2.39.露天風呂
竹で女湯と男湯が仕切られた大浴場。
他にもコケが周囲の岩に生えていて、俺にとってはとても素晴らしい場所だ。
まさかこんな所で温泉に入れるとは思ってもいなかった。
俺は相当運がいいようだ。
「応錬様。大丈夫でしたか?」
隣には一緒に温泉に入っているウチカゲがいる。
風呂なので流石に目隠しは取っているようだ。
実は俺は先ほど、ウチカゲに助けられた。
確かに俺の体は女湯に持っていかれてしまったが、ウチカゲが闇媒体で俺の分身を作り出して、本体と交換してくれたようだ。
つまり、姫様が持って行ったのは俺の分身体。
偽物ということだ。
闇媒体で作り出した分身体は、闇が多ければ多いほど持つ時間が長くなるという。
此処は風呂で日はまだ高い。
だが自分の影の闇を媒体にして分身体を作り出してくれたようなので、この明るさでも十五分くらいなら持つということらしい。
本当に助かったぜ。
俺は無限水操で温泉の水を操って親指を立てる手を作り出して、ウチカゲに「大丈夫だ」と伝える。
「それは良かった。……ところで本当にそれでいいんですか?」
ウチカゲの言うそれとは、俺の温泉に入るスタイルのことだろう。
今俺は、木の桶にお湯を入れて風呂に浮かんでいる。
桶の中で俺は蜷局を巻いているので良い感じにフィットしていて気持ちがいい。
桶の縁に頭も乗っけれるのだ。
完璧ではないか。
ちなみに桶なしで入ろうともしたのだが、どうも体を縦に伸ばさないと息ができないので、太刀魚のような格好になってしまうのだ。
これでは息をするのに気を遣わなければならない。
俺としてはもっとリラックスして入りたい。
そこで考えたのがこの桶風呂ということだ。
我ながら素晴らしい発想だと思う。
極楽極楽~。
「満足いただけているようなので良しとしましょうか」
うむ。
露天風呂にまた入ることができて俺は満足だ。
次は人の姿で入りたいな~。
……って、もしかして姫様って毎日風呂入ったりする?
そうなると毎日逃げまわさなければないけないのか?
うわぁ~勘弁してくれ……。
あっ、そういえば進化できるじゃん。
ウチカゲしかいないし進化してしまおうかな。
もうね、忘れてるだろうけどこの頭に乗っかっている葉っぱ邪魔なのよ!
俺の髭返せ髭!
えーっと……進化先なんだっけ?
天の声さーん。
うっわめっちゃ呼ぶの久しぶりな気がする。
進化先教えてください。
===============
―進化先―
―ウェイブスネーク―
―フォレススネーク―
===============
ああ、フォレススネークね。
いや本当ならウェイブスネークでもいいんだけどさ。
そろそろ大蛇になってみたいので、俺はフォレススネークを選ぶぜ!
進化先をフォレススネークにすると、体が肥大化していくのがわかる。
急に大きくなったので桶が壊れてしまった。
すまん、忘れていた。
頭に乗っかっていた葉っぱが落ちて、代わりに角が生えてくる。
鬼のような角ではないが、それでも結構鋭利そうだ。
「な!?」
流石にウチカゲも驚いている。
まぁ進化なんて見たことないだろうしな。
進化が終わった時には俺の体は十メートルにまで大きくなっており、体の太さも二リットルのペットボトルくらいの大きさになっていた。
結構長いし太い!
そして久しぶりのステータス確認だ!
===============
名前:応錬(おうれん)
種族:フォレススネーク
LⅤ :1/55
HP :275/275
MP :276/276
攻撃力:203
防御力:256
魔法力:287
俊敏 :130
―特殊技能―
『天の声』『希少種の恩恵』『過去の言葉』
―技能―
攻撃:『剛牙顎』『狂酸毒牙』『連水糸槍』『多連水槍』『鋭水流剣』
魔法:『操り霞』『無限水操』『泥人』『破壊土砂流』『破岩流』
防御:『水結界』『水盾』『泥鎧』
回復:『大治癒』『広域治癒』『光合成』
罠術:『水捕縛』『偽装沼』
特異:『発光』『土地精霊』『清め純化』
自動:『悪天硬』『水泳』『暗殺者』
―耐性―
『眩み』『強酸』『爆破』『腐敗』『視界不良』『盲目』『毒』『気移り』『耐寒』『呪い』『汚染』『感染』『病魔』『腐敗』『不浄』
===============
…………ん?
