと何個あるのかしら?」
「んー、ここからだと後三つはあるっぽいっすね」
この能力も万能ではなくて、ある一定の範囲に入らないと場所が分からないっす。
だから地下でもそれを確認するのに結構苦戦したっすね。
でもそれが分かってからは捜索が一段と楽になった気がするっす!
感覚的には半径一キロくらいだと思うんすけどね~。
詳しい距離は分からないっす。
……でもその距離内に三個あるってことは、他にもめっちゃ埋まってるって事じゃないっすか!?
うわああああ気付きたくなかったっす!!
国中にばら撒かれてたら大惨事っすよ!
まだ全部の魔水晶が稼働しているわけじゃなさそうっすけど、これ急がないと本当に大変なことになるっす!
「できた」
「えっ!? ってわああああああ!! なにやってるっすかああああ!!」
小さいムカデが出て来てるっす!
ていうか水晶が真っ二つに割れてるっすよ!?
何したんすかこの魔女っ子は!
……あれ、でも襲ってこないっすね。
なんでっすか?
「魔力を辿ってみたけどこれ、今埋められてる魔水晶には全部同じ人の魔力が込められていたわ」
「……ん? 何か関係あるんすか?」
「まぁお仕事がちょっと楽になったってだけね」
そう言って、持っていた小さなムカデをプチっと潰してしまった。
水晶の色は灰色になり、その効力失ったようだ。
「よし、後は殲滅するだけよ」
「……え? もう終わったんすか!?」
「そう言ったじゃない。魔水晶は同じ魔物であれば簡単に複製ができるの。そしてこの魔水晶は全部魔力で繋がってるから、それを私の魔力を混ぜて混乱させて破壊したって感じかしら」
「……コンピューターウイルスっすか?」
「何それ」
俺も詳しくは知らないっす。
……あ!
ほんとっす!
魔水晶の反応がどんどん消えていくっすよ!!
「魔女っ子は結構すごい奴だったんすね!」
「……なんか嬉しくないわその言い方」
「うっしゃー! じゃあ残りの魔物を潰しにかかるっすよー!」
……でも俺魔物の感知は出来ないっす……。
どっから行くっすかね……。
「どっちがいいと思うっすか!」
あれ?
「いねぇっす!!」
何処行ったっすかあの魔女っ子!
ぐぬぬ……よくわかんない奴だったっす。
魔水晶の事めっちゃ詳しかったっすけど……。
「んー、まぁいいっすか! 水晶のあった場所に行けばムカデいるっすよね! いくっすよー!」
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