5.8.Side-零漸-原因


 ウチカゲが壊せないとかどうなってんの!?

 仮にも鬼ですよ彼!

 おかしいでしょう!?


「本当に壊せないの!?」

「だ、駄目です。一発目は確かに手加減したんですけど、二、三発目は本気でした……」


 本気の方が壊せれてないって何!?

 二、三発目って全然罅入ってなかったよね!?

 ナニナニどうなってんのこの地面……。


 近づいて地面に手を置いて確認してみる。

 だけどやっぱり普通の地面っす。

 本当に何の変哲もない地面。


「これ掘り起こしたらなんかわかるっすかね?」

「ですが俺の力でも壊せませんでした。地面を掘るような道具は持っていませんし……」

「魔力勿体ないっすけど、もう一回土地精霊使うっす! 俺は肉弾戦の方が得意だから魔力はあんまり使わないっすからね! 二人は離れて!」

「分かりました!」


 二人が距離を取ったのを確認した後、俺はまた地面に手をついて技能を発動させる。


「『土地精霊』!」


 地面を変形させて穴を作り、何かないかと掘っていく。

 邪魔になった地面はその辺の壁にくっつけて形成で固形化。

 この調子でどんどん掘っていく。


 地面の中に何かがあるはずっす。

 なのでふるいにかけるようにして地面を変形させて何かを探していく。

 でも出てくる物は石ころばっかりっすね……。


「二人ともー! 何か見つけたら声をかけて欲しいっす! 俺だけじゃ見つけれないっすからー!」

「了解しました!」

「わかったー!」


 自分だけじゃなくて後ろにいる二人にも地面が見えるようにして変化させていく。

 流石に三人で見れば見落としは少なくなるはずっすからね!

 でもこれ結構大変っすね……。

 意外と制御が難しい……。


 暫くその調子で探し物をしていると、アレナが急に声を出した。


「あ! 零漸! なんか光ってるのあった!!」

「え!? まじ!?」


 地面を変形させるのを止めて、動かした地面をもう一度探っていく。

 すると、コトンと何かが地面の中から落ちてきた。

 それは透明なガラスの様なもので、球体だ。


 とりあえずこれを俺の隣に置いて、変形させた地面を元に戻す。

 このままじゃ危ないっすからね……。

 土地精霊の効果が切れる前に見つかってよかったっす。

 お陰で魔力はもう半分を切ってしまったっすけど……。


 地面を直したことを確認してから、隣に置いた透明な球体を手に取ってみる。

 パッと見水晶玉っすねこれ。

 あれ?

 水晶玉……?

 どっかで聞いたことがある様な……。


「あ! 零漸殿! その水晶玉ってムカデの魔物が無限に出てきたというあれではないですか!?」

「え? ん! ああ! そう言えば応錬の兄貴がそんな事言ってたっすね!!」


 第五層ではムカデの群れに苦戦したっすからね!

 俺覚えてるっすよ!

 第六層に降りる道で水晶の破片があったのも見てるし、それで間違いないはずっす!


 あれ?

 でもなんで魔物を出すような水晶があえて地面の中に入ってるっすか?

 使い方的にはどこか適当な場所に置いて魔物を発生させるっていう物だった筈っすよね?

 んーー?


「ねーねー零漸。なんでこの水晶からは魔物出てこないの?」

「え、それを俺に聞くっすか……? 分かるわけないじゃないっすか……」 

「……言われてみれば確かにそうなのですが……」


 んーナニコレ。

 分かんないっすー!!


 は!

 こんな時こそ地の声ですよ!

 地の声ー!

 この水晶のことについて知りたいんすけど、なんか知ってるっすかー!?


【魔水晶。魔力と魔物の素材を籠めることにより魔物の増殖が可能。もし埋めた場合、水晶からは出現せず日の当たる場所で増殖する】


 …………。

 んっ!?


「何だってぇ!!?」

「び、びっくりしたぁ……。零漸どうしたの……?」

「い、いや実は……!」


 あ。

 待ってよ……?

 この二人に応錬の兄貴は声のことを言ってるんすかね……?


 地の声の事に関しては二人が寝ている時に応錬の兄貴に話したから聞かれてはいないはずっすけど……。

 んー、これは少し黙っておいた方が良いかもしれないっすね。


「え、えっと……。実は俺ちょっとした鑑定技能があって……。それ使ってこれ調べてみたんすよ!」

「おお、流石零漸殿。応錬様に引けを取らない程の技能をお持ちですな」

「そ、そう? じゃなくて、それによるとこれ……地上に魔物を出現させる道具っぽいっす……」

「なんっ!?」

「え!? 零漸それ本当!?」


 この水晶の使われ方からしてそれは間違いないっす。

 日の光が届く場所なんて地上しかないっすからね!


 あれ……。

 ちょっと待つっす。

 それが本当だとしたら……今地上で湧いている魔物って……?


「一大事ではないですか! それが本当だとしたら……あの魔物の軍勢は人為的に引き起こされた可能性が高いです!」

「やっぱりかーーーー!!」


 頭を抱えざるを得ない!

 これからどうするんだよ!

 ていうかこれ報告しに帰った方が良くないっすか!?

 あ、でももう魔物出現してるっていうし意味無いのかこの情報!


 あれ、でもでも人為的に引き起こされている物だっていう事はかなり有益な情報なのでは!?

 それを伝えないってのはやばいんじゃないっすかね!

 うん、戻ろう!

 一刻も早く戻って応錬の兄貴にこのことを報告しないといけないっす!


「も、戻るっすよ二人共!」

「いえ、駄目です!」

「なんでっすか!? この事伝えないとマズいっすよね!? 俺たちでも苦戦するような魔物もこのダンジョンにはいたっす! それがこの水晶に使われるとしたらとんでもない被害が出るっす! 加勢に行くべきっすよ!」

「これが一つだという保証はありません! これがある限り魔物はどんどん地上で出現し続けている可能性があるのです! 俺たちはこの水晶を破壊して戻るべきです!」

「ぐっ……! そ、そうか……! その可能性もあるんすか!」


 一種類の魔物で構成されている魔物の軍なんてあるはずがないっす!

 それにこの魔水晶……。

 素材さえあれば魔物を増殖できるって地の声は言ってたっす……。

 一個とは限らないっすよねー!

 んあーーーー!!


「じゃ、じゃあ早く行くっすよ!」

「そうですが少しお待ちください! この水晶を探すには零漸殿の協力が必要不可欠です!」

「お、俺の?」

「はい! 俺とアレナは地面の中に眠る水晶を見つけることが出来ません! それを見つけれるのは大地の加護を持っている零漸殿のみ! そして……アレナの持っている地図が重要になります」

「私の!?」


 急に名前を呼ばれてアレナはびっくりしている。

 だけど確かにアレナに地図が必要になるのは理解できるっす……。


 俺の土地精霊の能力は“その土地に足を付けていなければ発動しない”技能なんっすよね。

 だからまたダンジョンの全てのカ所を回る必要があるっす。

 アレナの地図めっちゃ役に立つっすよー!


 それに今回の隠し場所は地図には載っていない場所!

 それを探すためにももう一度ダンジョンをくまなく回らなければならないって訳っすね。

 んー長丁場になりそうっす!!


「戦闘開始までに間に合うっすかね!?」

「それは分かりません……。ですがこれを仕掛けた者もそこまで暇ではないはず。最深部までは手を入れていないでしょう」

「えーっと、私の書いた地図によると、第十層からは一本道だよ」

「となると第九層まではしっかり探索しないといけないっすね。そこまで行ったら魔法陣で帰る方が速そうっす」


 やる事更新!

 魔水晶とかいう意味わかんない水晶をぶっ壊すっすよ!


「水晶のお陰か、魔物はいない様です。比較的速やかにダンジョンを攻略しましょう」

「おう!」

「分かった!」


 応錬の兄貴ー!

 俺たちはダンジョン攻略で密かに援護するっすよー!

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