5.23.猶予一時間
破裂音が響いた瞬間、それを聞いた人々はその方向に目線を向ける。
あのような音は最近聞いたことが無いからな。
注目を集めるのには十分な音だったようだ。
その場にいる者たちの目線が自分に集中され始めた瞬間、鳳炎は大きな声を出す。
「皆の者!! 敵は刻一刻とこの場に近づいている!! 民たちよ! お前たちは今すぐに避難するのだ! ここにいては危険である! 冒険者諸君は陣形を乱すな! 自分の持ち場に戻り戦闘に向けて備えよ! だが民たちの誘導はせねばならん! FからEランク冒険者は民たちの誘導、そして誘導した後はその場で待機せよ! よいな!」
『『『おう!!』』』
それからは速かった。
冒険者の動きが格段に良くなって自分たちのしなければならないことをし始める。
E+ランク以上の冒険者は持ち場に戻って防衛の準備。
それ以外の冒険者は物資の確認、そして大砲や自分の武器の確認などを行い始めた。
本当に鳳炎の演説は優秀だよな。
誰もがあいつの指示であればホイホイ従うんだもんなぁ。
有名人ってすげぇわ。
「避難誘導を担当する冒険者諸君! 今この現状は異常事態だという事は既に分かっていると思う! これは何者かの陰謀だ! お前たちは記憶を操作されないから問題ないが、他の者はまたなってしまうかもしれない! その時は君たちが抑えるのだ! 絶対にこちらに来させてはならんからな!」
「分かりましたー!」
「任せてください炎帝様ー!」
お、二つ名だ。
食涙の鳳炎ってのもあるけど、新しいのもみんな取り入れてくれているんだな。
俺もそうなるんだろうか……。
まぁ別にいいけど……。
だけどこれ結構無駄な時間だよなー。
Eランク以下の冒険者って子供も結構多いし……。
「皆さーん! 中央区に避難してくださーい!」
「こっちですよー!」
あ、あの時ジグルにちょっかいかけてきた元子供パーティー。
結構しっかりしているじゃないか。
あんなこと言ってたけど、頑張ってるのね。
あ、そう言えばジグルもいないのかな?
んー、でもあいつらと一緒に行動してたからなー。
今何してるか分かんないし。
流石に見つけるのは難しいか。
とりあえず避難誘導は任せても問題なさそうだな。
よし!
じゃあ俺もやるぞ……!
っ!
でも今MPを多く使用してしまうわけにはいかないよな!
後の戦闘も控えているんだ……。
操り霞で一気に探そうと思ったけど、そもそもそれをやっても見つけることができなかった。
泥蛇でも同じだ。
実際に目で見て探しても、形を探って探しても、あの執事を見つけることは恐らくできない。
城にはいないし、その周辺にもいなかった。
他に何処か探していない所ってあったか?
もう少し場所を絞らないと探すことはできないぞ。
えーい思い出せ!
あの二匹は一体何を喋っていた!
何をしようとしていたのだ!
魔水晶……?
そう言えば結局魔水晶ってなんなんだ……?
なんか言ってたよな!
魔水晶を何するって言ってたっけ!?
えーと、えーーっと!
『お前は早く魔水晶を配置させろ』
…………。
何処にだよ!?
クッソ結局何もわからねぇじゃねぇか!
ってそうか!
だからあいつ城の中にいなかったのか!
配置って事は他にも何個かありそうな気がするが、それを探すのは至難の業だな……。
一時間だもんなああああ!
その間に探すとか無理に決まってんだろ!
あ、でも水晶か。
形は丸い玉だってことは流石にわかるぞ!
ぬぅー仕方ない!
MPを200までは使っていいと自分の中で設定。
操り霞を家一個分の大きさにしてそれを移動させていく。
時間はかかるが一時間あればそれなりの範囲を探すことができるはずだ。
通るだけだし、そこで丸い物を見つけたら止まって詳しく見てみるという作戦。
家の中が映るのは一瞬だし、中々発見するのが難しいかもしれないが、やるしかない!
これがMPの使用を最小にして素早く探索できる方法なのだ。
でも水晶を一個でも見つければ、天の声から魔水晶についての情報がもらえるはずだ。
俺はそれに賭ける。
魔水晶がどんな物かを把握すれば、自ずと対策方法は出てくるはずだからな!
とりあえず一軒一軒を操り霞で調べていく。
この世界では丸い物なんてまじで水晶くらいしかないからな。
うん、このやり方であればMPの消費は殆どない。
操り霞の維持くらいである。
それに動かす速度もそれなりに速い。
探索系技能としては結構いい物だと俺は思うぞ。
俺は操り霞を使って、どんどん家の中を調べていく。
とりあえずまずはこの辺の家屋からだ。
他にも道や裏路地なんかも調べていく。
家の中だけに置かれているとも思わないからな。
……つっても、国の四分の一でも調べれるかどうかって所だなぁ……。
頑張ろう……。
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