5.16.塊


 城に侵入してから……約一時間といった所か。

 迷子です有難う御座いました。


 ここが今何階なのかも忘れちまったよ!

 ここ何処ですか……。

 どの辺なんですか……。


 まぁ帰るときは窓に飛び出してフライアウェイすればいいから、その辺は問題ないんだけど……。

 ガロット王国の城の作りとはまた違うんだもんな。

 あの時はサテラに連れまわされてたから、道もあんまり思えてないけど……。

 この城はもっと分からん。

 どうなってんだ……。


 でもいろんなところを見る事は出来た。

 倉庫や宝物庫、使用人の部屋だったり会議室っぽい所。

 他にも書庫みたいなところもあったな。

 普通に見てて面白かったぞ。


 それに、天井付近を移動している為か、まだ一度も見つかっていない。

 空圧結界は透明に近いから見えにくいっぽいし、衛兵たちの中に索敵能力を持っている人物はいないのかもしれないな。

 なので気楽に探索ができています。


 でも王子っぽい奴は見かけないなぁ。

 そう言えば名前なんていうんだろう?

 聞いておけばよかった。

 この状態だと話せないから意味ないかもしれないけどね。


 …………。

 あれ?

 そういえばここにいる衛兵たち……。

 誰一人として魔物の軍勢が来ていることに関して口にしてなくないか?


 慌ててる様子もないし……。

 なんだこれ。

 普通に仕事をこなしてますよみたいな表情しやがって。

 何をしているんだこいつら……。


 え、ってことはマジで王子にや側近とかには魔物の情報入ってないって事なのか?

 メイドとか執事っぽい奴らも見たけど、普通に今日を過ごしている感じがしたし……。

 衛兵も慌てている様子は無い。

 騎士団は?

 この中にはいないのか……?

 後で騎士団も探してみるか。


 お?

 なんかちょっと豪華そうな場所に来たな。

 装飾が結構凝っている……。

 眩しい。


 ガチャッ。


 ん?

 ああ、なんだ……また執事か……。

 お爺ちゃん執事かな?

 すごい貫禄あるけど…………あの部屋一体何なんだろう?

 ちょっと操り霞で見てみよーっと。


 操り霞を部屋の方に展開しようとした時、天井と床になにかが居るという事が分かった。

 なんかへばりついとる!!


 え!?

 あれ!?

 見えないけど何か居る!!

 あ、あのお爺ちゃん執事の上と足元に何か居るぞ!!


 え、これ突っついても大丈夫な奴?

 明らかに呪い系の禍々しさを感じるんですけどなんですかこれ。

 操り霞で見てるけど、なんかの塊っぽいんだよなー……。

 あのースライムべちって壁にぶん投げたらくっつくじゃない?

 それと同じ感じのものがある。


 一言でいうと気持ちが悪いです。

 触りたくないですなんか動いてるもん。


『ねー、まーだー?』


 喋ったああああああ!!?


『うるさい……。どんどん魔物の報告が上がっていててそれを捌くのに大変なんだ。お前は早く魔水晶を配置させろ』

『ヴィー』


 下のも喋ったんだけど!

 え、これ喋れるんですか!?

 お前たちなんなんですか!!


 えー突っつきたい。

 すっごい突っつきたい衝動に駆られている俺が居ます。

 駄目?

 突っついちゃ駄目ですか?

 ミニマム鋭水流剣えいっ。


『いだあああああああ!!!!』

『うおびっくりした! なんだ! どうした!!』


 うわああああびっくりしたああああ!!

 めっちゃ元気じゃんこいつ……。

 天井の奴にぶっ刺してみたけど……攻撃自体は普通に通るんだな……。


『なんかチクってした! なんかチクってしたああああ!』

『ああ!? んだよ蜘蛛かなんかに噛まれたんか? 大げさな……』

『刺されたああああ!』


 いや、思いっきり刺したんですけどね。

 ていうかこの天井にいる奴うるせぇな……。

 子供っぽい声してるし……。


 あれ?

 そう言えば地面にいる様の奴、魔物の報告がどうとか言ってなかったか?

 ……ん?

 こいつらがなんかしてんのか??

 あーでもこの状態だと何も出来ないなぁ。

 突っつくことくらいしかできない。


 話を聞くことが出来ないっていうのはやっぱり不便ですね。

 んー、とりあえずもう一回刺しとこ。


『いだあああああああ!!!!』

『なんだよ!!』

『分かんない! なんかチクってする!! 左! 左側からああああ!』

『なんか居んのか!? っておい! 洗脳解くなよ!』

『君のと違って僕のは完璧なのだからそんなへましないよ』

『おう誰だか知らねぇがもう一回刺してくんねぇかこいつの事!!』


 うっす。


『いだあああああああ!!!!』

『はっはっはっは! いい気味だなおい!』


 ……ん?

 洗脳??


 バチッ!!


「いってええええ!! っておい何すんだコラ!」

「何寝てんのよ!」

「やることねぇんだよ! ていうか邪魔するなって……ああああ解除されちまったああ!!」

「?」


 この阿保マリアぁ……。

 俺が寝ているというのにひっぱたきやがって……。

 くっそ泥人が解除されちまったじゃないか!

 なんかすごいやばそうなことになってるってのに!


「どうしてくれる!」

「何がよ……。それはそうと、応錬君には水の調達をお願いしたいの。調達って言っても作れるだろうけどね」

「その辺の井戸とかじゃ間に合わんのか……。わかった。壺でもなんでも持って来い」


 はぁ、とりあえずこのことは伏せとかないとなぁ……。

 俺が侵入したのがバレる。

 怒られるのは嫌です。


 洗脳されてんのってあの執事だよな。

 ていうかあの二匹倒せばよかったか……。

 ちょっと遊び過ぎた。


 結局王子は見つからなかったけど、要注意人物は発見できたな。

 何しでかすか分からんけど、こっちが片付くまで大人しくしとけよー……?

 でもとりあえず監視はしておくか。

 同じ所に行けるか分からんけどな……。


「あ、そうだ。マリア。魔水晶ってなんだ?」

「? なにそれ。知らないわ」

「ああ、そう。ならいいんだ」


 これは別にいいか。

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