…………あれ?
え、なんか増えてる?
……ん? 増えて無くない?
あれ? どういうこと?
え、もしかしてウドスネークが持っていた技能とフォレススネークが所持している技能って同じだから貰えなかったとか?
いやでもそれだったらまた光合成とか貰えるはずだよな。
おいどうなってんだ天の声!
【種族進化の上限を迎えたため、蛇種族での種族進化では以前のように技能は取得できません。種族変更進化では問題なく技能を取得できます】
まじかよ……。
てことは種族進化はステータスの上昇のためだけに使うことになるわけか。
んー無駄に体がでかくなっただけだったな。
まぁいいか。
いや良くねぇよ!
まだサテラ探しにいけねぇじゃん!
「応錬様!? 大丈夫なのですか?」
あ、大丈夫大丈夫。
進化しただけだから。
「きゃああああああ!! 応錬様ぁああああああ!!!!」
竹の仕切りを挟んだ奥から絶叫が聞こえてきた。
あの声は姫様だろう。
ということは……ウチカゲの闇媒体の時間が切れたのか。
だがまだ十五分は立っていないはずだが……。
「あ、も、申し訳ございません応錬様。俺の闇媒体は少し気が緩んでしまうと解除されてしまう物でして……」
……俺が進化してしまって驚いたために気が緩んでしまったようだ。
それは申し訳ないことをしたな。
てかあんなに声を荒げるなんて、闇媒体って解除される時一体どうなるんだろうか。
あまり見て良い物ではなさそうだがな。
「はっはっは。これでますます俺は姫様に嫌われそうです」
ああ、確かに。
結構姫様に対して厳しいもんな。
俺はそれくらいでいいと思うけど。
ていうか一人くらい姫様に厳しい人がいないと本当にいい子に育たないぞ。
俺には子育ての経験がないので断言はできないけどな。
「ウチカゲー! 貴方! 応錬様とすり替えたわねー!」
「おっとぉ……もう気が付かれましたか。どうします応錬様。このままだと乗り込んできそうな勢いですよ?」
んー、もっとゆっくり入りたかったが仕方がない。
出るとしよう。
風呂から上がって脱衣所に上がる。
俺は無限水操で体の水を弾き飛ばす。
ついでなのでウチカゲにも同じことをしてあげた。
助けてもらったお礼だ。
水分をすべて抜いているので髪の毛も完全に乾いている。
服なんかの水も弾き飛ばせそうだな。
「おお……やはり応錬様は水の扱いに長けておられるのですね」
まぁ水を操る技能を一つにくっつけただけなんだけどな。
っとそんなことよりさっさと逃げたほうがよさそうだ。
俺は暫く暇になるし、テンダとライキの居た場所に戻ってみてもいいかもしれないな。
隣ではバタバタとしている音が聞こえてくる。
多分姫様だろう。
俺はウチカゲをつついて早く行こうと促す。
ウチカゲも分かったようで、一緒に歩いて姫様から逃げることにした。
◆
俺とウチカゲはライキたちがいる部屋へと歩いている最中だ。
歩いていて思ったのだが、これではもう人の肩には乗ることはできなさそうだな。
乗ろうとすれば白い体が全身を包み込むだろう。
というか……体が結構重い。
今までこんな体の大きな蛇になったことはなかったからな。
慣れるまでしばらく時間がかかりそうだ。
ウェイブスネークは体の小さそうな蛇なので、今度は種族変更進化をすることにしよう。
【十分な質量を検出しました。記録します】
おん? え、なんですか天の声さん。
【十分な言葉を検出しました。記録します】
【善行が不十分です。記録できません】
【理解が不十分です。記録できません】
【姿形が不十分です。記録できません】
え!? 何!?
ちょっと怖いんですけど!
立て続けに五つも謎の言葉を発しないで頂戴!
ええーこれなに!?
わけわからん!
おい! 天の声! これなんだ!
【鬼人です】
ウチカゲのこと言ってんじゃねぇんだよくそが!
お前がさっき言っていた言葉について聞いてんだよ!
【…………】
だんまりかよ!
ああ、もういいよ……勝手にしてください。
久しぶりに出てきたと思ったら謎の言葉を残しやがって……。
いつまで経ってもわからん奴だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます