5.18.Side-零漸-全力疾走


 俺は走っていた!!

 全力で!

 そう!

 書いて字の如く全・力・疾・走!!

 何故かわかるっすか!?


 そうっす!

 今回は時間との勝負なんっすよ!!

 どれだけ早くあの魔水晶とかいう奴を壊せるかが今回の戦いを左右すると言っても過言ではないっす!!


 でも!

 この中では俺が一番遅いっすー!!


「ぬおおおおおお!!」

「……辛いなら休憩しますか……?」

「そんな暇ないっす!」

「零漸頑張れ~」

「アレナ空飛ぶとかありっすかぁ!! うらああああ!!」


 ウチカゲは鬼。

 更にはスピードに特化している。

 そんな奴が簡単に疲れるはずもないっすよねー!


 アレナは自分の体を最大限に軽くして浮遊してるっす……。

 羨ましいっすね。

 俺も空とか飛んでみたいっす!

 亀じゃ無理っすかね?

 無理っすよねー……。


「! ここだ!」

「ではお願いします! アレナは次の道を把握しておいてください!」

「わかった!」

「っしゃ『土地精霊』!」


 くぅー!

 消費MPが100は辛いっす!!

 俺のMP400ちょいしかないっすから、もう使えなくなるっす……。


 魔力吸収っていう技能があるっすけど、これは相手から搾り取る技能なので今は使えないっす……。

 でも土地精霊は発動させると暫く使い続けることができる!

 っすけど……移動の時間でその効果が切れてしまうんすよね……。


 結構間隔を置いて配置してるっぽいんすよねこれ。

 次の所に行くまでに効果が切れるのは本当に痛いっす……。


「見つけたっすよ!」


 今回は中に変な羽の生えた鳥が入っているっす。

 俺がそれを地上に出した瞬間、ウチカゲが素手で殴り飛ばして破壊する。

 大体これの繰り返しっすね。


「これで四つ目ですね……。アレナ、零漸殿、大丈夫ですか?」

「ぜぇ、ぜぇ……だ、大丈夫っす……ぜぇ……」

「流石に休んだ方が良さそうですね……」


 休んじゃいけないってのに……体が言う事聞かないっす……。

 魔物だからか、前世より遥かに長く走れたっすけど……流石に疲れるっすね……。


 だ、駄目っす……。

 もう立つのが辛いっすね……。


「はぁ……はぁ……」

「はい、お水」

「有難うっす……」


 アレナからもらった水袋を一気にがぶ飲みする。

 口からこぼれる水もあったが、それも体に触れれば気持ちがいいのでそのまま放置。

 とにかくどんどん水を飲んでいく。


「だーっ! はぁ、はぁ……」

「やはりこれはしばらく休んだ方が良いですね。体の方に限界が来ています」

「うう……。仕方ないっす。しばらく休むっす……」


 実際にMPも殆どないので、休むのが確かに正解っすね。

 ていうか最近レベルが全く上がらないっす……。

 魔物の姿だと食べてるだけでレベルあがったっすから、結構楽だったけど……。

 人間の姿になると倒してレベルが上がるってなったっすからね。

 それも敵がそれなりのレベルじゃないと経験値にすらならないっす。


 人間の姿だと、これ以上のレベル上げは見込めないっすね。

 まぁ俺はこのままでも全然戦えるっすからいいけど……。

 ていうか亀はちょっとなぁーって感じなんすよね。


 あーあー。

 鳳炎は不死鳥だし、兄貴は龍。

 なんか俺だけ不憫っすよー。


「今は四層……。あとちょっとで四層は攻略できる」

「三層に二つ、四層に二つ……。一層に二つずつあると仮定すれば次の第五層に行けますが、やはり全部回って行った方が良いでしょうね」

「うん。私もそれが良いと思う。そういえば、ウチカゲは零漸背負って走れないの?」

「零漸殿の特殊技能は、自分の足が地面に着いている状態でなければ発動しないようなのです。俺が背負っては意味がないですね」

「そっかー」


 あれだけ走ってまだ第四層って聞くと、流石に萎えるっすね……。

 まだ時間的には余裕があると思うっすけど、悠長にはしてられないっす。

 でも流石に寝ないとアレナが辛いっすよね。

 アレナの睡眠に合わせて、俺たちもしっかりと寝ることにするっすよ。


 確か第五層はムカデがわっさわっさ出て来た所っすよね。

 また出てくるかは分かんないっすけど、出て来たら来たで厄介っす。

 ここまで一匹の魔物とも遭遇してないっすから、五層もいないとは思うっすけど……。


 あれ、そう言えば五層は距離としては短かったはずっよね。

 ムカデ捌くのにとんでもない時間を使ったっすから……。


「零漸殿。魔力はどうですか?」

「後一時間くらいしないと土地精霊は使えそうにないっすね……。全回復にはもう少し時間がかかるっす……」

「んー、零漸殿。俺の魔力を魔力吸収で奪ってはいただけませんか?」

「え、いいんすか?」

「はい。400程なのであまり取られると気絶してしまいますが……」


 でもこの提案はありがたいっす。

 ウチカゲはあんまり魔法は使わないっすからね。

 じゃあ遠慮なくもらうっす。


「分かったっす。『魔力吸収』」


 技能を発動させてみると、すぐに魔力が回復していった。

 だけど回復速度はそんなに速くはない。

 一秒に3MPの回復量だ。


 でもこれだけでもありがたいっす。

 暫くこれを使っておけば、また土地精霊を使う事ができそうっすね。


「うっし。ウチカゲは大丈夫っすか?」

「……はい。なんともないようです。半分ほどしか持っていかれませんでしたが、大丈夫ですか?」

「これで二回は使えるっす。第五層の攻略を今日の目標にするっすか」

「アレナもそれにさんせーい! お腹空いてきた……」


 洞窟は時間の間隔が狂うっすからね……。

 かくいう俺も、結構腹減ってるっす。


「ふむ……。では休憩がてら、軽食でも取りましょうか」

「「さんせーい」」


 兄貴からもらった魔道具袋にいろんなもの詰めて来たっすからね。

 これだけあれば洞窟の攻略は余裕っす。


 飯食ったらまた走るっすよー!!

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