5.7.Side-零漸-横穴調査


 横穴は長く続いてはいなかったようで、すぐに行き止まりへと辿り着いてしまったっす。

 どうしよう。

 何にもないっす。


「あれ?」

「? どうしましたか?」

「大地の加護が発動したっす」

「え?」


 大地の加護……。

 立っている土地の性質を読み取って自らの力にできる特殊技能っす。

 今発動したのは魔力強化……。

 魔法力と魔法技能の威力が上がる物の様っすね。


 あれ、でもおかしいっす。

 前は結構深くまで潜ってようやく大地の加護が発動した。

 でもここは第三層……。

 上まで地形が変わってきてるっていう事なんすかね……?


「どういうことでしょうか……」

「俺はよく分かんないっす」

「そうですか……。でもおかしいですね。以前はもっと下の方で変わったんですもんね?」

「そのはずっす。また魔力が強化されてるみたいっす」

「ふむ……」


 そう言って、ウチカゲは手を顎に添えてまた考えこんでしまった。

 でも俺はよく分からないので、適当にその辺をぶらぶらして探索をしてみるっす。

 アレナも同じ考えだった様で、俺と同じように地面や壁を見て回っている。

 でも何もないっすね……。


 なんかこういう時に使える便利技能とかないっすかね?

 えーっと……。

 俺の使える技能で探知系の技能は……。


 なんもないっすね!

 俺本当に技能的にはカウンター攻撃と防御面に長けた技能しか持ってないっす……。

 体術は出来るっすけど俺足遅いっすからねー!


「なにもなーい。メモメモ……」

「そっすねー……。でも隠してたのであれば、見つかりたくない物があったって事っすよね。もしかしてもうどっか行っちゃってるとか?」

「零漸殿の言う通り、その可能性もありますね。ですが何があったのか分かりませんし、零漸殿の大地の加護が発動した条件も未だ分かりません。此処に入ってから発動したという事は、ここに何かがある可能性はあるのですが……」


 とは言ってもあるのは岩ばかりっすね。

 何もないとしか言いようのない空洞っす。


 ……あ!

 地の声に特殊技能の事聞いたらそれなりに分かるんじゃないっすかね!?

 おーい!

 地の声ー!

 俺の特殊技能、大地の加護についてもう一度説明をお願いするっすー!


―特殊技能―

===============

―大地の加護―

 立っている土地の性質を読み取って自らの力にできる。

===============


 んー、何にも変わらなかったっす!

 でも性質ってのがよくわかんないんすよねー。

 地上にいるときは防御力が少し上がるだけであんまり強い効果とかは無いんすよね。


 性質……性質……。

 あーこういうとき応錬の兄貴が居てくれたらなんか知ってそうなもんなんすけどねー!

 俺だけじゃ何にもわかんないっす……。

 トホホ……。


「零漸殿。この部屋に入った時から発動するんですか?」

「んえ? えっと……どうっすかね。試してみるっす」


 テクテクと外の方に歩いていってみると、加護がすぐに消えたっす。

 もう一回戻ってみると、また加護が復活。

 どうやら行き止まりの壁から六メートルくらいの距離まで離れると効果が消えるみたいっすね。


「ここで効果が消えるっす」

「……という事は此処だけ土の性質が違うんですね……。なんででしょうか……」


 んなこと言われたって俺わかんないっすよ?

 この世界に詳しいわけじゃないっすからね……。


「失礼。二人とも外に出ておいてもらってもいいですか?」

「え? 良いけど……。何するっすか?」

「とりあえず地面を壊してみようかと」

「「え!?」」


 それを聞いたアレナは、浮遊を使って一目散に逃げていく。

 早すぎるっすよアレナ!

 確かに冒険者にはそういう素早い判断が必要かもしれないっすけど!

 おいていかないで欲しいっす!!


 俺とアレナが十分離れたところで待機していると、ウチカゲが地面に拳を置く。

 そして大きく振りかぶって地面を殴った。


 ドゴン!!

 ウチカゲは少して加減したのか、地面はちょっとしか破壊されていなかった。


 ウチカゲがあそこまで力をセーブするなんて珍しいっすね。

 まぁ思いっきり叩いて落盤なんて起ったら目も当てられないっすからね!

 うんうん。


 だが、ウチカゲは驚いたような顔をして固まっていた。

 そして後二発同じ様に手加減して地面を殴る。

 結果は罅を少し大きくした程度に終わった。


「何してるっすかー?」

「れ、零漸殿……。この地面……壊れません」

「? え? もしかしてウチカゲあれ本気で殴ってたっすか!?」

「はい……」

「「うそぉ!!」」


 鬼のウチカゲが壊すことのできない地面があるだって!?

 そんな馬鹿な!!

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