5.29.破壊破岩流
俺は初めて使う技能、破壊破岩流を発動させた。
一体どれだけのMPを持っていかれるのだろうかと思って覚悟していたのだが、思っていた以上にMPは持っていかれない。
というか……。
「……? 徐々に減ってる……?」
五秒辺り1MPを消費している感じだ。
この減り方から行くと、あんまり強い技能ではないのかもしれないな。
だが確認は大切だ。
こういう時に普段は使えない技能全部使っちゃうもんね!
暫く待っていると、俺の周囲に水が漂い始めた。
これは無限水操でよく作り出す水だ。
それが地面に落ちて吸収される。
これが何度も何度も行われていた。
気が付けば俺の周囲どころか、半径数十メートルの間でその光景が広がっており、地面はどんどんぬかるんでいく。
いよいよもってこの技能が一体何なのかよく分からなくなってきた。
敵が迫ってきているというのに……。
すると、地面の一部が沈んだ。
何故一ヵ所だけそんなことが起きるのだろうかと思っていると、他の場所でも同じようなことが起き始めた。
そして、土が盛り上がった。
その土の中には岩や砂利が混じっていたと思う。
俺も一瞬だったのでよく見えなかったのだ。
ズオッっと飛び出した土の塊は一つだけではない。
俺が天割を撃った時の範囲くらいの規模で起きていた。
そしてようやく動き始める。
「えっ」
MPの消費量が跳ね上がった。
三秒に1MPだったのが、一秒に3MPに増えたのだ。
ちょっと待ってくれこれじゃあ五分くらいしか持たねぇじゃねぇか!
なんだこのMPの消費量!
俺もうMP無いんだって!
止めようとしても止まらない。
これはあれだ……。
あの時ゴボックを討伐した時の土砂流に似ている……。
ズドドドドドドドドド……。
もう俺じゃ止められません。
ガリガリとMPを削られながら、その大きな岩の混じった土砂流が魔物の群れに向かって突撃していく。
その規模は天割で敵を斬った時よりも広い。
大きな音を立てながら地面を揺るがす。
魔物もそれを見て流石に足を止める。
自分たちよりも強大な暴力的ともとれる物量が襲ってきているのだ。
先程は自分たちが優勢だったはずなのに、この一瞬でそれが覆った。
成す術もの無く、魔物は破壊破岩流に飲み込まれる。
「ぎゃ──」
「カカカ──」
なんとか耐えようとして、土砂流に自分の技をぶつける魔物もいたが、その技ごと飲み込んでしまう。
そしてそれは止まらない。
まるで全てを飲み込むまで勢いを止めることは無さそうだと感じてしまう。
いや俺は止めたいんだよねー!!
だってMP消費がやばいのよー!!
止まっておねがーい!
俺の心の叫びも虚しく、この技能はどんどんMPを食い散らかしていく。
だがそれと同時に、魔物も再起不能にまで持ち込んでいった。
既に土砂流の色が赤い。
そして今まで倒した魔物も運んでいってくれているらしく、辺りは少し赤いくらいで肉片は落ちていなかった。
これ片付けどうするんだろうと勝手に考えていたのだが、あまり気にしなくても大丈夫かもしれない。
まさかこんな形で片付けが行われるとは思っていなかったけどな。
ていうか色がヤバイ。
うん、色がヤバイのよマジで。
へ、へー、土って茶色意外の色も付くんだ……。
俺知らなかったなぁ。
ていうかMPがヤバイ!!
マジでマジでマジで!!
クッソこれもうなりふり構っていられねぇな!
魔道具袋からすぐにマナポーションを取り出して一気に飲み干す。
最高の渋みと絶望的な生臭さが口いっぱいに広がって鼻から突き抜ける。
マジくそ。
「ごっへぇ……。まじでまずぃ……」
これだけ苦しい思いをして飲んだのに、回復するのはたったの50……。
対価が見合わないんだが。
ていうか破壊破岩流が止まらない。
本当に全部の敵食いつくす気か!?
勘弁してくれここで倒れたら後々やばいんだからよぉ!
黒い塊のこともあるし、中に入っていった鳳炎や零漸たちのことも気になるし!
こんな所でくたばってたまるか!
「おい! 冒険者たち! マナポーションを分けてくれ!!」
「…………は! は、はい! 分かりました今すぐ!!」
呆けてる場合とちゃうぞ!
頼むぞマジで!
で、でもここは俺だけで何とかなりそうな気がしてきた。
もう冒険者には中に戻ってもらってムカデの処理を手伝ってもらった方が良いかもしれないな。
でもそうやって指示したら怒られるか?
ぶっちゃけこれで終わりだとは思えないんだよな。
あの黒い塊の正体は未だ分からないが、洗脳までしてかかって来たんだ。
そして零漸の話を聞く限り、この魔物は人為的に引き起こされた物。
魔水晶の能力からしてそれは間違いないだろう。
そんなに厄介な物とか知らなかったからな。
んでもってそれがまだこの国の中にある。
何処にあるのかは不明。
このままだと中にいる国民や冒険者たちに甚大な被害が起きる。
あ、でも中にいる冒険者は帰って来たばかりの奴らか。
万全ではないだろうが、ムカデのことはあいつらに任せておいた方が良いかもな……。
「お、応錬さん! これ!」
「おう! って多いなおい!!」
「あ、あれだけの技であれば、消費もすごいと思いましたので……」
にしたってマナポーションを箱で持ってくんなよ!
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