4.40.Cランクの依頼


 冒険者ギルドに辿り着いた俺たちは、早速Cランクに上がるための手続きをした。

 その後に鳳炎を冒険者パーティーに加える申請をして、これで正式に霊帝に鳳炎が加わることになる。


 鳳炎は今の今までソロでやってきていたらしい。

 良くソロでAランクまで行けたものだ。

 そのおかげか、鳳炎は随分と有名人であった。


 道行く人々に挨拶をされていたし、時々茶々を入れる奴らもいた。

 冒険者からの信頼は非常に厚いらしい。

 意外だ。


「鳳炎人気者~」

「だろう? 食涙の鳳炎っていうよくわからん二つ名以外だけは取り消してほしいのだがな……」

「私も二つ名欲しい……!」

「俺も欲しいっす!」

「まだ無理だろ」

「何でっすか!」


 なんでも何も……俺たちはほとんど人前で活動したことがない。

 ランクだけ上がっても、何かしているところを見てもらわない限り、二つ名など貰えるわけがないのだ。


 自分で決めるものでもないだろうし、周囲の人たちが勝手に二つ名をつけるのを待つしかない。

 俺は別にいらないけど……。


「うっし! じゃあ早速Cランクの依頼受けましょう!」

「何がいいんだろうな」


 そういいながら、俺たちは依頼が貼り付けてあるCランクボードへと足を進める。

 あったのは随分と報酬金額の良い物ばかりで、一つ受けるだけで俺たち五人が三泊出来るほどの金額が報酬として乗っている。


 依頼内容としては、討伐依頼が主なものだが、それ以外にも珍しい薬草や、危険な所に生えている木の実などの採取依頼もあった。

 そして、俺はその依頼の中で一つだけ目に止まったものがあった。


 『ダトワームの討伐』

 期限:冬が来るまで

 依頼主:ギルド

 報酬:銀貨四十枚


「良しこれに決めた」


 俺はすぐにその依頼書を引きちぎる。

 こいつは俺の因縁の相手だ。

 絶対に殺さなければならない。


「私いや!」

「あ、そうか。アレナは虫嫌いだもんな」


 そういうと、アレナは一枚の依頼書をジャンプして取る。

 そこには黄金ミツバチの作る蜂蜜の採取依頼であった。

 だがその採取依頼の内容を見て俺は心底驚いた。


 『黄金ミツバチの密採取』

 期限:今年中

 依頼主:ハームロン

 報酬:一瓶金貨三枚


「一瓶金貨三枚!? なんだそれ!」

「応錬は知らないのか。黄金ミツバチってのは深い谷に巣を作る蜂でな。獰猛ではないし、人を襲うことは無いのだが、巣を作るところが異常に危険なのだ」


 採取場所こそ遠くはないそうなのだが、そこは大地が割れたという表現が正しいほどに深い渓谷であり、縄梯子などでなくてはとても採取することができない場所なのだという。

 場所が危険というのもそうなのだが、その周辺にいる魔物が一番厄介であり、空を飛ぶヤタマガラスという鳥が、採取の邪魔をしてくる。


 ヤタマガラスは狂暴だが、あまり脅威ではなく、Dランク冒険者であれば余裕で倒せる。

 だが、それは冒険者が安定した地面にいた場合だ。

 黄金ミツバチの巣は縄梯子を使わなければ見ることも不可能な場所にある。

 縄梯子を使って降りている最中に、ヤタマガラスに襲われて谷底に落ちる冒険者も多いのだという。


 だが、ふとアレナの技能を思い出して俺は安心する。


「アレナなら問題ないな」

「ふふん~」


 どやぁ、と言わんばかりに鼻を鳴らすアレナ。

 アレナにかかれば、縄梯子など必要ない。

 なんせこの子空飛べるから……。


「そうなのか?」

「任せても問題ないっす」

「では俺がアレナと一緒に採取に行きましょう。流石にアレナだけだと心配ですから」

「ウチカゲ任せた。じゃ、俺たち三人はダトワーム行くか」

「了解っすー!」


 五人もいるのだから、別れて依頼を受けても問題ない。

 アレナの依頼はすぐに終わるだろうし、俺たち三人だけでもダトワームくらい倒せるだろう。

 危ないのが狂酸唾液くらいだしな。


 依頼が決まったので、早速受付に持って行く。

 アレナがCランク帯の受付に歩いていったとき、周囲がざわついたが、特に問題が起きるようなことは無かった。

 とは言っても、受付の人にはちゃんとギルドカードを確認されていたが。

 まぁ仕方ないよな。

 どう見てもCランク冒険者には見えないもん。


 ギルドを出るまで随分と鋭い目線を送られてしまったな。


「行ってきまーす!」

「応錬様お気をつけて」

「おうよ」


 アレナはウチカゲに抱えられて消えた。


 え?

 え? ちょっとまって、アレナ大丈夫?

 だってウチカゲのあの速度って……瞬耐っていう技能があるからこそ可能な動きであって……。


「え? 大丈夫だよなアレナ」

「何がっすか?」

「……いや、わからないならいい」


 大丈夫……だよな?

 いや、確かにダンジョン帰りに俺たちまとめて抱えあげられて、あの集団から脱出したけど、あの時は随分手加減してくれていた。

 でも今回のは……消えたもんな……。


「応錬。行くぞ?」

「あ、ああ……」


 いいなお前らはあいつらの技能知らないから!

 こっちはこれから気が気じゃなくなりそうだぜ!

 

 大丈夫だという事を信じて、俺たちはダトワーム討伐依頼をこなすべく、指定されている場所へと向かうのだった。

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