2.33.ウチカゲの技能
はい、おはようございます。
この挨拶は久しぶりですね、
いやーもうご飯食べてからの姫様の機嫌がすごく悪くて大変だった……。
食事をしていたまでは良かったのだが……お風呂に入れないわ壁はないわ、はたまた布団はないわで騒ぎ始めてもう疲れました。
ウチカゲに全て叩き切られたことを根に持っていたのか、ウチカゲに対しては妙に攻撃的だったな。
奥方様のシムにまで八つ当たりするんだもん。
他の鬼はもちろんのことテンダも宥めることには失敗していた。
そこで最終兵器俺。
常に俺が宥めることで何とか機嫌を取り繕っていたのだ。
怒鳴り始めたら尻尾で頭を軽く撫でてやったり、すり寄ったりすることで何とかなった……と信じたい。
鬼だし暴れたらどうなることやら。
やることは至極簡単だったがその難易度は地獄レベルだった。
もう二度としたくない。
因みに俺は食事でレベルが48にまで上がった。
あと一息だからお昼くらいには進化できるかもしれないな。
いや……でも進化できるようになっても進化はしない方がいいかもしれない。
絶対やかましくなる。
うん……やめとこう。
姫様達はまだ寝ている。
まぁまだ早い時間だしな。
日が出て来たばかりだ。
今起きているのは四番目に見張りをしている鬼たちくらいだ。
特に目立った魔物も出なかったので、睡眠を妨害されることもなかった。
だが寝ている姿をみると普通のお姫様なんだよなこの姫様。
巫女って感じじゃないもん。
あんだけ我儘言い放っていたのが嘘のようだ。
「白蛇様」
気配もなくすっとウチカゲが出現した。
先ほどまで何処にもいなかったと思うのだが……どうやって出てきたのだろうか。
そういえばウチカゲは最後の見張りメンバーの一人だったな。
「おやすみ中失礼いたします」
ほかの人を起こさないようにとても小さな声で俺に語り掛けてきて来る。
「姫様の事……ですが、とても助かりました。有難う御座います。姫様が起きている手前、礼を言えなかったので……こんな形ですがで申し訳ございません」
ウチカゲは跪いて頭を下げる。
随分気にしていたようだな。
確かに他の鬼も俺に礼なんていう暇はなかっただろう。
なんだ、結構お堅い目隠し鬼かと思ったが、普通にいい奴じゃないか。
ちょっと見直したぜ。
見かけで判断するのはやはりやめた方がいいな。うん。
姫様の束縛も今は弱まっているし、抜け出しても大丈夫だろう。
このまま話していたらいつ姫様が起きるかわからないしな。
移動することにする。
俺は姫様から何とか抜け出して、水で矢印を作る。
あっちに行って話を聞こう、という意味なのだが、ウチカゲはそれを瞬時に理解してついてきてくれた。
多分完璧には理解していないが、こっちに行こうとしているのは伝わったのだろう。
少し場所を離れてウチカゲが普通の声で話せるような場所に出る。
ここでなら声を少し出した程度では誰も起きてはこないだろう。
「白蛇様も見てお分かりの通り……うちの姫様には手を焼いておるのです。大殿様と奥方様は子宝にはあまり恵まれませんでしたので、一人娘である姫様には少々甘いのです。それ故あのような性格になってしまわれたかと思っております……。もう少し姫様としての威厳があればよいのですが……」
やはり姫様は少し我儘なようだな。
今まで大変だったのだろう。
まだ子供心が残っているのは仕方がないが……あのまま大人には絶対になってほしくない。
信仰している白蛇である俺を、民の面前でああも軽々しく俺に接しているのだ。
流石に反感を買ってしまうぞ……?
今は姫様のことを知っている民たちの前だからいいが、前鬼の里に入ったら自重してもらわなければならないだろう。
多分同じ鬼として信仰対象は同じだろうからな。
俺も姫様に近づくの避けたほうがいいのかな?
いやそれはそれで機嫌悪くなりそうだな……。
あーめんどくさ!
「姫様の我儘に付き合っていただき、有難う御座います。何分我らでは姫様に強く言うことができぬ故……」
それは見ていてわかっていた。
やはり上下関係というのは面倒くさいものだな。
特にウチカゲは目の敵にされていたようだし、余計言えなかったんじゃなかろうか。
今思うと……あの集落に身を潜める事にも反対していたっぽいな。
簡単に想像がつく。
本当に苦労してるようだし、もう少し付き合ってやってやるか。
報酬は俺が人間になった時に米を食べさせてくれたらいいからなっ!
「そういえば……白蛇様はどのような技能を扱うのでしょうか? こんなことを白蛇様に聞くのは失礼かもしれませぬが……護衛をする者としては少しでも強くなりたいのです。それにこうして本当に白蛇様とお話しする機会など、まずないですからね。あ、勿論このことは他言いたしません」
俺としては別に問題はない。
俺もウチカゲの技能を聞ければそれでいいしな。
矢印を作ってウチカゲを指し示す。
まずお前から教えてくれと言っているのだが……伝わるだろうか?
