5.20.技能確認
技能の確認か……。
そう言えば人の姿になってからは結構疎かにしていた気がするな。
この際だから使えそうな奴はしっかり覚えておこう。
「まずは範囲攻撃の技能はあるか?」
「ああ、何個かあるぞ」
俺の技能で代表的な範囲攻撃は、多連水槍、連水糸槍、無限水操、土地精霊かな。
あんまり使ったことのない奴で言えば、天割、破壊破岩流、水弾(斬)、空気圧縮……か。
多連水槍が一番得意な奴だな。
連水糸槍も得意な方に入る。
無限水操に関してはもう息を吸うのと同じくらい簡単に扱えるが、これは窒息死を狙うしかないのでちょっと維持が大変かもしれない。
土地精霊に関しては一回使うだけで結構な大地を動かすことが出来そうなので、敵を殲滅するのには持って来いだと思う。
MPも100しか使わないからな。
俺のMPは1251ある。
単純計算で十二回は使えるぞ。
天割に関しては、横に薙ぎ払えば結構な数の敵を屠ることができると思う。
でも水平に綺麗に斬り飛ばす自信はない。
遠くの敵は倒しきれないかもしれないな。
破壊破岩流は使ったことが無いから分からない。
水弾はマシンガンみたいに連続で攻撃することが可能。
だけど消費MPを考えると、土地精霊の方がコスパは良いかな。
空気圧縮は作るのに時間がかかるし、地面を結構抉ってしまうだろう。
水中の中であれだったの。
地上でやればどうなることか……。
「あ、そう言えばすまんな。渡しておいたあれ、使い物にならんかったろ」
「ああ……あの蛇か。道中崩れてしまったからな」
「やっぱり操れる距離があったみたいでな。その正確な距離はまだわからん」
「なるほど。まぁ今回はもう使わないだろう」
確かに。
あれ数はあんまり作れそうにないからなぁ。
「ま、俺の使えそうな技能は今説明した物で全部だ。後は個人戦で使う物とか、回復系技能や防御系ばかりだな」
「そうか……。では私のも説明しよう」
鳳炎の使えそうな範囲攻撃は……。
ファイヤーフェザー、ファイヤーアロー、ファイヤーブラージ、炎操、フレイムボム、絶縁火柱、紅蓮の芽だそうだ。
これは全て範囲攻撃に当たる物の様で、撤退してるときもこれで何度か敵を焼いたのだという。
「ファイヤーブラージってなんだ? 弾幕?」
「うむ。ファイヤーボールを多数撃ち込めて追尾性が少しあると思っておいてくれ」
「便利だな……」
「だが私は魔力が低くてなかなか使えんのだ……」
そう言えば鳳炎って技能強い割にステータス低いよな。
俺と零漸は結構高い。
どうしてなんだろうか……。
あ。
もしかしてこいつ……。
「お前、早い段階で進化する方法を選んだのか」
「虫ばかり食べさせられたらいやでも成長して巣立ちしたくなるだろう!?」
「た、確かに……」
そ、そうか……。
鳳炎は俺たちと違って早く進化する方法を選んだから、こんなにステータスが低いのか……。
にしてもこれは極端に低いよな……。
俺もこの進化方法を選んでいたらこうなっていたのかもしれない。
こわやこわや……。
「話を戻すぞ。私の技能は基本的に一度使えば必ず敵を殺すことができる。燃え移れば更に有利となる」
「風魔法があれば良いんだがなぁ……。生憎俺は持っていない」
「なに、そこまで期待はしていないさ。それと、私は技能を四つほど使うともうMPはからっけつだ」
「相変わらず燃費悪いなお前……」
「ああ……。だが一度発動させてしまえば長い時間使うことができる。遊撃は任せてほしい」
鳳炎は空を飛べるしな。
その辺は任せておいても問題ないだろう。
問題は俺の方か。
俺の技能の中で一番殺傷力が高いのは天割だろう。
横に凪げばとんでもないことになると思う。
後は……。
「破壊破岩流……か」
「それはどんな技能なのか分からないんだったな」
「あ、ああ。合成前の技能なら使ったことがあるのだが、結構な威力だった、くらいしかわからん。だが範囲攻撃であることは間違いないぞ」
「まぁいざとなったら使ってくれ。こういう時じゃないと危なそうな技能なんて使えないからな」
「おう」
これは助かる提案である。
じゃあこの際できる限りのことはやってしまいましょうかねぇ。
さて、とりあえず技能の把握は終わった。
後は俺と鳳炎の動きだ。
「鳳炎は遊撃だったな。俺はどうしたらいい?」
「敵を接近させずに倒すことができれば御の字だ。冒険者の負担をできるだけ減らして欲しい。まぁ、臨機応変に対応して欲しいとだけ言っておこうか」
「作戦も何もねぇじゃねぇか」
「好きになんでもできる方が応錬にとっては楽だろう?」
「まぁ、それはそうなんだが……」
良いのかなぁ。
俺だけこんな自由に動いて。
皆誰しも自分の役割を決めて、それを遂行するために動いている。
俺も冒険者だからちょっとくらい頼ってくれてもいいんだけどなぁ……。
「応錬。もう少し冒険者を、仲間を信じてやってくれ」
「え?」
「君はここにきて日が短い。人間としても、魔物としても。自分が強いという事は他の誰よりもわかっているはずだ。だから何でもできてしまう。だから手伝いたい、助けたいと思うのは分かる。だが今は、自分のやることだけを見て、他はあいつらに任せてやってくれ」
……自分ではそんな気は全くなかった。
だが鳳炎の言う通り、俺の考え方は他の仲間を信用できていないと言っている様な物だ。
これは……失礼だったな……。
「かくいう私も、戦場ではあいつらの力無しでは全員無傷での撤退なんてできなかったのだ。あの時私は敵の足止めに徹したが、それをあいつらが信じて撤退準備をしてくれたからこその生還だった。だから君も、仲間を信じるのだ。私たちは仲間だろう?」
「……よくそんな臭い台詞吐けるな」
「真面目だぞ?」
「わかったわかった。これからは気を付けよう。だが危なくなったら助けに行くぞ?」
「うむ、それでいい。だからこそ君には自由な行動を取れるようにしているのだ」
鳳炎は俺の言葉に満足したのか、立ち上がって外を見る。
どうやら冒険者が帰って来た様だ。
それと……。
なんだか城の中が騒がしくなってきている。
どうやら来たようだな。
「なんだ?」
「騎士団だよ。出兵はしないが防衛には参戦するように俺とマリアで釘を刺しておいたんだ」
「今更になって何を……。少しでも出兵してくれればもう少し被害を減らせただろうに」
「なんだかきな臭いんだ。騎士団を動かす権限は王子にあるらしいしな」
「は? 何を言っているのだ応錬。そんな事が可能なわけないだろう」
「だが事実だ。騎士団長がそう言っていた。それと……洗脳されている執事を見つけた。何に洗脳されているかは分からないが、あの執事が何処を探してもいない」
「一大事ではないか!!」
そう、一大事なんです。
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