4.39.色々確認


 朝になった。

 起きてきたウチカゲやアレナを集めて、鳳炎のことを説明する。

 もちろん誰もいない、一つの部屋の中でだ。


「ってことで……まだ登録はしてないけど、新しく仲間になった鳳炎だ」

「よろしく」

「あ、村燃やした人ですね」

「髪の毛燃えてる……」

「すんませんした! それと燃えてないから! 地毛だから!」


 ウチカゲからは村を燃やした人だと覚えられているらしい。

 そのことに俺と零漸は不意を突かれて笑ってしまった。

 確かに間違ってはいないけど、ウチカゲがそういう風に人の名前を覚えているのが可笑しかったのだ。


 アレナは興味深そうに、鳳炎の髪の毛を見ている。

 赤毛が気になるのだろうか。

 この世界では特に珍しい色という訳ではなさそうだが。


「失礼ですが応錬様。鳳炎殿は信用できる人物なのですか?」


 ウチカゲは少し怪訝そうな表情で俺に聞いてきた。

 確かにいきなり仲間になったと言われても、すぐに信用はできないだろう。


 ここは隠し事をせずに、ちゃんと説明しておこう。


「こいつは数少ない同郷の者なんだ。零漸だけじゃなかったんだよ」

「なるほど……。そういう事でしたら、ここは応錬様を信じましょう」


 鳳炎は信じないんだね。

 まぁそれもそうか。


「それと、こいつは俺たちと同じ魔物だ。俺は蛇、零漸は亀、そして鳳炎は不死鳥だ」

「ちょ!? 言ってよかったのか!?」

「こいつらは大丈夫だ」


 だってウチカゲに至っては俺が人の姿になる所まで見られてしまっているのだから。、もう隠す必要も何もない。

 零漸のこともダンジョンで言ってしまったし、今更気にする必要もないだろう。


 さて、俺たちは鳳炎のことを知っているが、鳳炎は俺たちの事を全く知らないので、とりあえずまずは自己紹介をしてもらうことにした。

 各々が自分の名前を言って、軽く技能の説明をしてくれた。


「俺は鬼のウチカゲです。技能としては速さ特化の接近タイプだと思ってください」

「私はアレナ。重力っていう技能を使うよ」

「ウチカゲ君にアレナ君か。改めまして、鳳炎だ。私は炎系の技能を多く使う」


 相変わらずのお堅い口調を崩す気はないらしく、いつもの調子で鳳炎は挨拶を終えた。

 もう普通にすればいいのに。


 そして、やはりというべきか。

 鳳炎は炎を使うことができるらしい。

 確かに四霊や四神の中の鳳凰、そして朱雀は炎を纏ったような鳥として描かれることが多い。

 イメージ通りであった。


「鳳炎の技能を詳しく知りたいのだが……いいか?」

「勿論だ。私の技能はこのようになっている」


 そして鳳炎は自分のステータスを全員に教えてくれた。


===============

 名前:鳳炎(ほうえん)

 種族:フレイムホーク


 LⅤ :28/200

 HP :230/230

 MP :304/304

 攻撃力:120

 防御力:201

 魔法力:403

 俊敏 :758


 ―特殊技能―

『空の声』『不死鳥の恩恵』


 ―技能―

 攻撃:『フレイムスピア』『フレイムクロー』『瞬翼』『ファイヤーフェザー』

 魔法:『ファイヤーアロー』『ファイヤーブラージ』『炎操』『炎翼』『ファイヤードール』『フレイムボム』

 防御:『絶炎火柱』

 回復:『悪食』

 罠術:

 特異:『不死』

 自動:『絶炎』『絶炎防御』

 奥義:『紅蓮の芽』


 ―耐性―

『炎』『火傷』『孤独』『精神崩壊』『狂い』『飢餓』『呪い』『疫病』『中毒』

===============


 横文字が多いぞ!

 てか知らない技能や知らない耐性ばかりだ……。

 意味は分かるが……この精神崩壊ってもしかしなくても、虫を食べたことによるあれだよな……。

 狂いもそうか。


 え……鳳炎可哀そう。

 どんなに気が狂いそうになっても狂え切れないって可哀そうじゃない……?

