2.50.捜索開始
―夜―
兵士や家臣たちは引き続き奴隷商を追いつめるために情報を集めまわっている。
まだ一日目だということもあり、奴隷商も何かを仕掛けてくるということはない様だ。
十分に情報も行き渡っていないだろうしな。
俺は当初の目的であったサテラを探すために動くことにした。
だが、流石にサテラを探すにしてもこの体では目立ちすぎる。
なので泥人を使って捜索を開始した。
だが技能の『泥人』は自分と同じ大きさの分身体を作り出す技能だ。
なのでこのまま『泥人』を使っても十メートルの大きさの蛇が出来上がるだけ。
いくら暗殺者を使って探すと言っても、気配を消すのにも限界はある。
此処は進化しておいて体を小さくしておくのが良いだろう。
前に天の声が言っていた質量だとか理解だとかが気になるが……記録しましたって言ってたし……気にしなくてもいいよな?
よし! 天の声!
とりあえず進化先を教えてくれ!
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―進化先―
―ウェイブスネーク―
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お、進化先一個しかないな。
この蛇結構強そうなんだよね。
てか俺国にいるけど姿みられた瞬間殺されたりしないよね?
確かウェイブスネークって見つけたら国に発見報告される対象だったはずだけど……。
討伐隊を返り討ちにしている蛇ってどんなのなんだよマジで。
まぁ強いならいいんだけどね!
よし! じゃあ進化お願いします!
体が勢いよく収縮していく。
いつも通り激痛が走るが、ダトワームに進化したときと比べるとこんな痛みは優しいものだった。
巨大化して鉄の檻ぶっ壊したもんな。
あの時は肉がどんどん食い込んでこのまま体が裂けるんじゃないかと思ったぜ。
痛みはしばらくしたら消えた。
体を見てみると一メートルほどにまで小さくなり、太さは随分細くなってしまった。
こんな小さな蛇が討伐隊を打ち破る力を持っているとは到底思えない。
頭には鋭そうな角が一本生えている。
今までの蛇の中で一番かっこいいのではないだろうか?
心なしか這う速度も速くなっている気がする。
よし、では久しぶりのステータスオープン!
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名前:応錬(おうれん)
種族:ウェイブスネーク
LⅤ :1/200
HP :350/350
MP :421/421
攻撃力:465
防御力:389
魔法力:546
俊敏 :409
―特殊技能―
『天の声』『希少種の恩恵』『過去の言葉』
―技能―
攻撃:『剛牙顎』『狂酸毒牙』『連水糸槍』『多連水槍』『鋭水流剣』『衝撃波』『骨破』『内乱波』
魔法:『操り霞』『無限水操』『泥人』『破壊土砂流』『破岩流』『空気圧縮』
防御:『水結界』『水盾』『泥鎧』『空圧結界』
回復:『大治癒』『広域治癒』『殺吸収』
罠術:『水捕縛』『偽装沼』
特異:『発光』『土地精霊』『清め浄化』
自動:『悪天硬』『水泳』『暗殺者』『防御貫通』
―耐性―
『眩み』『強酸』『爆破』『腐敗』『視界不良』『盲目』『毒』『気移り』『耐寒』『呪い』『汚染』『感染』『病魔』『腐敗』『不浄』
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ん!!?
つ、次の進化に必要なレベルが200だと!!?
い、一気に跳ね上がったなおい……。
あれ?
回復系技能から光合成が消えた。
葉っぱが無くなったから?
いや、そもそもあの技能がフォレススネークの専用技能だったな。
そういう技能は進化したら消えちゃうのね。
てか物騒な技能がいっぱいあるんだけど。
とりあえず一つ一つ見ていくか。
―新技能―
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―衝撃波―
空気を振動させて相手に攻撃を当てる技能。防具は意味をなさない。
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―
相手の骨を破壊する威力の衝撃波を打ち込む技能。
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―内乱波―
内臓をかき乱す衝撃波を打ち込む技能。防具があると不可。
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―空気圧縮―
周囲の空気を圧縮する技能。圧縮した空気を開放すると爆発が起きたような突風が吹く。
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―空圧結界―
空気を圧縮して障壁を作り出す技能。MPの量で耐久力が変わる。
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―
敵を殺して体力を回復する技能。
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―防御貫通―
防御を貫通させることができる技能。相手の防御力がこちらの攻撃力を圧倒的に上回っていた場合は無効。
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いやドン引きだわ。
こんな技能使えるならそりゃあ討伐隊も壊滅しますわ。
だって防御貫通に防具を無視した攻撃でしょ?