ウチカゲは少し考えた後、何かに気が付いたようにハッと顔をあげる。
「これは申し訳ございません。私から手の内を見せたほうがよろしいですね。私のステータスはこのようになっています」
そう言って自分のステータスを教えてくれた。
どうやらステータスは他人には見せることができないようなので口頭で説明してくれる。
ウチカゲのステータスはこのような感じだ。
===============
名前:ウチカゲ
種族:鬼人
LⅤ :43/65
HP :203/203
MP :420/420
攻撃力:1965
防御力:139
魔法力:302
俊敏 :368
―技能―
攻撃:『剛力脚』『剛瞬脚』
魔法:『影傘』
防御:『瞬耐』
回復:『殺吸収』
罠術:
特異:『闇媒体』
自動:『暗殺者』『指揮受信』
―耐性―
『毒』『盲目』『視界不良』
===============
思わず吹き出しそうになった。
なんだこの攻撃力のぶっ壊れ具合は。
俺の攻撃力は今255だぞ。
そして俊敏も高いな。
技能の剛瞬脚が関係しているのだろうか。
だがウチカゲが気配なしに近づいて来れる理由がわかった。
こいつ俺と同じ暗殺者を持っている。
自動技能に入っているから無意識のうちに気配を消しているのだろう。
気になる技能は沢山あるが、どうやら自分で獲得した技能でなければ詳しい説明は見れないようだ。
回復の『殺吸収』、それに特異の『闇媒体』がとても気になるが……見れないのであれば仕方がない。
諦めよう。
見た目からしてわかってはいたけど、やはり暗殺向きの鬼だった。
自分の持ち前の俊敏を利用して戦うタイプの鬼だな。
攻撃力がぶっ飛んでるからその速さを活かせるかがわからないが。
「どれも見せ辛い技能ですいません……地味なんですよね。俺の技能」
ウチカゲは顔に手を当てると付けていた目隠しを下げて首にぶら下げた。
初めて素顔を見たがとてもりりしい顔をしている。
目は青色だ。
確かにテンダと似ているが、目隠しとその風貌からして似ていることに気が付きにくい。
「『闇媒体』」
青い目を輝かせて技能を使用すると、自分の影が持ち上がってウチカゲの分身が出来上がった。
だがすぐに崩れてしまい、元の影へと戻って行ってしまった。
「この技能は闇媒体。俺の切り札の一つです。闇が濃ければ濃いほど、この技能は強くなるのです。少々癖のある技能ですがね。分身体は俺と同じステータス値を持ちます」
なんと……そんなに強い技能なのか。
俺よりハイスペックじゃねぇか。
羨ましいな!
でも俺に切り札を見せてくれたんだ。
俺も、ちょっと派手めな技能を披露してやらないとな。
何がいいかな~。
破壊土砂流はちょっと攻撃範囲が広すぎるし、破岩流は試したことがないのでやめておいた方がいいだろう。
連水糸槍はちょっと地味。
だったらここは多連水槍でしょ!
昨日の食事でレベルが上がったのでMPも上昇した。
これなら四十本は軽く操れるだろう。
無限水操で水を作り出して多連水槍を発動させる。
今回はぎりぎりの四十本だ。
それを操って地面に全て突き刺す。
「な、なんと……! 水を操っているところから水系の技能を扱うということはわかっておりましたが……まさかこのレベルまで操ることができるとは……流石でございます。感服いたしました」
あれ、これそんなに大層な技能じゃないと思ってたんだけど……。
やっぱり操る数に驚いているのだろうか?
誰でもできそうな気はするけどな。
だけど流石に四十本はきついな。
維持するために消費するMPがちょっと馬鹿にならない。
三分も持たずにMP切れ待ったなしだなこれは。
ま、ウチカゲが驚いてくれたからいいか。
「ぬ……?」
ウチカゲが後ろを振り返る。
誰もいなかったのだが、ウチカゲには感じ取れる何かがあったようだ。
「あー……白蛇様。姫様が起きられたようです」
まじ?
もうちょっとウチカゲと話をしたかったのだが……はぁ。
仕方がない……戻ってやるとするか。
その後、戻ったと同時に思いっきり抱きしめられて中にあるものが全て出そうになった。
流石の俺もそこまでは許容できる奴ではないので、軽くお仕置きをしておいた。
水を頭からぶっかける程度だが、今の姫様にとっては十分すぎる嫌がらせだろう。
流石にシムも何も言わなかったな。
他の鬼も見てみぬふりをしている。
姫様はもう少しこいつらの苦労を労ってやるとかしてもらいたいものである。
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