4.23.準備しましょう


 今俺たちの所持金は、Dランク帯の冒険者が持つには少し多すぎる。

 まぁこれも実力といえばそうなってしまうのかもしれないが、アレナが持ってきたお金だけはそうは言えない。

 だが使える物は使わせていただこう。


 冒険者ギルドを出た俺たちはすぐにでもダンジョンへと向かう為、教会にある魔法陣の所まで来ていた。

 どうやら俺以外の三人も魔法陣のことはこの数日で知ったらしく、今では有効活用しているようだ。


 ジグルに教えてもらったように、お金を出して魔石を貰う。

 やはり金額が馬鹿にならないのだが、これでCランク帯にすぐに上がれるとなれば安い物だ。


 すぐに魔法陣を起動して、目的地であるダンジョン前の冒険者キャンプまで進む。


 俺はMPを1しか消費しないが、他三人は大丈夫だろうか?

 ジグルは一回発動するだけで、随分なMPを持っていかれていたようだから心配である。

 転移後、三人の様子を見てみるが、さして疲れた様子などはなく、今すぐにでも動けそうな状態だった。

 個人差があるのだろうか?


「っしゃ! じゃあ早速行きましょー!」

「お前話聞いてなかったろ」

「え?」


 俺たちは行ってしまえば手ぶらである。

 このままダンジョンに行くにはあまりにも心もとない。


 俺たちには明かりはいらないだろうが、アレナには明かりが必要だし、全員分の食料も必要になってくる。

 ダンジョンにいる魔物を倒して食べればいいじゃないかとも思うが、ダンジョンにいる魔物がすべて食べれるとは限らないため、少なからず数日分の食料は持っていくべきだ。

 それに何と言っても水は絶対に必要だ。

 これは少し無理をしてでも持ち込む必要があるだろう。


「まずは食料と水……後明かりになる物。これは絶対に必要だ。他に何かいるか?」

「毛布とかもあった方がいいですね。しっかり休むのも大切なことですし」

「ああ、そうか」


 考えてみれば結構必要な物があった。

 今出ている物は旅に必要なものとほとんど変わりはないが、ダンジョンでは他にも必要なものが出てくる事だろう。


 例えばロープとか……ピッケルとか?

 んー……いまいちに何が必要なのかわからん。


「ま、とりあえず必要だと思う奴を買いそろえていくか」

「分かりました。では俺は金物屋に行ってきます」

「私はしょくりょー!」

「じゃあ俺は水持ってくるっす」

「ウチカゲはそのついでに明かりになる物も買ってきてくれ。俺はアレナと一緒に行こう」

「分かりました」


 各々準備する物が決まったので、目的の物を購入するために一時解散という流れになった。

 またここに戻ってくるのもあれなので、集合はダンジョン入り口前にしておく。

 こうしておけばすぐにでも進むことができるだろう。


 俺はアレナと一緒に食料を買いに行く。

 店は数多く出ており、出店で肉を焼いていたり、野菜を取り扱っている場所があるなど様々ではあるが、俺たちが必要なのは保存が利く食料である。

 そうしてしまうと随分と限られてしまうが、まぁ干し肉は絶対に必要だろう。

 あれはあまりうまいとは言えないが……。


 まぁ一日二日程度であれば、保存の利かない物でも問題ない。

 適当に旨そうなものを買っていくことにしよう。


「アレナは何か欲しいものあるか?」

「んー……地図」

「ああ! 確かに必要だな」


 失念していた。

 地図無しで攻略をすれば一体どれだけの時間がかかるかわかったものではない。

 攻略したらランクを一つ上げてくれるというのなら、過去にもこのダンジョンを制覇した人物がいてもおかしくはない。

 

 実を言えば俺の操り霞を使用すれば必要のない物なのではあるが……雰囲気を壊すわけにはいかないだろう。


 と、言うことで適当に食料を購入した。

 なので地図を探すことにしよう。


 最後に立ち寄った店の店主に話を聞いてみる。


「なぁ。ダンジョンの地図って何処かに売ってるか?」

「ダンジョン前の店にあるけど……余り活用しない方がいいよ?」

「む? 何故だい」

「ダンジョンには冒険者ギルドの管理人が時々宝箱の中身を補充してたりするんだ。でも地図には最短ルートしか書かれてないから、そこには行けないようになってるんだ」


 管理人が宝箱の中身を補充しているという事に少し笑いそうになってしまったが、それがここに客を招き入れる作戦なのだろう。


 それに、その地図はそんなに詳しく書かれている物ではない様だ。

 ここは管理されているダンジョンであるため、危険度は非常に低いようだが、他のダンジョンはそうは言っていられない。

 故に少しでも冒険者にダンジョンの立ち回りを覚えてもらおうと、地図を買う前に地図を作成するツールをまずお勧めするのだという。


 ふむ、確かにそっちの方がいいかもしれないな。

 作っている内に宝箱も見つかるだろうし、ダンジョンの立ち回りもわかるようになってくるだろうし、自分のためになる。

 ここは地図の作成ツールを買うことにしよう。


「アレナもそれでいいか?」

「うん」


 と、いう事なので俺たちはダンジョンの前に行くことにした。

 着いたと同時に地図の作成ツールを購入し、それをアレナに渡しておく。

 やる気十分で結構なことである。


 ダンジョンの前には、これまた多くのテントが張られており、小物だったりダンジョン攻略に役立つようなものが数多く売られていた。

 このダンジョンに挑む冒険者は随分多いようで、その辺の店も繁盛しているようだ。


 そしてダンジョンの入り口なのだが……。

 簡単に言ってしまえば山の崖にぽっかりと空いた大きな口である。

 随分大きな洞窟であり、数十人が一気に押し寄せても問題なく歩いていけるような作りなのではないだろうか?


 この奥にはどんな光景があるのか……なんだか楽しみになってきた。


 暫くしていると、ウチカゲと零漸も戻ってきた。

 零漸には俺の魔道具袋を渡しておいたので、その中に大量の水が入っているはずだ。

 ウチカゲは流石鬼というべきか……。

 様々な荷物を片腕で抱えて持ってきた。


 一人だけ異彩を放っていていたので、すぐさまウチカゲの持っていた荷物を魔道具袋に入れていく。

 ウチカゲは毛布やら明かりやらと様々なものを購入してきてくれたようだ。

 これが役立つことを願おう。


「これで準備完了っすか?」

「まぁ……これだけあれば問題ないでしょう。何日で攻略できるかが問題ではありますが……」

「地図を作りながら行くから、少し長くなるかもな」

「頑張る!」


 これだけあれば十分だ。

 荷物も全て魔道具袋に入ったので、俺たちは武器を携えて行ける。


 しかし、俺の持っている白龍前だけは今回使えそうにないので、これも魔道具袋に仕舞っておく。

 洞窟で長い獲物は振り回すことができないからな。

 今回は影大蛇と技能だけで戦っていくことにしよう。


「おし、じゃあ行くか」

「うっす!」


 俺たちは足取り軽く、ダンジョンへを進んで中に入っていくのだった。

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