 一種の拷問じゃないか……。 


「まぁこんなものだ」

「強い?」

「技能的には強い方だろう。だが……魔力も少なければ攻撃力も低いし、防御力も低いし……魔法力も俺と比べて……」

「悲しくなるからやめてくれるかな」


 結構気にしているらしい。

 だが何故これだけのステータスで生き残ることができたのだろうか。

 それを聞いてみると……。


「自動技能の絶炎がとても優秀だったんだ」

「絶炎?」


 聞いてみれば、絶炎は攻撃した物全てが必ず燃えるという物らしく、絶対に燃えないであろう水だったり、空気だって燃やすことができるらしい。

 ただ、それは自分が意識して攻撃した対象でなければならないらしく、誤って攻撃してしまった物には着火しないのだという。


 絶炎の効果は、鳳炎が持っている全ての技能に適用されるようだ。

 それに、技能にとどまらず、自らの持っている槍で攻撃をしても、相手を火だるまにさせることができる。

 つまり……。


「当たれば勝ち……という事さっ」

「卑怯っすね」

「ずるい」

「だから雨の中村も燃やせたんですね」

「お願いやめて?」


 口を開けば何かが飛んでくる。

 ちょっとだけ可哀そうに思ったのは内緒だ。


 しかし、当たれば勝ちの技能……。

 これは普通に強いのではないだろうか。


 槍で攻撃し、それを防御しても防御した武器、または防具が燃える。

 対人相手には非常に有効な技能だ。

 あまり想像ができないが……。


 相手が魔物だとしても、ただ一つ何か技能で攻撃をすれば、当たったところが確実に燃える。

 初見殺しもいい所だ。

 鳳炎の絶炎を回避するためには、鳳炎の攻撃を全て躱すか、遠距離、または魔法で相殺するしかない。


「鳳炎。接近で戦う場合はどうなるんだ?」

「と、言うと?」

「鳳炎の槍での攻撃を、剣を持っている敵が受けたらどうなるんだってことだ」


 考えても、相手の武器が燃えるだなんて想像できなかったため、やはり聞くことにした。


「相手の武器と、私の武器の間で火花の代わりに炎が吹き上がる。武器の接着面積が少ないと、燃えても燃え移ることはしないのだ」

「相手の剣が燃えるということは無いのか」

「うむ。剣の腹で私の攻撃を受けた場合は燃えるがな。まぁ一振りされれば消えるが……」

「へー」


 燃やすにも条件があるらしい。

 しかし、刃の部分で攻撃を受けただけでも炎が噴き出すというのは恐ろしい。

 防いでも攻撃しても絶対に炎が噴き出すのだから、相手にとってそれは邪魔でしかないだろう。

 

 戦いたくないな。うん。


「では、まぁ。自己紹介も終わったことだし、これからのことについて話し合いたいと思う」

「はーい」

「分かりました」

「まずは……冒険者ギルドに行って全員のランクを上げて貰う。その後にパーティーの更新だな」


 昨日マリアに全員で来いって言われてるし……鳳炎の登録も……あ。


「あれ? 鳳炎ってランクなんだっけ?」

「Aランクであるが」

「この場合どうなるんだろうな。俺たちは更新してCランクだし……」

「ああ、大丈夫だと思いますよ」

「そうなのか?」


 AランクもCランクの依頼は手伝うことができるので、別にランク帯が同じでなければならないということはないらしい。

 Sランク冒険者が弟子を取った時は、特別に全てのランク帯を受けれるようになるらしいが、今の俺たちには関係のない事だった。


 問題がないことを確認した俺たちは、すぐにでも冒険者ギルドに行こうという流れになり、全員で足並みをそろえて冒険者ギルドへと向かった。


 その間に俺は少し考え事をしていた。


 Cランクになって何をするべきか……。

 とりあえず依頼を受けてみたいというのが俺の考えだ。

 ぶっちゃけ碌な依頼をしたことがない、


 俺たちであればCランクの依頼は問題ないだろうが、それでもやってみなければわからないこともある。

 今日は依頼を受けて、全員で行ってみることにしようと思う。


 後は……孤児院だよなぁ。

 ドルチェにしばらく会ってないが、今もあの問題で頭を悩ませているに違いない。

 ここの王族と話をする機会も得られそうにないし、とりあえずは信用が得られるまで冒険者ギルドで仕事をするしかなさそうだ。

 ぶっちゃけ解決策がまるで見つからん……。


 それにダンジョンのことも気がかりだ。

 加えてあのオークの一件についても。


 とは言っても俺は報告しただけで、それ以降はギルドに任せっきりだ。

 今更聞くのもあれだし、多分俺たちより上のランク帯の奴らが事に当たってくれているだろう。

 報告したのが自分だということもあり、少し複雑ではあるが。


 そういえば最近元の姿に戻ってない。

 今の種族レベルだと経験値がなかなか手に入らなかったし、Cランクになったから敵も強くなるはずだ。

 もしかしたら経験値を獲得できるチャンスかもしれないな。


 鳳炎の実力も気になるし……。

 さっさとギルド行って依頼を受けるとしよう。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る