普通に考えてインナーだけ着た戦士が戦場で闊歩しているような状態じゃん。
……これ上三つの技能一緒に足したらどうなるんだろう。
ええい! やっちゃえ!
あ、ついでに他の技能も合成しちゃおう。
【『衝撃波』及び『骨波』及び『内乱波』を合成して新技能『波拳』を取得しました。『衝撃波』及び『骨波』及び『内乱波』は破棄されます】
【『破壊土砂流』及び『破岩流』を合成して技能『破壊破岩流』を取得しました。『破壊土砂流』及び『破岩流』は破棄されます】
―新合成技能―
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―波拳―
衝撃波、骨波、内乱波を組み合わせた技能。全ての攻撃力が三倍になる。
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―破壊破岩流―
土砂と砕いた岩を一気に放出する技能。制御が効かないので一帯を更地にする可能性あり。合成効果により威力が五倍。
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…………なんだろうこのやっちゃった感。
物騒な技能が更に物騒になってしまった。
やっぱりもう少し待った方がよかったか……!
で、できれば使わないように注意しよう。
でも自動型技能の防御貫通はどうにもなりそうないな……。
普段の行動から気を付けていかなければならなさそうだ。
とりあえず進化は終わった。
体も小さくなってくれたのでこれで探索がしやすくなるだろう。
俺は今まで兵士たちが持ってくる奴隷たちの話をずっと聞いていた。
なので奴隷商が経営している店や奴隷を使っている商人たちの場所はある程度掴んでいるつもりだ。 だが流石に子供を奴隷にしているという情報は得ることができなかった。
こればかりは自分の足で探すしかないだろう。
と、いうことで早速捜索開始だ。
俺は泥人で自分の分身体を作り出す。
俺とは違って茶色い蛇になっているけどな。
目をつぶって視界を共有する。
体の大きさはちゃんと変わっており、動くことも可能だ。
全く問題がない。
暗殺者を発動させて気配をできるだけ遮断する。
よし、これで行動はできそうだな。
そういえばこの泥人の活動範囲ってどれ位なんだろう。
あんまり遠くにこいつを行かせた記憶がない。
ま、その時はその時か。
分身を動かして街を歩いていく。夜なので随分暗いが、灯りのついている店や家などはまだあるようだ。
夜になっても意外と賑やかなことに少し驚いた。
今回の俺の動きだが……まず期間は一週間。
この間にサテラを探し出したい。
ということで捜索する場所を大きく六つに分けることにした。
最終日の七日目はアスレがなにかをしでかすようだからな。
それより先に見つけるぞ。
で、その六つの区画なのだが、奴隷商の店や奴隷を使用している店などが入っている区画だ。
いくら奴隷と言えどもいつまでも外に出しておくわけにはいかないはずだからな。
夜には住まわせている場所に戻すはずだ。
それを探すのが一番苦労しそうだが……もし奴隷を見つけたらあの宝石の形を作ってサテラのことを聞いてみてもいいかもしれないな。
というわけで俺は一つ目の区画に向かっている最中だ。
距離としてはジルニアの屋敷から一番遠い場所になるな。
遠い場所から攻めて行ったほうが後々楽になりそうだしという簡単な理由だ。
こういうのは日が経つにつれて焦ってくるものだからな。
もし時間が余るようだったらもう一つの区画を探しに行く予定だ。
ということで俺は七日間寝ることはできない。
朝寝ればいいじゃないかとも思うが、兵士たちが持ってくる情報を聞き逃すわけにはいかない。
有益な情報があるかもしれないからな。
さて……この体はどれくらい寝なくても活動ができるのだろうか?
最悪朝の情報収集は諦めてもいいけどな。
まずは第一区画だ。
よし、とりあえず無事でいてくれよ! サテラ!
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